看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
68歳、肺炎で入院中のAさん。夜勤帯に顔色不良を訴え、バイタルサイン測定を行ったところ、上記の値でした。意識は清明ですが、やや活気がなく、手足が冷たく湿っています(冷感:Cool clammy skin)。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
即時対応:患者のベッドサイドを離れず、ナースコールで同僚を呼ぶ。または、携帯端末で直ちに医師に緊急連絡する。
2.
循環サポート:酸素マスク(リザーバー付き)に切り替え、酸素流量を上げてSpO2をモニタリング。末梢ルートが確保されていれば、輸液(生理食塩水など)の滴下速度を速める(医師の指示に基づく)。ルートがなければ、太い針(18Gなど)で緊静脈路を確保する準備。
3.
アセスメントの継続:血圧・脈拍・SpO2を連続モニタリング(可能なら自動測定に設定)。意識レベル(JCSやGCS)、尿量(カテーテルがあれば時間毎)、皮膚の色・温冷感を観察。
4.
医師への報告(SBAR形式):
- S(状況):「68歳の肺炎患者Aさんに、急な血圧低下と末梢冷感が出現しました。」
- B(背景):「本日入院3日目で、抗菌薬投与中でした。」
- A(評価):「現在、血圧88/52、脈拍118、SpO2 89%(マスク酸素中)、四肢冷感あり。敗血症性ショックの初期徴候が疑われます。」
- R(提案):「輸液ボーラスと昇圧剤の開始が必要かと思います。指示をいただけますか?」
5.
実施と評価:医師の指示に基づき、輸液・昇圧剤投与を開始。介入後の血圧、尿量、意識レベルが改善するかどうかを評価する。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
・昇圧剤(ノルアドレナリンなど)は、
中心静脈ラインから投与が原則です。末梢ラインから投与すると、薬液が血管外に漏れた場合に強い組織壊死を起こすリスクがあります。
・輸液を急速に投与する際は、特に心不全の基礎疾患がある患者では、肺水腫(呼吸困難の悪化、湿性ラ音)に注意して聴診を行います。
看護処置と与薬フロー
敗血症/ショックが疑われる患者への初期対応フロー
1. バイタルサイン・意識レベル・皮膚所見のアセスメント
2.
高濃度酸素投与
3.
静脈路確保(太目ルート2本以上が理想)
4. 採血(血液培養を含む)
5. 医師緊急報告 & 指示受け
6. 初期輸液負荷(例:生理食塩水500-1000mLを30分程度で)の実施
7. 抗菌薬の早期投与(指示後1時間以内が目標)
8. 昇圧剤投与(必要に応じ)
先輩看護師からの一言
「バイタルサインは単なる数字ではありません。それは患者さんの体が発している“SOSの信号”です。特に『血圧低下+脈拍微弱+末梢冷感』の組み合わせは、体が『助けて!血液が足りない!』と叫んでいる状態です。看護師は、この信号を真っ先にキャッチし、チームに警報を鳴らす役目です。国試でこのような優先順位の問題を解くことは、臨床で命を守るための“判断の筋トレ”なのです。数字の背後にある病態生理をイメージしながら解くことで、本当の看護力が身につきますよ!」