看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは小児病棟の看護師です。VSDによる心不全で入院中の6ヶ月の乳児を受け持ちました。朝のバイタルサイン測定で、心拍数が
98回/分(前日は125回/分)であることを確認しました。哺乳の時間では、普段は150mlを完飲するのに、今日は60mlしか飲まず、ぐったりしています。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
即時のアセスメント:バイタルサイン(特に心拍数と呼吸数)を再測定・記録します。SpO2も確認します。哺乳不良の詳細(嘔吐の有無、機嫌)を観察します。
2.
安全確保と報告:これらの所見は
ジゴキシン中毒 (Digoxin toxicity)の疑いが強いため、
ここがポイント! 直ちに医師に報告します。報告時は「心拍数98回/分、哺乳量が通常の半分以下、ぐったりしている」と具体的に伝えます。
3.
医師の指示待機と協働:医師はジゴキシンの次回投与を保留し、血液検査(ジゴキシン血中濃度、電解質(特に
低カリウム血症 (Hypokalemia)は中毒を増強する))を指示するでしょう。看護師は安全に採血を実施します。
4.
継続的モニタリング:心電図モニターを装着し、不整脈の有無を継続的に観察します。呼吸状態、意識レベル、尿量も注意深く観察します。
5.
家族への説明と精神的支援:保護者に、子どもの状態変化とそれに対する医療チームの対応をわかりやすく説明し、不安を軽減します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
・ジゴキシン投与前には、
必ず1分間の心拍数を測定します。指示された下限心拍数(通常、乳児では100回/分前後が目安)を下回っている場合は、投与を保留し医師に確認します。
・ジゴキシンは他の薬剤と外観が似ていることがあるため、
5つの正確 (Five Rights of Medication Administration)を厳守します。
・嘔吐や下痢がある場合、電解質異常を来しやすく中毒リスクが高まるため、注意が必要です。
看護処置と与薬フロー
| ステップ | 看護アクション | 根拠と注意点 |
|---|
| 1. 投与前アセスメント | 1分間の心拍数測定、哺乳状態・嘔吐の有無の確認、前回投与からの経過時間の確認 | 中毒の初期症状を見逃さない。心拍数が基準値以下なら保留・報告。 |
| 2. 与薬の準備 | 指示量を正確に計量。小児用のシロップ剤の場合、専用のシリンジで吸い上げる。 | 治療域が狭いため、微量の誤差も影響大。他の薬と間違えない。 |
| 3. 与薬 | 口腔内の頬と歯茎の間にゆっくりと注入。哺乳後に行うと嘔吐による損失を防げる。 | 気管に入らないよう注意。確実に服用させる。 |
| 4. 投与後観察 | 30分後程度に心拍数や状態を再確認。異常がないか観察を継続。 | 投与直後の反応を評価する。 |
先輩看護師からの一言
「小児、特に乳児への薬物管理は、『小さな大人』ではありません。代謝や排泄の機能が未熟で、体重当たりの薬用量もシビアです。ジゴキシンのような強心薬は、『効かせる』こと以上に『安全に管理する』ことが看護師の重大な責任です。バイタルサインの“いつもと違う”を見抜く観察力が、子どもの命を守ります。国試でも、『優先度』を問う問題では、『生命の危険に直結するリスクの予防・早期発見』が最上位であることを思い出してください!」