看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
救急外来に、「腰が痛くて立てない、寒気がして熱も高い」と訴える35歳女性が来院しました。問診で「昨日からトイレが近く、排尿の終わりに少し痛みがあった」と話しています。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
初期アセスメント (Initial Assessment):ABC(気道、呼吸、循環)を確認後、直ちにバイタルサイン(特に体温)を測定します。疼痛の部位、性質、強さ(NRSなど)を評価します。
2.
身体診察の実施 (Physical Examination):医師の指示のもと、または標準化された手順に従って
CVA叩打痛の確認を行います。患者を座位または腹臥位とし、片手の手掌をCVA部に当て、もう一方の拳で軽く叩打します。左右を比較し、痛みの有無と程度を観察・記録します。
3.
診断的検査のサポート (Support for Diagnostic Tests):診断確定のための
尿検査 (Urinalysis)(膿尿、細菌尿の確認)と
血液検査 (Blood tests)(白血球数、CRPの上昇)、および
尿培養 (Urine culture)のための検体採取を支援します。
4.
看護ケアの実施 (Implementation of Nursing Care):
*
疼痛管理 (Pain Management):医師の指示に基づき鎮痛剤を投与。安静と安楽な体位(疼痛側を上にした側臥位など)を促します。
*
発熱管理 (Fever Management):冷却シートや氷枕の使用、脱水予防のための水分摂取(可能であれば)を促します。
* 輸液・抗菌薬療法の管理 (Management of IV Fluids and Antibiotics):脱水補正と抗菌薬投与のための静脈ラインを確保し、適切な速度で投与します。
5. 患者教育 (Patient Education):治療の重要性、抗菌薬の服薬遵守、再発予防のための水分摂取と排尿習慣(我慢しない)について説明します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
* 高熱と脱水により、敗血症 (Sepsis)や敗血症性ショック (Septic shock)に進行するリスクがあります。バイタルサイン(特に血圧、意識レベル)の頻回なモニタリングが必須です。
* 妊婦や高齢者、糖尿病や尿路奇形などの基礎疾患がある患者では、重症化しやすいため特に注意が必要です。
看護処置と与薬フロー
| ステップ | 看護介入 | ポイント |
|---|
| 1. アセスメント | CVA叩打痛の確認、バイタル測定、尿所見の確認 | 「痛み」の訴えを具体的に聞き取る。左右差を確認。 |
| 2. 検査支援 | 中間尿の採尿、血液培養(必要時) | 抗菌薬投与前に培養検体を採取する(治療効果判定のため)。 |
| 3. 治療開始 | 静脈路確保、輸液・抗菌薬の投与 | 初期は広域スペクトルの抗菌薬が使用される。アナフィラキシーに備える。 |
| 4. 経過観察 | 解熱の有無、疼痛軽減、バイタル安定の確認 | 48-72時間以内に臨床症状の改善が見られなければ、治療の見直しが必要。 |
先輩看護師からの一言
「腎盂腎炎の患者さんは、腰の痛みと高熱で本当につらい思いをしています。『ただの膀胱炎が悪化しただけ』と軽く見られがちですが、放置すると腎機能障害や敗血症に進展する危険な状態です。私たち看護師が、CVA叩打痛という『腎臓がSOSを出しているサイン』を確実に捉え、迅速な治療開始につなげることが、患者さんの腎臓を守り、全身状態の悪化を防ぐ第一歩です。国試でも臨床でも、『発熱+CVA叩打痛=腎盂腎炎を強く疑う』という基本をしっかり押さえましょう!」