看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは小児病棟の看護師です。2歳の男児(体重12kg)が心室中隔欠損症による心不全で入院し、ジゴキシン(1日量10mcg/kg、2回分割)の内服が開始されることになりました。初回投与を担当することになりました。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
事前準備:医師の指示内容(用量、投与間隔)を確認し、処方箋と照合します。小児用のシロップ剤の場合、専用の計量器具(シリンジなど)を使用し、
ここがポイント! 必ず別の看護師とダブルチェックを行います(選択肢①の行為)。
2.
投与前アセスメント(最優先):患児が安静な状態であることを確認し、
心尖拍動を1分間、聴診器で聴取・カウントします(選択肢②)。同時に、リズムの乱れ(不整脈)がないかも聴取します。心拍数が基準値(例:100回/分)を下回っていたり、不整脈が認められる場合は、
直ちに投与を保留し、医師に報告します。
3.
投与と観察:アセスメントに問題がなければ、指示通りに投与します。小児の場合は、確実に服用されたことを確認します。投与後も、バイタルサイン(特に心拍数)や中毒症状の有無を観察します。
4.
継続的モニタリング:選択肢③と④は、この段階での継続的な看護ケアとして重要です。定期的な血液検査(電解質、ジゴキシン血中濃度)の結果を確認し、水分出納バランスを正確に記録して、心不全のコントロール状態とジゴキシンの安全性を総合的に評価します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
- ジゴキシンは経口摂取後、比較的早く(1-2時間)効果が現れ始めます。投与直後の観察が重要です。
- 嘔吐や下痢がある場合、電解質が喪失され中毒リスクが高まるため、注意が必要です。
- 保護者への服薬指導では、決められた時間に正確な量を投与すること、心拍数を測定する方法(家庭で可能な場合)、中毒症状(食欲不振、嘔吐、元気がないなど)を見逃さないように教育します。
看護処置と与薬フロー
| ステップ | 看護介入 | 根拠と注意点 |
|---|
| 1. 準備 | 指示の確認、薬剤準備、ダブルチェック | 投与誤り防止の基本。小児用量は特に注意。 |
2. 投与前評価 (最優先) | 1分間の心尖拍動聴取・測定 | ジゴキシン投与の絶対的禁忌(徐脈、不整脈)のスクリーニング。 |
| 3. 実施 | 確実な投与(内服の確認) | 小児は吐き出したりむせたりする可能性あり。 |
| 4. 投与後観察 | バイタルサイン、中毒症状のモニタリング | 早期の副作用・中毒症状の発見。 |
| 5. 継続管理 | 検査値(電解質、血中濃度)、I&O記録の評価 | 長期的な安全性と治療効果の評価。 |
先輩看護師からの一言
「小児に強心薬を投与する時は、大人以上に神経を使いますよね。『計算は合っているか』『ちゃんと飲んでくれるか』と心配事はたくさんありますが、まずは『今、この子の心臓はちゃんと動いているか?』に耳を澄ませることがすべてのスタートです。1分間、しっかり聴診器を当てて数える。そのたった1分の習慣が、重大な副作用から子どもを守る最初の、そして最も強力な防波堤になります。国試でも臨床でも、『生命のサインを直接評価する』という看護の基本を忘れないでください!」