看護学のコア解説
この問題は、
貫通性胸部外傷 (Penetrating chest trauma)、特に
刺入物 (Impaled object)が残存している患者に対する
最優先の看護介入 (Highest priority nursing intervention)を問うています。外傷看護の基本原則である
ABCアプローチ (Airway, Breathing, Circulation)と、刺入物管理の特殊性を理解することが鍵です。
重要概念の分析 (Key Concept)
貫通性胸部外傷は、
気胸 (Pneumothorax)、
血胸 (Hemothorax)、
心タンポナーデ (Cardiac tamponade)など、直ちに生命を脅かす合併症を引き起こす可能性があります。刺入物が体内に残っている場合、その物体は周囲の血管や臓器を塞ぐ「栓」の役割を果たしていることが多く、無理に抜去すると大出血や空気塞栓を誘発し、患者の状態を劇的に悪化させます。したがって、
ここがポイント! 現場での基本原則は「
刺入物はその場に固定し、抜かない」です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の①「刺入物を固定し、そのままの位置に残す」は、外傷初期対応の国際的なガイドライン(例:ATLS: Advanced Trauma Life Support)に基づく標準的な処置です。物体を動かさずに固定することで、二次的な損傷や出血のリスクを最小限に抑え、安全な搬送と専門医による確実な処置(多くの場合、手術室での抜去)を可能にします。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②「刺入物を直ちに取り除き、創部を評価する」は、最も危険な行為です。物体が大血管や心臓に刺さっている場合、抜去により致死的な出血を引き起こします。また、胸部の場合、抜去により
開放性気胸 (Open pneumothorax)が生じ、呼吸状態が急激に悪化するリスクがあります。
③「刺入物の周囲に直接圧迫をかける」は、四肢の出血などでは有効ですが、刺入物が残存している胸部創傷では、圧迫により物体が深く押し込まれたり、角度が変わったりして、さらなる損傷を引き起こす可能性があります。
④「患者をファウラー位(半坐位)に体位変換する」は、呼吸困難を和らげる一般的な体位ですが、
最優先事項 (Highest priority)ではありません。まずは刺入物を安定させ、気道・呼吸・循環(ABC)の安定を図ることが先決です。体位変換の過程で刺入物が動くリスクもあります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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開放性気胸 (Open pneumothorax): 胸部に開放創があり、胸腔と外界が交通している状態。吸気時に空気が創から胸腔内に入り、肺が虚脱する。緊急処置は、創部を閉鎖する(例:三方弁式ドレッシング)。
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緊張性気胸 (Tension pneumothorax): 胸腔内の圧力が上昇し、縦隔が健側に偏位する緊急事態。気管偏位、患側呼吸音消失、頸静脈怒張が特徴。直ちに針減圧が必要。
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外傷の一次評価 (Primary survey): ABCDE(気道、呼吸、循環、神経学的障害、全身脱衣)の順で、生命を脅かす状態を迅速に評価・処置する。
概念のまとめ
貫通性胸部外傷+刺入物残存 → 最優先ケアは「
固定して抜かない」→ 二次損傷と大出血を防ぎ、安全な搬送・手術へつなぐ。
一目で比較!
| 状況 | 原則的な対応 | 理由 |
|---|
| 刺入物が残存(胸部、腹部、眼など) | 物体を固定し、そのまま残す | 抜去による大出血・臓器損傷・空気塞栓を防ぐ |
| 四肢の刺創で出血あり(刺入物なし) | 直接圧迫止血 | 出血コントロールが最優先 |
| 開放性気胸(大きな胸部創) | 三方弁式ドレッシングなどで閉鎖 | 胸腔内への空気流入を止め、肺虚脱を防ぐ |
解剖生理と薬理のポイント
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胸腔 (Thoracic cavity)は陰圧に保たれており、肺の拡張を可能にしている。貫通創があるとこの陰圧が破られ、
肺虚脱 (Atelectasis)が起こる。
* 心臓や大動脈・大静脈などの
縦隔内臓器 (Mediastinal structures)に刺入物が及ぶと、瞬時に循環不全に至る。
* 刺入物が肺実質を損傷すると、
気管支肺動脈瘻 (Bronchopulmonary arterial fistula)を形成し、抜去時に大量の空気塞栓を生じる危険がある。
暗記のコツとゴロ合わせ
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「刺さったら、動かすな、抜くな、固定せよ」 – 刺入物管理の鉄則です。
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「ABCが先、体位は後」 – どんなに呼吸苦があっても、まずは気道・呼吸・循環の安定と刺入物の固定が最優先。体位調整はその次です。
国試頻出ポイント
刺入物管理は、
救急看護 (Emergency nursing)と
外傷看護 (Trauma nursing)の超重要テーマです。「最優先の看護行動は?」「行ってはいけない看護行動は?」という形で繰り返し出題されます。状況設定(胸部、腹部、眼球など)が変わっても、
「抜かない・固定する」という基本原則は変わりません。
国試出題パターンの変化に注意!
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基本型: 本問のように、刺入物への対応そのものを問う。
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応用型: 「刺入物を固定した後、次に行うべき観察項目は?」と、二次評価(バイタルサイン、呼吸音、頸静脈怒張など)や合併症のアセスメントを問う。
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禁忌行動型: 「看護師が行ってはいけない行動は?」と、誤った介入(抜去や周囲の強圧迫)を選択肢に混ぜて出題される。