看護学のコア解説
この問題は、
小児の下痢と脱水 (Diarrhea and dehydration in children) に対する初期の
看護介入 (Nursing intervention)の優先順位を問うています。小児、特に乳幼児は体表面積が大きく代謝が活発なため、体液喪失の影響を受けやすく、
ここがポイント! 迅速かつ適切な脱水補正が生命予後を左右します。
重要概念の分析 (Key Concept)
中等度脱水 (Moderate dehydration)の特徴は、皮膚ツルゴールの低下、粘膜乾燥、尿量減少などです。この状態では、失われた水分と電解質を同時に補充する必要があります。そのための国際的な標準治療が、
経口補水療法 (Oral rehydration therapy, ORT)であり、その手段として
経口補水液 (Oral rehydration solution, ORS)が用いられます。ORSは、腸管での水分吸収を最大化するために、
混同注意! 単なる水や清涼飲料水ではなく、
ナトリウム (Sodium)と
ブドウ糖 (Glucose)が最適な濃度(WHO推奨:Na 75 mEq/L, Glucose 75 mmol/L)で配合されています。この組み合わせにより、腸管のナトリウム-グルコース共輸送体を活性化し、効率的に水分を吸収します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢②「処方された適切な電解質濃度を含む経口補水液(ORS)を投与する」が正解です。中等度脱水の小児に対する第一選択の介入は、
経口補水療法 (ORT)です。看護師は医師の指示に基づき、ORSを少量頻回で与える方法を両親に指導します。これが、病態生理に基づいた最も安全で効果的な初期介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① リンゴジュースや炭酸飲料などの透明な液体を与えるよう勧める:
混同注意! 清涼飲料水や果汁は浸透圧が高く(高張液)、腸管内に水分を引き寄せてしまい、下痢を悪化させる可能性があります。また、電解質(特にナトリウム)含有量が不適切です。
③ 下痢が完全に止まるまで、腸管を休めるためにすべての経口摂取を控えるよう勧める:脱水状態にある小児に経口摂取を中止することは、脱水をさらに悪化させ、危険です。下痢があっても、腸管の吸収機能は残っているため、ORTは継続すべきです。
④ 栄養とカルシウム補給のために、乳製品を与えるよう提案する:下痢の急性期には、二次性の
乳糖不耐症 (Lactose intolerance)を起こしていることが多く、乳製品は下痢や腹部膨満を悪化させます。栄養補給は脱水が改善した後に考慮します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・脱水の重症度評価:軽度(口渽のみ)、中等度(上記の症状)、重度(嗜眠、陥没脈、無尿など)に分類され、看護アセスメントが治療方針を決定します。
・点滴静脈内注射 (IV infusion) の適応:重度脱水、意識障害、経口摂取不能な場合など、ORTが不可能または不十分な場合に適応となります。
概念のまとめ
・小児の脱水管理の基本は「経口補水療法 (ORT)」。
・経口補水液 (ORS) は、水と電解質を効率的に吸収させるための「特別な処方飲料」。
・清涼飲料水・果汁・牛乳は急性期の下痢脱水には不適切。
一目で比較!
| 飲料の種類 | 特徴と問題点 | 適切な使用タイミング |
|---|
| 経口補水液 (ORS) | Naとグルコースが最適濃度。腸管吸収が最も効率的。 | 下痢・嘔吐による脱水の治療・予防 |
| スポーツドリンク | ORSよりNa濃度が低く、糖分が高い。浸透圧がやや高め。 | 軽度の脱水予防(治療には不適) |
| 果汁・清涼飲料水 | 糖分が非常に高く(高張液)、Naがほとんどない。下痢を悪化させる。 | 脱水時には禁忌 |
| 牛乳・乳製品 | 急性期は乳糖分解能が低下し、下痢・ガスを悪化させる。 | 脱水改善後の栄養補給として |
解剖生理と薬理のポイント
・
ナトリウム-グルコース共輸送体 (SGLT1):小腸の刷子縁に存在するトランスポーター。1分子のグルコースと1分子のナトリウムを同時に細胞内へ取り込む。この際、水も受動的に吸収される。ORSはこの生理的メカニズムを利用している。
・下痢による体液喪失:便中の水分とともに、
ナトリウム (Na)、
カリウム (K)、
重炭酸イオン (HCO3-)が失われ、代謝性アシドーシスを引き起こすリスクがある。
暗記のコツとゴロ合わせ
・「
脱水にはOS-1(オーエスワン)」:日本で広く知られるORSの商品名。イメージで覚える。
・「
ジュースはダメ、ORSで補水」:シンプルな標語で、不適切な飲料と適切な飲料を区別。
国試頻出ポイント
・小児の脱水症状(皮膚ツルゴール、大泉門陥没、尿量減少など)のアセスメント。
・脱水の程度(軽度・中等度・重度)に応じた治療法(ORT vs 点滴)の選択。
・ORSの特徴(電解質濃度、与え方:少量頻回)と、与えてはいけない飲み物の区別。
国試出題パターンの変化に注意!
・単に「適切なケアは?」と問うだけでなく、「母親がリンゴジュースを与えようとしている。看護師の対応として最も適切なのは?」といった、
患者教育 (Patient education)や
家族指導 (Family teaching)の場面を想定した出題が増えています。常に「指導内容」として答えを考えましょう。