核心解説
この問題は、
血管内皮細胞 (Vascular Endothelial Cell) が分泌する生理活性物質の作用を問うています。血管の収縮と拡張は、血圧調節や臓器血流の維持に極めて重要です。ポイントは、
内皮細胞由来の弛緩因子 (EDRF) として知られる
一酸化窒素 (NO) の役割を正確に理解することです。NOは、血管平滑筋内のグアニル酸シクラーゼを活性化し、サイクリックGMPを増加させることで、強力な血管拡張を引き起こします。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 一酸化窒素 (Nitric Oxide, NO) は、血管内皮細胞で
L-アルギニン から
一酸化窒素合成酵素 (eNOS) の働きにより産生されます。血流のずり応力(シェアストレス)やアセチルコリン、ブラジキニンなどの刺激で放出され、血管平滑筋を弛緩させ、血管を拡張します。これにより、血圧低下や血流増加が起こります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
- ①番の
アンジオテンシンII (Angiotensin II) は、強力な血管収縮作用とアルドステロン分泌促進作用を持ち、血圧を上昇させます。レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 (RAAS) の最終活性物質です。
- ②番の
バソプレシン (Vasopressin) は、抗利尿ホルモン (ADH) とも呼ばれ、腎臓での水再吸収を促進するとともに、血管収縮作用(V1受容体)を持ちます。
- ③番の
エンドセリン (Endothelin) は、血管内皮細胞から分泌される最強クラスの血管収縮物質です。NOとは対照的な作用を持ちます。
- ④番の
ノルアドレナリン (Noradrenaline) は、交感神経終末から放出される神経伝達物質で、α1受容体を介して強力な血管収縮作用を示します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
血管拡張物質と血管収縮物質のバランスが、血圧や末梢循環を調節しています。
-
血管拡張物質: 一酸化窒素 (NO)、プロスタサイクリン (PGI2)、ブラジキニン、心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) など。
-
血管収縮物質: エンドセリン、アンジオテンシンII、ノルアドレナリン、バソプレシン、トロンボキサンA2 (TXA2) など。
概念整理: 血管内皮細胞は、血管の恒常性維持に不可欠な器官です。NOとエンドセリンは、それぞれ「血管を拡げる」「血管を縮める」という相反する作用を持ち、このバランスが崩れると高血圧や動脈硬化の病態に関与します。NOは
ニトログリセリン などの硝酸薬が血管拡張作用を発現する際の最終共通経路としても重要です。
一目で比較!:
| 物質名 | 主な産生部位 | 血管への作用 |
|---|
| 一酸化窒素 (NO) | 血管内皮細胞 | 拡張 |
| エンドセリン | 血管内皮細胞 | 収縮 |
| アンジオテンシンII | 肺血管内皮など (変換) | 収縮 |
| ノルアドレナリン | 交感神経終末 | 収縮 |
| バソプレシン | 下垂体後葉 | 収縮 (高濃度時) |
看護過程ポイント: 血管拡張作用を持つNOは、高血圧症や狭心症の治療薬の作用機序として重要です。看護師は、患者に硝酸薬(ニトログリセリン)を投与する際、血圧低下による立ちくらみや頭痛(NOの血管拡張作用に起因)の有無をアセスメントする必要があります。
暗記のコツ: 「NO」の「N」は「二酸化(NOの二重結合をイメージ)」ではなく「
NO =
NO 血管拡張!」と覚えましょう。対になるエンドセリンは「エンド(内皮)」+「セリン(縮める)」と語呂合わせで覚えると混乱しにくいです。
国試頻出ポイント: 「血管内皮細胞から分泌される血管拡張物質は?」という単純な知識問題として、または「高血圧症の病態生理」や「硝酸薬の副作用(頭痛)」と関連付けた出題が頻出です。収縮物質と拡張物質をセットで整理しておきましょう。