看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
5歳の男児、右大腿部に発赤・腫脹・熱感のある膿瘍があり、CA-MRSAと診断され入院。バンコマイシンの静脈内投与が開始され、48時間が経過しました。患児はまだ発熱(37.8℃)があり、患部の疼痛で機嫌が悪く、歩行を嫌がります。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント: バイタルサイン(特に体温)、感染部位のサイズ・色・温度・排膿の有無、疼痛の程度(小児用疼痛スケール使用)、全身状態(水分摂取量、尿量、機嫌、活動性)を定期的に評価します。
2.
感染管理: 接触予防策を継続します。ガウンと手袋を着用し、患児専用の聴診器や体温計を使用します。家族への感染予防教育(手洗いの徹底など)も行います。
3.
治療のモニタリング: 医師の指示通りにバンコマイシンを投与します。バンコマイシン血中濃度測定のための採血時間を守ります。副作用として、尿量減少(腎毒性)、耳鳴りやめまい(聴神経障害)、皮疹(レッドマン症候群)がないか観察します。
4.
患児・家族への支援: 治療の説明を行い、不安を軽減します。疼痛管理には医師の指示に基づき鎮痛薬を使用し、患部を安静に保つよう援助します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
・バンコマイシンは、
ゆっくりと(通常60分以上かけて) 点滴静注します。急速投注はレッドマン症候群(顔面紅潮、掻痒感、血圧低下)を引き起こす危険があります。
・小児の腎機能は未熟な場合があり、腎毒性のリスクが高まります。尿量と血清クレアチニン値の変化に特に注意します。
・接触予防策を正しく実施することで、他の易感染性の高い入院患者への菌の伝播を防ぎます。
看護処置と与薬フロー
| ステップ | 看護ケアのポイント |
|---|
| 1. 与薬前の確認 | 医師の指示(薬剤名、用量、投与速度、間隔)をダブルチェック。患児のアレルギー歴を確認。 |
| 2. 準備 | バンコマイシンを規定の輸液で溶解・希釈。専用の点滴セットを使用。 |
| 3. 投与 | ポンプを使用し、指示された速度(例:60分以上)で確実に投与。急速投与は厳禁。 |
| 4. 観察 | 投与中は患児の状態(呼吸、皮膚症状、訴え)を観察。副作用の初期症状を見逃さない。 |
| 5. 記録 | 投与時間、用量、患児の反応、観察した事項を正確に記録。 |
先輩看護師からの一言
「MRSAと聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、適切な感染対策と確実な治療で必ず治る感染症です。小児患者さんは自分の症状をうまく伝えられないので、看護師の観察力が治療の鍵を握ります。『患部の赤みは引いてきたかな?』『昨日より元気に遊べているかな?』『おしっこの量は減っていないかな?』といった、ちょっとした変化に気づくことが、治療効果の評価や副作用の早期発見につながります。国試でも、『治療の継続と観察』が基本であることを忘れずに!」