核心解説
この問題は、
膝関節 (Knee Joint) の安定化に重要な靭帯とその作用を問うています。膝関節は
体重負荷と可動性のバランスをとる複雑な関節 であり、複数の靭帯が協調して機能することで安定性を保っています。それぞれの靭帯の作用を正しく理解することが、国試対策と臨床での外傷評価に不可欠です。
1.
正解の根拠 (Answer Rationale): ①の「
前十字靭帯 (Anterior Cruciate Ligament, ACL) - 下腿の前方引き出しを制限する」が正解です。
最重要! ACLの主な役割は、
脛骨が大腿骨に対して前方にずれる(前方引き出し)のを防ぐ ことです。この作用を評価するのが、身体診察で行われる「引き出しテスト (Drawer Test)」や「Lachmanテスト」です。
2.
誤答の分析 (Distractor Analysis): 各選択肢の誤りを、混同しやすいポイントと共に解説します。
- ②番の「
後十字靭帯 (Posterior Cruciate Ligament, PCL)」は、
混同注意! 下腿の前方引き出しではなく、
下腿の後方引き出し(脛骨が後方にずれるのを防ぐ) を制限します。ACLと作用が真逆なので、セットで覚えましょう。
- ③番の「
外側側副靭帯 (Lateral Collateral Ligament, LCL)」の作用は正しいです。
膝関節の内反 (Varus) ストレス(膝が外側に曲がる力)を制限します。 しかし、この問題では最も適切な組み合わせを一つ選ぶ形式であり、①が正解となるため、③は誤りとして扱われます。
- ④番の「
膝蓋靭帯 (Patellar Ligament)」は、
混同注意! 膝関節の回旋運動を制限するのではなく、
膝関節の伸展(伸ばす動き) に寄与します。膝蓋骨から脛骨粗面に付着し、大腿四頭筋の力を伝達する重要な組織です。
- ⑤番の「
内側側副靭帯 (Medial Collateral Ligament, MCL)」の作用は正しいです。
膝関節の外反 (Valgus) ストレス(膝が内側に曲がる力)を制限します。 LCLと作用が対称です。
3.
関連概念の整理 (Related Concepts): 膝関節の靭帯は、「ACL-PCL-内側側副靭帯-外側側副靭帯」の4つが基本です。これらは「4大靭帯」と呼ばれ、損傷メカニズム(スポーツ外傷、交通事故など)を理解する上で重要です。ACL損傷は「kissing contusion」と呼ばれる骨挫傷を伴うことが多く、MRI検査で診断されます。
概念整理: 膝関節4大靭帯と作用
| 靭帯 | 作用 | 評価テスト |
|---|
| 前十字靭帯 (ACL) | 下腿の前方引き出し制限 | 前方引き出しテスト, Lachmanテスト |
| 後十字靭帯 (PCL) | 下腿の後方引き出し制限 | 後方引き出しテスト, 後方沈み込みテスト |
| 内側側副靭帯 (MCL) | 外反 (Valgus) ストレス制限 | 外反ストレステスト |
| 外側側副靭帯 (LCL) | 内反 (Varus) ストレス制限 | 内反ストレステスト |
一目で比較!: ACL vs PCL(前方vs後方の引き出し制限)、MCL vs LCL(外反vs内反のストレス制限)を対比させて覚えましょう。
看護過程ポイント: 膝関節靭帯損傷患者のアセスメントでは、損傷メカニズム(受傷機転)の聴取が最も重要です。「膝がガクッとなる」「音がした」などの訴えはACL損傷を示唆します。急性期はRICE処置(安静 (Rest), 冷却 (Icing), 圧迫 (Compression), 挙上 (Elevation))を優先します。
暗記のコツ: 「ACLは前方のA、PCLは後方のP」と語呂合わせで覚えましょう。また、膝を内側から支えるMCLは外反ストレス(膝が外側から押されて内側に曲がる力)に抵抗するとイメージすると間違えにくいです。
国試頻出ポイント: 国試では、靭帯の作用と損傷時の身体所見(陽性となるテスト)の組み合わせが頻出です。特にACL損傷とPCL損傷の鑑別は必須です。
出題パターン注意!: 「サッカー選手が相手と接触して膝を強く捻り、受傷直後に関節内に出血(関節血腫)が認められた。最も疑われる損傷はどれか。」のような事例問題でACL損傷が問われることが多いです。