看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)外来で「最近、右耳が詰まった感じがして、テレビの音が聞き取りづらい」と訴える70歳の男性患者。耳鏡で観察すると、外耳道をほぼ塞ぐ茶褐色の硬い耳垢を認める。鼓膜は見えないが、痛みや耳漏はない。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)1.
アセスメント:耳鏡を用いて外耳道と鼓膜(可能な範囲で)を観察。痛み、耳漏、発熱、めまいの有無を確認。鼓膜穿孔の既往歴を聴取。
2.
初期介入(計画・実施):まずは耳垢軟化剤(例:ミネラルオイル)を処方または使用法を指導。1日1〜2回、数日間点耳し、耳垢が軟化するのを待つ。
3.
次のステップ:軟化後、温めた生理食塩水を用いた外耳道洗浄を実施。洗浄後は耳を下に向けて水分を排出させ、乾いたガーゼで軽く拭う。
4.
評価とフォローアップ:洗浄後に聴力や耳閉感が改善したか確認。改善しない場合や、洗浄中に痛みや出血があれば、医師(耳鼻咽喉科)へ報告・紹介する。
患者の安全と注意事項 (Precautions)・
絶対禁忌! 鼓膜穿孔が確認されている、またはその疑いがある患者への外耳道洗浄は行わない(中耳炎のリスク)。
・点耳薬の液温は人肌程度に温める(冷たい液はめまいを引き起こす)。
・洗浄は強すぎる圧力で行わない。
看護処置と与薬フロー
| ステップ | 行動 | 根拠・注意点 |
|---|
| 1. 準備・説明 | 手順を説明し、同意を得る。耳鏡、軟化剤、洗浄器具を準備。 | インフォームドコンセントを得る。鼓膜の状態を必ず事前確認。 |
| 2. 軟化処置 | 患者を横向きにし、耳介を後上方に引いて外耳道を真っ直ぐに。軟化剤を数滴滴下。 | 外耳道を真っ直ぐにすることで薬液が深部まで到達。数分間その姿勢を保持。 |
| 3. 洗浄準備 | 軟化後(数日後)、体温程度に温めた生理食塩水を準備。 | 冷たい/熱い液は前庭刺激となりめまいを生じさせる。 |
| 4. 洗浄実施 | 洗浄液をシリンジで外耳道の上壁に沿ってゆっくり注入。排出液を受ける。 | 上壁から注入することで空気の閉塞を防ぎ、耳垢を押し込まない。 |
| 5. 後処置・観察 | 頭を傾けて水分を出し、外耳道入口をガーゼで軽く拭う。聴力や症状を評価。 | 無理に拭き取らない。感染や損傷の兆候(痛み、出血)がないか観察。 |
先輩看護師からの一言
「耳のケアは、『優しく、ゆっくり、確実に』が鉄則です。患者さんは耳が詰まるととても不安になりますが、『まずは柔らかくしてから』という安全なステップを説明すれば安心してもらえます。綿棒での耳掃除は『耳垢を奥に押し込む行為』だと、ご家族にもぜひ指導してくださいね。小さなケアでも、正しい知識と手技が患者さんのQOLを守ります!」