看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
急性リンパ性白血病の患者さんが化学療法開始後24時間経過し、全身倦怠感、悪心、尿量減少を訴えています。心電図モニターではテント状T波が確認され、血液検査の結果、上記のような危険な電解質異常が判明しました。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメントと報告: 直ちに医師(腫瘍内科医、腎臓内科医)に連絡し、検査結果と臨床症状(バイタルサイン、心電図変化、尿量、意識レベル)を報告します。
2.
緊急処置の準備: 医師の指示に基づき、緊急血液透析の準備を開始します。血管アクセス(中心静脈カテーテル)の確認、透析室への連絡、必要な同意書の準備を行います。
3.
安全確保: 患者を絶対安静とし、心電図モニターを継続。高カリウム血症による不整脈(心室細動など)に備えて、除細動器と救急カートをベッドサイドに準備します。グルコン酸カルシウムなど医師の指示による緊急薬の投与準備も行います。
4.
継続的モニタリング: 透析中および透析後も、バイタルサイン、電解質、尿量、体重を厳密にモニタリングし、体液バランスの変化を評価します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
- 輸液管理: 腎機能が低下しているため、輸液速度と総量には細心の注意を払い、体液過剰による心不全や肺水腫を予防します。
- 薬剤投与: 腎排泄型の薬剤(多くの抗生物質、アロプリノールなど)は、腎機能に応じて用量調整が必要です。医師の指示を確認します。
- 患者・家族への説明: 緊急性の高い状況であることを穏やかにしかし明確に伝え、行われる処置(透析など)の目的と手順について説明し、不安の軽減に努めます。
看護処置と与薬フロー
| 状況 | 看護介入の優先順位 | 根拠 |
|---|
| TLS予防期 | 積極的輸液、アロプリノール/ラスブリカーゼ投与、頻回採血 | 代謝異常の発生を未然に防ぐ |
| TLS発症(軽度) | 輸液継続、電解質補正(例:高K血症に対するイオン交換樹脂)、利尿薬検討 | 腎機能を維持しつつ異常を是正 |
| TLS発症(重度・本例) | 緊急血液透析の準備と実施 | 生命を脅かす異常を迅速に是正する唯一の確実な方法 |
先輩看護師からの一言
「腫瘍崩壊症候群は、治療が『効いている』証拠でもありますが、同時に命に関わる合併症の入り口でもあります。化学療法開始後は、『予防』の意識を持って尿量や全身状態を観察し、検査データのほんの少しの変化も見逃さないことが、このような緊急事態を防ぎ、患者さんを安全に治療のゴールへ導く看護師の重要な役割です。国試でも『優先度』が問われるのは、臨床現場で瞬時に判断する力が求められるからですよ!」