看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは小児病棟の看護師です。生後6ヶ月、水頭症でVPシャント留置術後1ヶ月で退院したAちゃんが、母親に連れられて受診しました。母親は「昨日から機嫌が悪く、ミルクを吐く回数が増え、泣き声がいつもと違って金切り声のようで心配です」と訴えます。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
一次アセスメント (Primary Assessment):まず
ABC(気道、呼吸、循環)を確認。次に、
神経学的アセスメントの要である「大泉門の触診」と「頭囲の測定」を直ちに行います。大泉門が緊満・膨隆していないか、頭囲が前回の記録から急激に増加していないかを確認します。
2.
バイタルサインと詳細観察:体温(感染の有無)、意識レベル(JCSやAVPUスケール)、瞳孔所見、嘔吐の性状・回数を観察します。
3.
緊急対応と連絡:大泉門膨隆や頭囲増加などICP上昇が疑われる所見があれば、
直ちに医師に報告します。同時に、誤嚥を防ぐため側臥位にし、必要に応じて酸素投与の準備をします。
4.
検査・処置への協力:医師の指示で頭部CTなどの緊急画像検査が行われます。検査中も患児の状態を注意深くモニタリングします。
5.
家族への精神的支援と説明:母親の不安に共感的に耳を傾け、現在行っている評価と今後の見通しについて、わかりやすい言葉で説明します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
- 絶対にやってはいけないこと:ICP上昇が疑われる患児に、腰椎穿刺 (Lumbar puncture)を安易に行うことは禁忌です。脳ヘルニアを誘発する危険があります。
- 体位:頸部の静脈還流を妨げないよう、頭部を中間位に保ちます。必要以上に頭部を挙上したり、頸部を屈曲させたりしないようにします。
- 刺激の最小化:検査や処置は必要最小限にまとめ、患児を安静に保ちます。過度の啼泣もICPを上昇させるため、鎮静が必要な場合があります。
看護処置と与薬フロー
シャント不全が確定し、シャント修正術が行われる場合:
- 術前:NPO管理、バイタルサイン(特に神経学的所見)の頻回モニタリング、必要時はICP降下剤(マンニトールなど)の投与準備。与薬時は効果と副作用(電解質異常、 rebound現象)に注意。
- 術後:創部の観察(出血、浸出液、発赤)、神経学的所見のモニタリング、感染徴候(発熱)の有無の確認。疼痛マネジメントも重要。
先輩看護師からの一言
「シャントを持つお子さんを担当する時は、『平常時』の状態をしっかり把握することが命です。普段の頭囲、大泉門の触感、機嫌の良さ、泣き声を看護師も家族も知っておく。そうすれば、ほんの少しの『いつもと違う』に気づくアンテナが研ぎ澄まされます。この問題の正解である『大泉門と頭囲』は、数値や見た目で客観的に比較できる最強のツールです。国家試験でも臨床でも、この2つをまず確認する、という基本を忘れずに!」