看護学のコア解説
この問題は、
伝染性単核球症 (Infectious mononucleosis)の特徴的な臨床症状を問うています。伝染性単核球症は、主にEBウイルス (Epstein-Barr virus) によって引き起こされる感染症で、思春期や若年成人に多く見られます。
重要概念の分析 (Key Concept)
伝染性単核球症の診断は、典型的な臨床症状の組み合わせが重要です。ウイルスが主に
Bリンパ球 (B lymphocytes)に感染し、これが全身のリンパ組織で増殖することで、特徴的な症状が現れます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 選択肢①の「頸部および腋窩のリンパ節腫脹と脾腫」は、伝染性単核球症の最も特徴的な三徴と言える所見です。
1.
リンパ節腫脹 (Lymphadenopathy):特に後頸部リンパ節が両側性に腫脹することが多く、触ると弾性硬で圧痛を伴います。腋窩リンパ節も腫脹することがあります。
2.
脾腫 (Splenomegaly):リンパ球の増殖により脾臓が腫大します。これは重要な合併症(脾破裂)のリスク要因となるため、看護アセスメント上、最も注意すべき所見の一つです。
これに加えて、発熱、咽頭痛、強い倦怠感(疲労感)が典型的な症状として現れます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、伝染性単核球症よりも他の疾患でよく見られる所見です。
② 体幹や四肢の点状出血(ペテキア):これは
髄膜炎菌性髄膜炎 (Meningococcal meningitis)や、血小板減少をきたす疾患(特発性血小板減少性紫斑病など)で見られることが多い所見です。伝染性単核球症でペニシリン系抗菌薬を投与した場合に皮疹が出ることはありますが、ペテキア自体は特徴的ではありません。
③ 黄色い痰を伴う湿性咳嗽:これは細菌性の
気管支炎 (Bronchitis)や
肺炎 (Pneumonia)で見られる所見です。伝染性単核球症では、咳自体は出ることがあっても、膿性痰は典型的ではありません。
④ 多関節の疼痛と腫脹:これは
関節リウマチ (Rheumatoid arthritis)や他の自己免疫疾患、あるいはウイルス性関節炎で見られる所見です。伝染性単核球症では、筋肉痛や関節痛はあることがありますが、関節の腫脹は主要な所見ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
伝染性単核球症の診断には、臨床症状に加えて血液検査が重要です。
異型リンパ球 (Atypical lymphocytes)の増加、
モノスポットテスト (Monospot test)陽性、EBウイルス抗体価の上昇などが確認されます。看護師は、脾腫がある患者に対して、腹部の打撲や激しい運動を避けるよう指導し、脾破裂のリスクを管理することが重要です。
概念のまとめ
伝染性単核球症 = 思春期・若年成人に多いEBウイルス感染症。特徴は「発熱、咽頭痛、倦怠感 + 頸部リンパ節腫脹 + 脾腫」。脾破裂のリスク管理が看護の要点。
一目で比較!
| 疾患 | 主な原因 | 特徴的な症状 | 看護上の注意点 |
|---|
| 伝染性単核球症 | EBウイルス | 発熱、咽頭痛、頸部リンパ節腫脹、脾腫、強い倦怠感 | 脾腫による脾破裂の予防(接触スポーツ禁止)、十分な休息 |
| 溶連菌感染症(咽頭炎) | A群溶血性連鎖球菌 | 発熱、強い咽頭痛、苺舌、発疹(猩紅熱) | 抗菌薬の確実な内服(合併症予防)、腎炎やリウマチ熱の観察 |
| ウイルス性上気道炎(風邪) | ライノウイルスなど | 鼻水、鼻閉、軽度の咽頭痛、咳嗽 | 対症療法、感染予防の指導 |
解剖生理と薬理のポイント
脾臓は左上腹部に位置するリンパ器官で、古い赤血球の破壊、血液の貯蔵、免疫(抗体産生)に関与しています。EBウイルスはBリンパ球に感染し、その増殖を刺激するため、脾臓を含む全身のリンパ組織が腫大します。腫大した脾臓は被膜が薄く伸展しているため、わずかな外傷でも破裂し、致死的な腹腔内出血を引き起こすリスクがあります。
暗記のコツとゴロ合わせ
伝染性単核球症の特徴を覚えるゴロ合わせ:「
エビ(EB)、熱くて首が腫れて、脾臓もパンパン、ダルダル」
エビ→EBウイルス、熱くて→発熱、首が腫れて→頸部リンパ節腫脹、脾臓もパンパン→脾腫、ダルダル→強い倦怠感。
国試頻出ポイント
伝染性単核球症は、小児看護学・成人看護学の感染症分野で頻出です。特に「
脾腫がある患者への指導・制限」が看護介入としてよく問われます(例:接触の激しいスポーツを少なくとも1ヶ月は避ける、腹部を強打しないよう注意する)。
国試出題パターンの変化に注意!
単に症状を選ばせる問題から、「脾腫のある16歳の患者がサッカー部に入っている場合、看護師が最も優先して行う指導は?」といった、
臨床判断と患者教育を組み合わせた応用問題へと変化しています。病態生理を理解した上で、具体的な看護ケアに結びつける思考が求められます。