看護学のコア解説
この問題は、
白内障手術 (Cataract surgery) を受ける患者に対する、術前指導の中で
最も優先度の高い指導事項を問うています。白内障手術は局所麻酔下で行われることが一般的であり、全身麻酔とは異なる術前・術後の管理ポイントが存在します。
重要概念の分析 (Key Concept)
白内障手術は、濁った水晶体を超音波で乳化吸引し、代わりに人工の眼内レンズ (Intraocular lens, IOL) を挿入する手術です。術後の合併症を予防するためには、
眼内圧 (Intraocular pressure, IOP) の急激な上昇を避けることが極めて重要です。頭部を下げる姿勢や力む動作は、眼内の静脈圧を上昇させ、眼内圧を高め、
術後出血 (Postoperative hemorrhage) や
創部離開 (Wound dehiscence)、
眼内レンズの偏位 (Lens displacement) などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 正解の選択肢②「術後は前かがみになったり重いものを持ち上げたりすることを避ける」は、
眼内圧上昇の予防という最も重要な術後管理の原則に直結します。この指導は、患者が退院後も自宅で安全に過ごすために不可欠であり、術前指導の中で最も強調すべき事項です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「手術当日の朝も普段通りにすべての薬を服用する」:これは一般的な術前指導ですが、白内障手術では
抗凝固薬 (Anticoagulants)や
抗血小板薬 (Antiplatelet agents)(例:ワルファリン、アスピリン)を継続すると術中・術後の出血リスクが高まります。医師の指示に基づき、これらの薬剤の中止や調整が必要な場合が多いため、「すべて」服用するという指導は適切ではありません。
③「処置の24時間前にコンタクトレンズを外す」:コンタクトレンズは手術前に外す必要がありますが、通常は手術当日の朝や、術前の数時間前に外す指示が一般的です。24時間前というのは必須の絶対条件ではなく、最も重要な指導事項とは言えません。
④「全身麻酔の場合と同様に、手術の8時間前から絶飲食する」:
混同注意! 白内障手術は多くの場合、
局所麻酔 (Local anesthesia) または
眼局所麻酔 (Topical anesthesia) で行われます。全身麻酔ではないため、厳格な絶飲食は通常必要ありません。軽食や水分の摂取が許可されることが多く、この指導は誤りです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
白内障術後のその他の重要な指導事項には、以下のものがあります:眼をこすらない、処方された点眼薬を正しく使用する、眼保護用のシールド(特に就寝時)を装着する、感染徴候(痛みの増強、視力低下、充血、膿性分泌物)に注意するなどです。
概念のまとめ
白内障手術後の最大のリスクは「眼内圧の上昇」。それを引き起こす「前屈み・力む動作・重い物を持つ」ことを避ける指導が最優先。
一目で比較!
| 項目 | 白内障手術 (局所麻酔) | 一般的な全身麻酔手術 |
|---|
| 絶飲食 | 軽食・水分可の場合が多い (医師の指示による) | 通常、術前8時間以上の絶飲食が必要 |
| 術前服薬 | 抗凝固薬・抗血小板薬は中止指示が多い | 内服継続か中止かは手術・疾患による |
| 術後禁忌動作 | 前屈み、重い物を持つ、眼をこする (眼内圧上昇防止) | 創部に応じた制限 (縫合部への負担防止) |
解剖生理と薬理のポイント
眼内圧 (IOP) は、房水の産生と流出のバランスで保たれています。手術により眼内の構造が一時的に不安定になっている状態で、頭部を下げたり腹圧をかけたりすると、眼内の静脈うっ血が生じ、房水の流出が妨げられ、眼内圧が急上昇します。これが術後合併症の原因となります。
暗記のコツとゴロ合わせ
白内障術後の禁忌動作は「
屈む、持つ、こする」の3つ!「
くっと目に圧力がかかる」と連想しましょう。
国試頻出ポイント
白内障手術の術前・術後ケアは頻出です。特に「全身麻酔と局所麻酔の違いによる絶飲食指導の違い」と「眼内圧上昇を防ぐための生活指導」はセットで出題されることが多いです。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「正しい指導はどれか」だけでなく、「患者の『重い買い物袋を持ち帰りたい』という訴えに対して、看護師が最も優先して行う説明はどれか」など、具体的な患者の言動に基づいた応用問題の形で出題されることも増えています。