看護学のコア解説
この問題は、
塞栓除去術 (Embolectomy)後の患者の
術後アセスメント (Postoperative assessment)と、
ここがポイント! 最も緊急性の高い合併症の兆候を見極める能力を問うています。塞栓除去術は、動脈(特に下肢)に詰まった血栓を取り除く手術です。術後は、
再塞栓 (Re-embolization)や、新たな血栓が肺動脈に飛んで起こる
肺塞栓症 (Pulmonary embolism, PE)が最も危険な合併症です。
重要概念の分析 (Key Concept)
術後看護では、
ABC(気道・呼吸・循環)の優先順位に基づき、生命を脅かす状態を最優先で発見・対応することが基本です。選択肢4の「突然の激しい胸痛と呼吸困難」は、
肺塞栓症 (PE)の典型的な症状です。PEは、下肢などの深部静脈にできた血栓が剥がれ、肺動脈を塞ぐことで起こり、
酸素化が著しく障害され、心停止に至る可能性のある緊急事態です。術後6時間という時期は、麻酔からの覚醒や臥床による静脈うっ滞などから、血栓が形成されやすいリスクの高い時間帯です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢4が正解です。その理由は、
ここがポイント! 「突然の」激しい胸痛と呼吸困難という症状が、
肺塞栓症 (PE)という生命に関わる合併症を強く示唆するからです。看護師は、この症状を認めたら、直ちに医師に報告し、酸素投与、バイタルサインの継続的モニタリング、必要な検査(CT肺動脈造影など)の準備を開始するなど、
緊急介入を開始しなければなりません。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、塞栓除去術後にはある程度予想される所見であり、緊急性は低いか、経過観察で対応可能なものです。
① 創部の軽度の疼痛(4/10):術後6時間では麻酔が切れる時期であり、
4/10程度の疼痛は管理された範囲内です。疼痛管理計画に沿った対応で十分です。
② 足背動脈拍動が術前より弱い:塞栓除去術の目的は血流再開です。術直後は浮腫や血管の攣縮などで拍動が弱いこともあります。重要なのは「拍動が触知できるかどうか」であり、継続的な観察が必要ですが、緊急介入を要する所見ではありません。
③ 創部ドレッシングの漿液血性排液:術後早期の少量の漿液血性排液は、正常な創傷治癊過程の一部です。大量の鮮血流出や感染徴候がなければ、定期的な交換で対応します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・
深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis, DVT):PEの主な原因。術後患者は絶対安静による静脈うっ滞、血管内皮損傷、血液凝固能亢進(Virchowの3徴)によりリスクが高まります。
・
予防的看護ケア (Preventive nursing care):早期離床、弾性ストッキング着用、間欠的空気圧迫装置、十分な水分摂取、医師の指示による抗凝固療法などが重要です。
概念のまとめ
・最優先は
ABC(気道・呼吸・循環)の異常。
・術後患者の
肺塞栓症 (PE)リスクは常に念頭に置く。
・「突然の」「激しい」という修飾語は、緊急性の高い病態を示す重要なキーワード。
一目で比較!
| 所見 | 緊急性 | 考えられる原因/対応 |
|---|
| 突然の激しい胸痛・呼吸困難 | 緊急度高 (Immediate intervention required) | 肺塞栓症 (PE)。酸素投与、医師緊急コール、検査準備。 |
| 創部の軽度疼痛 | 低 (Low) | 術後経過として予想範囲。疼痛スケールに基づく鎮痛薬投与。 |
| 拍動の減弱(触知可) | 中 (Moderate) | 血流再開後の経過観察項目。継続的な循環アセスメントが必要。 |
| 漿液血性排液 | 低 (Low) | 正常な創傷治癊過程。量・色・性状の観察を継続。 |
解剖生理と薬理のポイント
・
肺塞栓症 (PE):塞栓子が肺動脈を閉塞→肺血流減少→換気/血流比不均等→低酸素血症。また、肺血管抵抗上昇→右心負荷増大→右心不全に至る可能性あり。
・予防的薬物:
ヘパリン (Heparin)、
低分子ヘパリン (LMWH)、
直接経口抗凝固薬 (DOAC)。出血リスクとのバランスを考慮。
暗記のコツとゴロ合わせ
・PEの症状:「
突然、胸が痛くて息が苦しい」→「
緊急事態」と結びつける。
・術後合併症の優先順位:
「ABCが最優先、その次が出血と感染、そしてDVT/PEに注意」。
国試頻出ポイント
術後患者のアセスメントで、「最も緊急な対応を要するものはどれか」「優先度が高い看護ケアはどれか」という形で頻出します。症状の「急激さ」と「重症度」に注目して選択肢を絞り込みましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「肺塞栓症」のテーマでも、
1. 症状を問う問題(本問)
2. 予防的看護ケアを問う問題(早期離床、弾性ストッキングなど)
3. 抗凝固療法中の患者観察ポイントを問う問題(出血傾向のアセスメント)
など、多角的に出題されます。核となる病態生理を理解しておけば、どのパターンにも対応できます。