看護学のコア解説
この問題は、
発育性股関節形成不全 (Developmental Dysplasia of the Hip: DDH)のスクリーニング検査である
オルトラーニ検査 (Ortolani test)を実施する際の、最も重要な
安全配慮 (Safety consideration)について問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)
オルトラーニ検査 (Ortolani test)は、生後3ヶ月頃までの乳児に用いられるDDHの診断的徒手検査です。乳児を
仰臥位 (Supine position)にし、股関節と膝関節を90度屈曲させた状態で、大腿骨を外転・上方に押し上げます。この時、脱臼している股関節が整復される「クリック音」または「跳ね返る感覚 (clunk)」が触知されれば陽性と判断します。この検査の本質は、
「脱臼した股関節を整復する」操作であるため、過度な力は関節軟骨や血管、神経を損傷するリスクがあります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
ここがポイント! 選択肢②「
優しく扱い、股関節操作中に過度な力を避けること」が正解です。乳児の骨や関節は非常に柔らかく未熟です。特にDDHが疑われる関節は不安定な状態にあります。検査の目的は「脱臼の有無を確認する」ことであり、「強制的に整復する」ことではありません。過度な力による操作は、
大腿骨頭壊死 (Avascular necrosis of the femoral head)や関節包損傷などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。したがって、
安全で優しい操作 (Gentle handling)が最優先の看護ケアとなります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! オルトラーニ検査は
仰臥位 (Supine position)で行います。腹臥位(うつ伏せ)は、
バーロウ検査 (Barlow test)(脱臼の誘発試験)や、股関節の可動域を観察する際の体位であり、オルトラーニ検査の標準的な体位ではありません。
③ 骨盤を強く固定する必要はありません。むしろ、検査者の手で優しく支えながら、股関節に焦点を当てた操作を行います。強固な固定は不要であり、乳児に不快感や恐怖を与える可能性があります。
④ オルトラーニ検査では、股関節と膝関節を90度屈曲させた「蛙肢位」にします。下肢を完全に伸展させた状態では、検査を正しく行うことができません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
DDHのスクリーニングには、オルトラーニ検査とバーロウ検査がペアで用いられます。オルトラーニが「脱臼の整復」を確認するのに対し、バーロウ検査は「脱臼の誘発(脱臼させる)」を確認します。両方とも、
優しい操作が絶対条件です。また、乳児期後期(歩行開始前後)では、
トレンデレンブルグ歩行 (Trendelenburg gait)や脚長差、股関節外転制限などが観察のポイントになります。
概念のまとめ
・
オルトラーニ検査 (Ortolani test):乳児のDDH診断のための徒手整復試験。
・
バーロウ検査 (Barlow test):乳児のDDH診断のための徒手脱臼誘発試験。
・最重要安全配慮:
優しい操作 (Gentle handling)。過度な力は関節損傷のリスク。
・検査体位:
仰臥位 (Supine position)、股関節・膝関節90度屈曲(蛙肢位)。
一目で比較!
| 検査名 | 目的 | 操作 | 陽性所見 | 実施時期 |
|---|
| オルトラーニ (Ortolani) | 脱臼の整復を確認 | 股関節外転・上方圧 | クリック音/跳ね返り感 (clunk) | 生後3ヶ月頃まで |
| バーロウ (Barlow) | 脱臼の誘発を確認 | 股関節内転・後方圧 | クリック音/外れ感 (clunk) | 生後3ヶ月頃まで |
解剖生理と薬理のポイント
・乳児の股関節は、
寛骨臼 (Acetabulum)が浅く、
関節包 (Joint capsule)が緩いため、脱臼しやすい構造です。
・DDHのリスク因子:女児、骨盤位分娩、家族歴、第一子など。
・治療は早期発見が極めて重要。乳児期は
リーメンビューゲル (Pavlik harness)などの装具による保存的治療が第一選択となります。
暗記のコツとゴロ合わせ
・「オルトラーニは
オルート(整復)、バーロウは
バラす(脱臼)」と覚える。
・安全原則は「
赤ちゃんの関節、そっと優しく」。力任せは絶対NG。
国試頻出ポイント
・オルトラーニ/バーロウ検査の「目的」「体位」「陽性所見」「安全配慮」の組み合わせで出題されます。
・「最も適切な看護師の対応はどれか」という形で、安全配慮を問う問題が多いです。
国試出題パターンの変化に注意!
・単純な検査手順の知識から、「患者安全」や「家族への説明」を含めた統合的な看護実践能力を問う問題へと変化しています。例えば、「検査中に児が激しく泣いた場合の対応」や、「陽性所見があった場合の家族への初期説明」などが関連問題として考えられます。