看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
ICUでモニター監視中の68歳男性患者。突然、心拍数が180bpmの心室頻拍に移行。血圧は85/50mmHgに低下。患者は「胸が苦しい、クラクラする」と訴え、顔面は蒼白、冷や汗をかいている。あなたは担当看護師です。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
即時評価と通報:まず、患者の名前を呼び、肩をたたき「大丈夫ですか?」と声をかけ、意識レベル(AVPU尺度:Alert, Voice, Pain, Unresponsive)を評価する。同時に、緊急コールボタンを押すか、「不整脈、血圧低下、意識変化あり!」と大声で助けを呼び、医師とレスキューチームを呼ぶ。
2.
酸素投与:在宅酸素から非再呼吸式マスク(リザーバー付き)に切り替え、SpO2を
94%以上を目標に管理する。
3.
除細動器の準備:同期性通電(Synchronized cardioversion)モードに設定した除細動器をベッドサイドに準備する。医師到着までに、電極パッドの貼付位置(前-側方)を確認・準備する。
4.
継続的モニタリング:医師の指示を待ちながら、意識レベル、血圧、心拍数、SpO2を継続的に観察し、悪化の有無を確認する。
5.
治療支援と後ケア:医師が通電を決定した場合、鎮静薬の準備と投与支援、通電実施後のバイタルサインと皮膚の観察(やけどの有無)、12誘導心電図の記録を行う。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
- 患者が転落・転倒しないよう、ベッド柵を上げ、可能な限り見守りを続ける(意識レベル変化による危険)。
- 除細動器を使用する際は、周囲の人員や可燃性物品(酸素配管など)に触れないよう安全確認を徹底する。「オールクリア!」の声かけを忘れずに。
- 同期性通電はR波に同期して放電するため、モニターのQRS波の感知が重要。電極の接触不良がないか確認する。
看護処置と与薬フロー
同期性通電時の看護師の役割フロー
1. 医師の指示確認。
2. 患者説明と同意(可能な場合)。
3.
鎮静薬(例:ミダゾラム)の準備と投与:意識下での通電は耐え難い苦痛と恐怖を伴うため、鎮静と鎮痛が必須。投与後は気道確保と呼吸モニタリングを厳重に。
4. 除細動器を「同期(Sync)」モードに設定し、R波にマーカーがつくことを確認。
5. エネルギー量を設定(通常、単相性波で100Jから開始)。
6. 電極パッドを正しい位置(胸骨右縁-心尖部)に強く密着させる。
7. 周囲の安全確認(誰も患者とベッドに触れていないか)。
8. 放電ボタンを押す(医師が行うことが多い)。
9. 直後の心調律、血圧、意識状態を評価。
先輩看護師からの一言
「ICUでモニターアラームが鳴った時、まず目を向けるのは『モニター画面』ではなく『患者さんの顔』です!画面の数字だけを見て『VTだ!』と焦る前に、患者さんが今どういう状態なのか、意識ははっきりしているか、苦しそうではないか、を一瞥で評価するクセをつけましょう。その一瞬の観察が、『これは緊急だ!』という判断を確実にし、チームへの正確な情報伝達につながります。国家試験で『優先度』が問われるのは、まさにこの『臨床での判断力』を養うためですよ!」