看護学のコア解説
この問題は、
大腿骨頸部骨折 (Femoral neck fracture)、特に
転位を伴う骨折 (Displaced fracture)の特徴的な身体的所見について問うています。交通事故後の高齢者に多い外傷です。
重要概念の分析 (Key Concept)
大腿骨頸部骨折は、股関節の関節包内に発生する骨折です。転位(骨片がずれている状態)がある場合、
外旋・短縮変形 (External rotation and shortening deformity)という非常に特徴的な肢位を呈します。これは、骨折によって筋肉の牽引力のバランスが崩れ、下肢が自然と特定の位置に固定されるためです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 選択肢④「患側下肢の外旋と短縮」が最も特異的です。そのメカニズムは以下の通りです。
1.
外旋 (External rotation):骨折により、股関節を外旋させる筋肉(中殿筋、小殿筋の後部線維など)の牽引力が相対的に強まるため、足先が外側を向きます。
2.
短縮 (Shortening):骨折部が転位し、骨頭が支えを失うことで、大腿骨が上方に引き上げられ(近位転位)、脚の長さが短く見えます。
この所見は、ベッド上で患者を仰臥位にした時に一目で確認できる、
診断的価値の高い所見 (Diagnostic sign)です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 「荷重時に増悪し、安静時に軽減する疼痛」:これは多くの整形外科疾患(変形性関節症、筋挫傷など)や安定型の骨折でも見られる一般的な症状です。転位を伴う大腿骨頸部骨折では、通常、安静時でも激痛があり、荷重は不可能です。
② 「股関節周囲の打撲痕と腫脹」:打撲や腫脹は軟部組織損傷でよく見られますが、関節包内骨折である大腿骨頸部骨折では、関節包が腫脹を局所化するため、外見上の腫脹が目立たないことが多いです(
混同注意! 関節包外骨折である転子部骨折では強い腫脹が見られます)。
③ 「患側股関節の可動域制限」:これは確かに骨折で見られますが、股関節炎、脱臼、その他の外傷でも同様に生じるため、骨折の「最も特異的な」所見とは言えません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・
大腿骨転子部骨折 (Trochanteric fracture):関節包外骨折。強い腫脹、広範な皮下出血、下肢の外旋・短縮変形が見られる。
・
股関節脱臼 (Hip dislocation):多くは強い内旋・内転位を呈する(後方脱臼の場合)。
・
ガーデン分類 (Garden classification):大腿骨頸部骨折の転位の程度をⅠ~Ⅳ度に分類。看護アセスメントの重症度判断に役立ちます。
概念のまとめ
・転位性大腿骨頸部骨折の
特徴的肢位:
患側下肢の外旋・短縮。
・
関節包内骨折のため、外見上の腫脹は比較的少ない。
・高齢者では軽微な転倒でも発生する(骨粗鬆症が背景)。
一目で比較!
| 骨折の種類 | 好発部位・特徴 | 主要な身体的所見 |
|---|
大腿骨頸部骨折 (Femoral neck fracture) | 関節包内。骨頭への血流障害リスク高。 | 外旋・短縮変形。腫脹は目立たないことが多い。 |
大腿骨転子部骨折 (Trochanteric fracture) | 関節包外。豊富な血流。 | 外旋・短縮変形に加え、強い腫脹・皮下出血。 |
解剖生理と薬理のポイント
・大腿骨頸部は
関節包内にあり、栄養血管(特に内側大腿回旋動脈)の損傷により、
骨頭壊死 (Avascular necrosis of the femoral head)の合併症リスクが高まります。これが手術の緊急性や術式選択(人工骨頭置換術など)の重要な決定要因になります。
暗記のコツとゴロ合わせ
「
首(頸部)を骨折したら、足が外に回って短くなる」とイメージしましょう。外旋・短縮はセットで覚えます。
国試頻出ポイント
大腿骨頸部骨折は、
老年看護学と
整形外科看護の頻出テーマです。「特徴的な肢位」「合併症(骨頭壊死、褥瘡、深部静脈血栓症など)」「術後看護(脱臼予防肢位、早期離床の重要性)」がセットで出題されます。
国試出題パターンの変化に注意!
「最も特異的な所見は?」という直接的な問い方の他に、「観察により確認できる所見は?」「この骨折で予想される合併症は?」「術後の禁忌肢位(内旋・内転・90度以上の屈曲)は?」など、多角的に出題されます。基本の肢位を押さえ、そこから関連知識を広げる学習が効果的です。