看護学のコア解説
この問題は、
タスクデリゲーション(Task delegation / 業務委譲)における
患者安全 (Patient safety)と
スタッフの能力 (Staff competency)を適切にマッチングさせる原則について問うています。看護師長(Charge nurse)は、チームのリーダーとして、患者の状態(アキュティ)とスタッフの資格・能力に基づいて業務を割り振る必要があります。
重要概念の分析 (Key Concept)
デリゲーションの基本原則は、「最も不安定でリスクの高い患者に、最も高いスキルと判断力を持つスタッフを割り当てる」ことです。ここでの「最も高いスキル」とは、
ここがポイント! 評価(アセスメント)、臨床判断、薬剤投与、および急変時の対応が求められる状況を管理できる能力を指します。Licensed Practical Nurse (LPN) は、基本的な看護ケア、安定した状態の患者のモニタリング、多くの州で規定された範囲内での薬剤投与が可能です。一方、Unlicensed Assistive Personnel (UAP) は、日常生活援助(ADL: Activities of Daily Living)や安定した患者のバイタルサイン測定など、評価や判断を伴わない定型業務が主な役割です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解である選択肢②「血糖値が不安定で厳重な観察を必要とする患者への薬剤投与とモニタリングをLPNに割り当てる」は、まさにこの原則に合致しています。
不安定な血糖値 (Unstable blood glucose levels)は、
低血糖 (Hypoglycemia)や
高血糖 (Hyperglycemia)による緊急事態(意識障害、痙攣、ケトアシドーシスなど)に急速に進展するリスクが高く、継続的なアセスメントと薬剤(インスリンなど)の適切な投与管理が必要です。この複雑なニーズに対応できるのは、UAPではなくLPNです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、患者の状態が比較的安定している、または業務がUAPの業務範囲内であるため、優先度が低くなります。
① 虫垂切除術後2日で安定した患者のバイタルサイン測定:これはUAPの典型的な業務範囲内です。患者が「安定している」という点がキーです。
③ 軽度認知症患者のADL援助:これもUAPの主要な業務の一つです。安全な環境下での身体介助はUAPが担当できます。
④ 清潔で治癒中の外科的創傷の処置:LPNが行える業務ではありますが、創傷が「清潔で治癒中」であり、複雑なアセスメントや高度な判断を必要としないため、緊急性・リスクは②の患者よりも低いです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
デリゲーションでは、「Five Rights of Delegation(デリゲーションの5つの権利)」がガイドラインとして用いられます:1) 適切な業務 (Right Task)、2) 適切な状況 (Right Circumstance)、3) 適切な人物 (Right Person)、4) 適切な指示・コミュニケーション (Right Direction/Communication)、5) 適切な監督・評価 (Right Supervision/Evaluation)。この問題は、特に「適切な人物(Right Person)」を「適切な状況(Right Circumstance)」に当てはめる判断を問うています。
概念のまとめ
・デリゲーションの最優先は「患者安全」。
・患者の状態(安定 vs 不安定)と必要な看護スキル(評価・判断・技術)を常に評価する。
・LPN:基本的な看護技術、安定患者のモニタリング、薬剤投与(州による)。
・UAP:ADL援助、バイタルサイン測定(安定患者)、環境整備などの補助業務。
一目で比較!
| スタッフ | 主な業務範囲(例) | 割り当てるべき患者状態 |
|---|
| Licensed Practical Nurse (LPN) | 基本的看護技術、創傷処置、規定範囲内の与薬、安定患者の観察・記録 | 状態が変化する可能性がある、管理的な観察や与薬が必要 |
| Unlicensed Assistive Personnel (UAP) | ADL援助(食事、清潔、移動)、安定患者のバイタル測定、物品運搬 | 状態が安定しており、評価や判断を必要としない定型業務 |
国試頻出ポイント
看護師国家試験では、「チーム医療」や「業務の効率化と安全確保」の観点から、デリゲーションに関する出題が頻繁に見られます。特に、「与薬」「創傷処置」「バイタルサイン測定」「ADL援助」といった具体的な業務を、どのスタッフ(正看護師、准看護師、看護助手など)に委譲できるか、またはすべきでないかが問われます。患者の状態(「不安定」「術後1日目」「認知症」など)の文言に常に注目しましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「誰に何をさせるか」を選ぶ問題から、「優先度が高いデリゲーションはどれか」を問う問題(本問)、または「不適切なデリゲーション(過失)はどれか」を問う問題へと発展しています。常に「患者安全」という最上位の原則に立ち返って判断することが鍵です。