核心解説
この問題は、
関節可動域 (Range of Motion, ROM) の測定方法と、その結果から何をアセスメントすべきかという、リハビリテーション看護および整形外科看護の基本を問うています。
ROMには、患者さん自身が動かす「自動運動 (Active ROM)」と、検査者や看護師が動かす「他動運動 (Passive ROM)」の2種類があります。この2つの測定値を比較することが、関節や筋の状態を評価する上で非常に重要です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): ROM測定の目的は、
関節の可動性制限の有無とその原因を鑑別することです。制限の原因は、関節自体の問題(関節拘縮)か、筋力の問題(筋力低下)か、あるいは疼痛によるものかで大きく異なります。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は④番です。他動的可動域(検者が動かした範囲)が自動的可動域(患者自身が動かせた範囲)よりも大きい場合、関節自体は動くのに、患者さんの筋力が不足しているか、あるいは神経障害により十分な力を発揮できていないことを示します。これは、筋力低下や神経疾患の可能性を示唆する重要な所見です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番:
混同注意! 関節可動域の正常値は関節ごとに異なります。例えば、膝関節の屈曲は約130度、伸展は0度です。すべての関節で180度というのは誤りです。
- ②番: 逆の解釈です。自動的可動域が他動的可動域より小さい場合に、筋力低下や疼痛が原因として疑われます。関節拘縮が疑われるのは、他動的可動域も制限されている場合です。
- ③番: ROM測定は、通常
ゴニオメーター (Goniometer)という分度器のような器具を用いて測定します。エックス線撮影は骨折や脱臼の診断には必要ですが、ROM測定には必須ではありません。
- ⑤番: 自動運動と他動運動の測定値は、筋力低下や疼痛、関節拘縮がある場合に異なることが多く、常に同一であるとは限りません。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 関節拘縮(Contracture)と筋力低下(Muscle Weakness)の鑑別は、看護計画を立案する上で重要です。拘縮が疑われる場合は関節可動域訓練(ストレッチ)を、筋力低下が疑われる場合は筋力増強訓練(レジスタンス運動)を優先します。
概念整理:
- **自動的可動域 (Active ROM)**: 患者自身の筋収縮で動かせる範囲。筋力・疼痛・協調性の評価。
- **他動的可動域 (Passive ROM)**: 検者が外力で動かせる範囲。関節自体の構造(拘縮・癒着)の評価。
- **両者の差 (Difference)**: 他動ROM > 自動ROM → 筋力低下・神経障害が疑われる。
一目で比較!:
| 状態 | 自動ROM | 他動ROM |
|---|
| 正常 | 正常範囲 | 正常範囲 |
| 筋力低下 | 制限あり | 正常 |
| 関節拘縮 | 制限あり | 制限あり |
看護過程ポイント:
- **アセスメント**: ROM測定前に、患者の疼痛の有無を必ず確認する。疼痛がある場合は、鎮痛処置後に測定するか、または無理に行わない。
- **計画**: 筋力低下が疑われる患者には、ベッド上での足首のポンプ運動(自動運動)や、下肢挙上運動などを計画する。
- **実施**: 測定時は、関節をゆっくりと支えながら動かし、無理な力で動かさない。
暗記のコツ:
「自動ROM = 自分で動かす = 筋力の問題」
「他動ROM = 他人が動かす = 関節自体の問題」
と覚えましょう。
国試頻出ポイント:
ROMの定義(自動 vs 他動)と、その結果から何が疑われるか(筋力低下 vs 関節拘縮)をセットで問う問題が頻出です。また、測定器具が
ゴニオメーターであることも必ず押さえておきましょう。
出題パターン注意!:
事例問題で「脳梗塞後遺症で左片麻痺の患者。左肩関節の自動ROMは45度、他動ROMは150度でした。この患者に最も適切な看護介入はどれか」のように発展します。この場合、筋力低下が原因とアセスメントし、筋力増強訓練を優先します。