核心解説
この問題は、日本四大公害病の一つである
イタイイタイ病 (Itai-itai disease)の原因物質を問う、公害保健・環境衛生分野の基本問題です。単に病名と原因物質を暗記するだけでなく、
どのようなメカニズムで健康被害を引き起こすのかを理解することが、看護師国家試験での応用力向上につながります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
イタイイタイ病は、富山県神通川流域で発生した公害病で、原因は
カドミウム (Cadmium, Cd)の慢性経口摂取です。
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カドミウムは腎尿細管に蓄積し、重篤な腎障害を引き起こします。
- 腎障害により
ビタミンDの活性化障害、カルシウム・リンの再吸収障害が生じ、結果的に骨からカルシウムが溶け出し、
骨軟化症 (Osteomalacia)や多発性骨折を来たします。
- 患者が「痛い、痛い」と泣き叫んだことから、イタイイタイ病と命名されました。よって、正解は「5: カドミウム (cadmium) による腎障害および骨軟化症」です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
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① 鉛 (lead):
混同注意! 鉛は主に
造血障害(貧血)や
中枢神経障害(特に小児の知能発達遅延)を引き起こします。鉛中毒の代表例としては、古い水道管や塗料からの曝露が挙げられます。
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② メチル水銀 (methylmercury):
混同注意! これは
水俣病 (Minamata disease)の原因物質です。有機水銀が
中枢神経系に蓄積し、求心性視野狭窄、感覚障害、運動失調、言語障害などを引き起こします。
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③ ポリ塩化ビフェニル (PCB):
混同注意! これは
カネミ油症 (Yusho disease)の原因物質です。食用油に混入したPCBが、
皮膚症状(ざ瘡様発疹、色素沈着)や
肝機能障害、免疫系への影響を引き起こしました。
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④ 砒素 (arsenic): 慢性砒素中毒では、
皮膚の角化・色素沈着・発癌、
末梢神経障害などが特徴です。森永ヒ素ミルク事件(和光ミルク事件)が有名です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
日本の四大公害病(イタイイタイ病、水俣病、新潟水俣病、四日市ぜんそく)は、環境保健の歴史的知識として頻出です。特に「原因物質」「標的臓器」「症状」の3点をセットで覚えましょう。近年では、これらの経験を踏まえた
化学物質過敏症 (Multiple Chemical Sensitivity, MCS)や
シックハウス症候群 (Sick House Syndrome)への理解も重要です。
概念整理: イタイイタイ病 = カドミウム (Cd) による慢性中毒 → 腎尿細管障害(Fanconi症候群様)→ ビタミンD代謝異常 → 骨軟化症・多発骨折。
一目で比較!:
| 公害病 | 原因物質 | 主な標的臓器/症状 |
| イタイイタイ病 | カドミウム (Cd) | 腎臓、骨 (腎障害→骨軟化症) |
| 水俣病 | メチル水銀 | 中枢神経系 (感覚障害、運動失調、視野狭窄) |
| カネミ油症 | ポリ塩化ビフェニル (PCB) | 皮膚、肝臓 (ざ瘡、色素沈着) |
| 四日市ぜんそく | 亜硫酸ガス (SOx) など大気汚染物質 | 呼吸器系 (気管支喘息) |
看護過程ポイント: イタイイタイ病の患者は、骨痛による
身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)と、慢性疼痛による
不安 (Anxiety)が主な看護問題となります。生活の質 (QOL) の維持・向上を目指し、転倒予防環境調整と疼痛緩和ケアが優先されます。
暗記のコツ: 「カドミウム → カド(かど)が痛い → イタイイタイ病」と語呂合わせで覚えましょう。また、四大公害病は「水(水俣)・イタイ(イタイイタイ)・四(四日市)・油(カネミ)」と順番に唱えると整理しやすいです。
国試頻出ポイント: 「原因物質と疾患名の組み合わせ」「被害臓器と症状」「発生地域(富山県神通川)」が問われます。近年は、公害の歴史的教訓を踏まえた「環境保健対策」や「化学物質管理」に関する記述問題への発展も見られます。
出題パターン注意!: 単純な4択の知識問題だけでなく、事例問題(「鉱山廃水に曝露された地域住民に多発した疾患は?」)や、四大公害病の比較表を完成させる形式も出題されています。過去問でパターンを確認しておきましょう。