核心解説
この問題は、
好中球 (Neutrophil) による生体防御の基本的なメカニズムを問うています。
好中球は、白血球の約50~70%を占める最も重要な食細胞の一つで、細菌感染に対する自然免疫(Innate Immunity)の最前線で働きます。問題で問われている「認識、取り込み、殺菌」という一連の過程は、まさに
食作用 (Phagocytosis) の定義そのものです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③番の「食作用 (Phagocytosis)」が正解です。
食作用は、以下の3段階から構成される能動的な細胞内過程です。
1.
認識と付着 (Recognition & Attachment): 好中球表面の受容体(Toll様受容体など)が細菌の構成成分(PAMPs)を認識し、オプソニン化された細菌に結合します。
2.
取り込み (Ingestion): 偽足(Pseudopodia)を伸ばして細菌を包み込み、細胞膜が陥入して
貪食空胞(ファゴソーム: Phagosome)を形成します。
3.
殺菌と消化 (Killing & Digestion): ファゴソームがリソソーム(Lysosome)と融合して
ファゴリソソーム (Phagolysosome)となり、内部で活性酸素(スーパーオキシド: Superoxide)やリソソーム酵素(リゾチームなど)によって細菌が殺菌・消化されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
-
混同注意! ①番の「脱顆粒 (Degranulation)」は、好中球や肥満細胞が、顆粒内に貯蔵している殺菌物質(ディフェンシンなど)や炎症性メディエーター(ヒスタミンなど)を細胞外に放出する過程です。食作用の「殺菌」段階の一部として細胞内でも起こりますが、問題文の「認識、取り込み、殺菌」全体を指すものではありません。
- ②番の「アポトーシス (Apoptosis)」は、プログラムされた細胞死(Planmäßiger Zelltod)であり、細菌の排除とは無関係です。炎症が終息した後の好中球自身の除去に関わります。
- ④番の「抗原提示 (Antigen Presentation)」は、主に樹状細胞(Dendritic Cells)やマクロファージ(Macrophages)が行う、獲得免疫(Adaptive Immunity)への橋渡し役です。好中球は抗原提示能が非常に低いため、誤りです。
- ⑤番の「オプソニン化 (Opsonization)」は、抗体(IgG)や補体(C3b)が細菌表面に結合し、好中球の受容体に認識されやすくする過程であり、食作用の「認識」段階を促進する「準備」です。過程そのものではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
-
好中球減少症 (Neutropenia): 好中球数が減少すると、細菌感染のリスクが著しく上昇します。これは化学療法の副作用として頻出です。
-
慢性肉芽腫症 (Chronic Granulomatous Disease): 好中球の活性酸素産生能が欠損する先天性免疫不全症で、食作用は行われますが、殺菌ができずに反復感染を起こします。
概念整理: 食作用 (Phagocytosis) は、
好中球 (Neutrophil) と
マクロファージ (Macrophage) が行う、
自然免疫 (Innate Immunity) の中核的な防御機構です。
一目で比較!:
| 過程 | 定義 | 主な担い手 |
| 食作用 (Phagocytosis) | 病原体を認識し、取り込み、殺菌・消化する一連の過程 | 好中球、マクロファージ |
| オプソニン化 (Opsonization) | 抗体や補体が病原体に結合し、食作用を促進する現象 | 抗体、補体系 |
| 抗原提示 (Antigen Presentation) | 病原体の一部をT細胞に提示し、獲得免疫を活性化する | 樹状細胞、マクロファージ |
看護過程ポイント: 感染徴候(発熱、発赤、腫脹、膿瘍形成)の観察は基本ですが、
好中球減少時 は、感染を起こしても膿(Pus)が形成されにくく、非典型的な症状を示すことがあるため注意が必要です。
暗記のコツ: 「食べる(Phago-)・細胞(-cyte)」が語源です。好中球が細菌を「丸のみ(飲み込む)」イメージを持つと覚えやすいです。オプソニン化は「ソース(Sauce)をかけて食べやすくする」と連想しましょう。
国試頻出ポイント: 選択肢の語句の定義を正確に区別できるかが問われます。特に「脱顆粒」と「食作用」、「オプソニン化」と「抗原提示」の混同に注意してください。免疫の「自然免疫」と「獲得免疫」の分類と関連付けて覚えると効率的です。