看護学のコア解説
この問題は、
小児の下痢と脱水 (Diarrhea and dehydration in children)のケアにおける
優先順位 (Priority setting)を問うています。小児、特に乳幼児は体重に対する体液の割合が高く、代謝回転が速いため、急速に脱水状態に陥りやすいという特徴があります。看護ケアの優先順位は常に
ここがポイント!「生命の安定(ABC:気道、呼吸、循環)」に基づきます。この事例では、循環血液量の維持が最優先課題です。
重要概念の分析 (Key Concept)
問題の核は、
中等度脱水 (Moderate dehydration)の小児に対する初期対応です。中等度脱水では、口渇、不機嫌、皮膚ツルゴールの低下、乏尿などの症状が見られます。病態生理学的には、下痢による水分と電解質(特にナトリウム、カリウム)の喪失が、循環血液量の減少と電解質バランスの乱れを引き起こしています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の②「少量頻回の電解質溶液による経口補水療法を開始する」は、
世界保健機関 (WHO)が推奨する小児下痢症管理の第一選択治療です。中等度脱水では、静脈内輸液 (IV infusion) が必ずしも必要ではなく、安全かつ効果的に経口で水分と電解質を補充できます。少量頻回で与えることで、嘔吐を誘発せず、腸管からの効率的な吸収を促します。これは、患者の状態を安定させ、さらなる悪化を防ぐための
最優先の看護介入 (Priority nursing intervention)です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「下痢止め薬を投与して排便頻度を減らす」:感染性下痢(細菌やウイルス)の場合、下痢は病原体や毒素を体外に排出する防御反応です。安易な下痢止めの使用は、これらを腸内に留め、病状を遷延または悪化させるリスクがあります。看護師は医師の指示なく投与すべきではありません。
③「直ちにBRAT食(バナナ、ご飯、アップルソース、トースト)を提供する」:BRAT食は低脂肪・低残渣で消化に良いですが、栄養価が低く、特に電解質の補充には不十分です。脱水が是正されるまでは、経口補水療法 (Oral Rehydration Therapy: ORT) が優先され、その後、段階的に通常食へ戻していきます。
④「培養と感受性試験のために便検体を採取する」:原因菌の同定は重要ですが、これは診断のための検査であり、
治療的介入ではありません。患者の生命を脅かす脱水状態に対して、まず行うべきは「治療」です。検査は、患者の状態が安定した後、または医師の指示に基づいて実施します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
小児の脱水の重症度は、臨床症状から評価します。体重減少率(軽度:10%)や、臨床所見(機嫌、眼球陥凹、口腔粘膜の乾燥、皮膚ツルゴール、 capillary refill time(毛細血管再充満時間)など)が指標となります。看護師はこれらの所見を継続的に
フィジカルアセスメント (Physical assessment)し、脱水の改善または悪化を判断します。
概念のまとめ
・小児の脱水管理の最優先は、
循環血液量の維持(経口または静脈内による水分・電解質補給)。
・中等度脱水の第一選択治療は
経口補水療法 (ORT)(少量頻回が原則)。
・感染性下痢では、安易な下痢止め投与は禁忌。
・治療(脱水補正)は診断(検査)に優先する。
一目で比較!
| 介入 | 優先度 | 理由 |
|---|
| 経口補水療法 (ORT) 開始 | 最優先 | 生命の安定(循環)に直結する治療的介入 |
| 便培養検査 | 中優先 | 診断に必要だが、治療より優先しない |
| BRAT食の提供 | 後優先 | 脱水是正後の栄養補給。初期治療ではない |
| 下痢止め薬投与 | 禁忌/注意 | 感染性下痢では毒素排出を妨げる可能性 |
解剖生理と薬理のポイント
小児の体は、成人に比べて
体表面積対体重比が大きく、不感蒸泄が多い。また、
腎機能が未熟で濃縮力が低く、水分喪失に脆弱です。経口補水液は、腸管の
ナトリウム-グルコース共輸送体 (SGLT1)を利用します。グルコースの存在下でナトリウムが能動的に吸収され、それに伴って水分も受動的に吸収されるため、単純な水よりも効率的に脱水を改善できます。
暗記のコツとゴロ合わせ
優先順位の原則:「
診断より治療、治療の中でも生命維持が最優先」。
小児脱水の対応フローは「
まずはORT(経口補水)、ダメならIV(静脈輸液)」と覚えましょう。
国試頻出ポイント
「小児の下痢・嘔吐による脱水」は超頻出テーマです。重症度の判断基準(症状)、経口補水療法の方法(少量頻回)、観察ポイント(尿量、皮膚ツルゴール、大泉門の陥凹)、そして今回のような「
優先すべき看護介入は何か」という形で出題されます。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「小児脱水」でも、
「観察すべき所見」を問う問題や、
「経口補水療法が困難な場合の次の対応(静脈内輸液の準備)」を問う問題に変化することがあります。常に「なぜそれが優先なのか」という根拠を理解しておくことが、パターン変化に対応する力になります。