看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)救急外来に、現場で倒れた65歳の建設作業員が搬送されてきました。外気温は35°C、湿度70%。患者さんは「おかしなことを言う」「落ち着きがない」状態です。バイタルサインは、体温
40.5°C、脈拍
120回/分、血圧
100/60 mmHg、呼吸数
28回/分。触診で皮膚は「熱く、カラカラに乾いている」と感じました。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)1.
一次評価 (Primary Survey): ABC(気道、呼吸、循環)を確保しつつ、
ここがポイント! 直腸温で深部体温を測定します(腋窩温は不正確)。
2.
緊急冷却 (Emergency Cooling): 医師の指示を待たず、直ちに冷却を開始します。衣服を脱がせ、全身に冷水を噴霧し、扇風機で風を当てます(蒸散冷却)。腋窩、頸部、鼠径部に氷枕を当てます。冷却は体温が
39°C程度まで下がるか、震え(シバリング)が出現するまで継続します。
3.
モニタリング (Monitoring): 体温の経時的モニタリング、意識レベル(JCSやGCS)、バイタルサイン、尿量を厳重に観察します。熱中症は多臓器障害(DIC、横紋筋融解症、急性腎障害)を合併するリスクが高いためです。
4.
支持療法 (Supportive Care): 酸素投与、輸液ラインの確保を行います。輸液は、循環動態をみながら慎重に開始します(過剰投与は肺水腫のリスク)。
患者の安全と注意事項 (Precautions)・解熱剤(アセトアミノフェンなど)は
混同注意! 無効であり、肝障害のリスクがあるため使用しない。熱中症は感染による発熱(発熱:Fever)とは病態が異なります。
・冷却中は過度のシバリング(震え)に注意し、出現したら冷却を一時中止または弱めます。シバリングは産熱を促し、冷却効果を打ち消します。
・意識障害があるため、気道確保と誤嚥予防に細心の注意を払います。
看護処置と与薬フロー
| 状況 | 看護介入の優先順位 | 根拠と注意点 |
|---|
熱中症疑い (意識変化+高体温) | 1. 救急要請 & 環境冷却 2. ABC評価 & 酸素投与 3. 積極的体表冷却の開始 4. バイタル・意識レベルの継続的モニタリング | ・「冷却第一」が原則。時間経過が予後を左右。 ・解熱剤は禁忌。 ・輸液は医師指示のもと、循環動態を評価しながら慎重に。 |
先輩看護師からの一言
「夏の救急外来では、『暑い中で具合が悪くなった』患者さんをよく見ます。その時、看護師として最初に確認すべきは『お名前は?今日は何月何日ですか?』という意識レベルの確認と、『皮膚に触れてみる』ことです。『汗をびっしょりかいているけど冷たい』のか、『カラカラで熱い』のか。このたった一つの観察が、熱疲労なのか命に関わる熱中症なのかを分け、その後の救命の流れを決めるのです。国試でも臨床でも、この『皮膚所見と意識状態』の組み合わせは絶対に覚えておいてください!」