看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
60歳男性。肥満、高血圧の既往あり。深夜、左母趾(親指)の激痛で目が覚め、患部が赤く腫れ上がり、布団がかかるだけでも痛みが増すため救急外来を受診。血液検査で尿酸値
9.5 mg/dL(正常
7.0 mg/dL以下)と高値を示し、痛風の急性発作と診断され入院。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント:疼痛の強度(NRSなど)、部位、関節の可動域制限、バイタルサイン(発熱の有無)、日常生活動作 (ADL) への影響を評価します。
2.
安静の確保:患部の関節を安静に保つよう指導し、必要に応じて副子 (Splint) やクッションを用いて固定・挙上します。ベッドメイキングや体位変換時は、患部に触れないよう細心の注意を払います。
3.
疼痛管理:医師の指示に基づき、NSAIDsやコルヒチンを投与します。薬剤の効果と副作用(特に消化器症状)を観察します。非薬物的ケアとして、患部の冷却を実施します。
4.
患者教育:急性期の安静の重要性を説明し、回復期に向けた生活指導(水分摂取、プリン体の多い食品・アルコールの制限、適正体重の維持)の準備を始めます。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
- 急性期の温熱療法やマッサージは絶対に行わないでください。
- 尿酸降下薬(アロプリノールなど)は、急性発作が完全に治まってから開始するのが原則です。発作中に開始すると症状を遷延化させる恐れがあります。
- 腎機能が低下している患者では、コルヒチンの投与量に注意が必要です。
概念のまとめ
痛風急性発作期の看護目標:炎症と疼痛の軽減。
最優先ケア:患部関節の安静・固定・冷却。
禁忌ケア:運動、温熱、マッサージ。
薬物療法:急性期は抗炎症・鎮痛薬(NSAIDs、コルヒチン)。慢性期は尿酸降下薬。
一目で比較!
| 時期 | 目標 | 看護ケア・介入 | 禁忌・注意点 |
|---|
| 急性発作期 | 炎症・疼痛の鎮静化 | 安静、固定、冷却、薬物療法 | 運動、温熱、マッサージ、尿酸降下薬の開始 |
| 慢性期(間欠期・寛解期) | 再発予防、関節機能維持 | 食事療法、薬物療法(尿酸降下薬)、適度な運動、減量 | プリン体・アルコールの過剰摂取、脱水 |
解剖生理と薬理のポイント
尿酸 (Uric acid)はプリン体の最終代謝産物です。腎臓からの排泄低下や産生過剰により血中濃度が上昇(高尿酸血症)すると、関節液内で結晶化します。この
尿酸塩結晶 (Urate crystals)が好中球に貪食され、強い炎症性サイトカインが放出されることで、激痛を伴う急性関節炎(痛風発作)が起こります。
コルヒチンは、好中球の関節内への遊走と活性化を抑制することで抗炎症作用を示します。
暗記のコツとゴロ合わせ
痛風の急性期ケアは「
冷やす、動かさない、温めない」の3原則で覚えましょう!
ゴロ:「
痛風でアツい? 冷やして安静!」(「アツい」は炎症の熱感と痛みの両方をイメージ)
国試頻出ポイント
痛風は、
「急性期と慢性期のケアの違い」が非常に頻出です。また、
禁忌となるケア(温熱、運動)や、
尿酸降下薬を急性期に開始してはいけない理由もよく問われます。検査値では、尿酸値の正常範囲(7.0 mg/dL以下)と、痛風結節ができる部位(耳介、肘関節など)も押さえておきましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「安静が優先」と問うだけでなく、「患者が『動かしたほうがいいですか?』と質問したらどう説明するか」といった患者教育・説明の場面や、「温湿布と冷湿布、どちらを勧めるか」といった具体的な介入の選択肢を問う問題も増えています。常に「なぜそれが正しい/間違っているのか」の根拠を考えながら学習することが大切です。