核心解説
この問題は、
災害看護 (Disaster Nursing) における
災害サイクル (Disaster Cycle) の各時期区分とその特徴を問うています。災害医療では、発災からの時間経過に応じて必要な医療・看護が大きく変化するため、各時期の定義と優先される活動を正確に区別することが重要です。
1. 核心概念の分析 (Key Concept)
災害サイクルは、一般的に
超急性期(発災直後〜24時間)、
急性期(24時間〜72時間)、
亜急性期(72時間〜1週間)、
慢性期(1週間〜1ヶ月)、
復旧・復興期(1ヶ月〜)に区分されます。本問の正解である
急性期は、発災から24時間以上経過し、外部からの救援が本格化する時期です。
トリアージ (Triage) による治療優先順位の決定と、
救急処置 (Emergency Treatment) の集中が最大の特徴です。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は選択肢3です。
急性期 は
発災後24時間から72時間と定義され、この時期はDMAT (Disaster Medical Assistance Team) などの専門チームが活動し、多数の傷病者に対するトリアージ、応急処置、重症患者の広域搬送などが集中的に行われます。72時間の壁(生存率が著しく低下する時間)を意識した救命活動が展開されるフェーズです。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各選択肢は他のフェーズと混同しやすいように作られています。
選択肢1:発災直後から24時間以内は、
超急性期 (Immediate Phase) の特徴です。この時期は通信も途絶しがちで、被災者による自主救護や共助が中心となります。
選択肢2:発災後1週間から1ヶ月は、
慢性期 (Chronic Phase) の特徴です。慢性疾患の管理や生活不活発病(廃用症候群)の予防が重要になります。
選択肢4:発災後3日(72時間)から1週間は、
亜急性期 (Subacute Phase) に該当し、避難所運営や感染症対策が本格化します。
選択肢5:発災後1ヶ月から3ヶ月は、
復旧・復興期 (Recovery Phase) に該当し、仮設住宅での生活支援や長期的な精神的ケア(PTSD対策など)が中心となります。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts)
災害サイクルと同様に重要な概念として、
CSCATTT (Command, Safety, Communication, Assessment, Triage, Treatment, Transport) があります。特に急性期に機能させるべき原則であり、指揮系統 (Command) と安全 (Safety) の確保が最優先です。また、トリアージタッグの色と重症度の対応も頻出です(黒:死亡/無呼吸群、赤:最優先治療群、黄:待機的治療群、緑:軽処置群)。
概念整理
| 災害フェーズ | 発災からの期間 | 主な活動・特徴 |
|---|
| 超急性期 | 発災直後〜24時間 | 救命処置、自助・共助、情報収集 |
| 急性期 | 24時間〜72時間 | トリアージ、救急処置、広域搬送 (DMAT活動期) |
| 亜急性期 | 3日〜1週間 | 避難所運営、感染症・深部静脈血栓症(DVT)予防 |
| 慢性期 | 1週間〜1ヶ月 | 慢性疾患管理、廃用症候群予防、こころのケア開始 |
| 復旧・復興期 | 1ヶ月〜 | 生活再建、PTSDケア、地域保健活動の再開 |
一目で比較!
混同注意! 超急性期 vs 急性期 vs 亜急性期
超急性期(〜24時間)は「情報と人手が足りない中での現場対応」、急性期(24〜72時間)は「組織的な医療チーム(DMAT)によるトリアージと集中治療」、亜急性期(72時間〜1週間)は「避難所生活における公衆衛生(感染症、DVT、エコノミークラス症候群)への対応」が鍵です。時間の流れとともに、
外科的医療ニーズから内科的・公衆衛生的ニーズへと重心が移行することを理解しましょう。
看護過程ポイント
アセスメント: 発災からの時間、現場の安全確認、被災者の数と重症度、ライフラインの状況
看護診断: 災害状況に関連した非効果的健康管理、感染リスク、不安、悲嘆
計画: トリアージカテゴリに応じた優先順位の設定、限られた資源での最大多数の救命
実施: START式トリアージ(一次トリアージ)、気道確保、止血、保温、メンタルケア
評価: トリアージ区分の再評価(二次トリアージ)、収容医療機関との連携状況
暗記のコツ
最重要! 語呂合わせで覚えましょう。
「超(超急性期)・ア(急性期)・ア(亜急性期)・マ(慢性期)・ル(復旧復興期)」のリズムで時間軸を覚えます。
また、急性期の72時間は「
救急の黄金時間 (Golden Time)」の延長線上にあると覚えると、時間の区切りを間違えにくくなります。「24時間までは現地、それを過ぎたら支援が入る」というイメージも有効です。
国試頻出ポイント
第113回、112回など近年の看護師国家試験でも継続して出題されています。
災害看護 は必修問題および一般問題で出題される重要領域です。特に、トリアージタッグの色判定や
CSCATTTとのセット出題が目立ちます。また、被災地で発生しやすい健康問題(深部静脈血栓症 (DVT)、心筋梗塞、感染症、メンタルヘルス)と組み合わせた
状況設定問題としての出題も増加傾向にあるため、単純な時期区分の暗記だけでなく、各期で必要な看護実践を具体的にイメージできるようにしておきましょう。
出題パターン注意!
単純な知識問題では、「急性期の定義を選べ」というストレートな形式(今回の問題)で出題されます。状況設定問題では、「発災から30時間が経過した避難所で、看護師が優先して行うべき活動はどれか」といった形式で、時期判断と看護介入の優先順位を掛け合わせた応用問題が出題されます。選択肢に並ぶ「救命活動」「避難所運営」「生活習慣病管理」といったキーワードから、現在どのフェーズにいるのかを読み解く力が求められます。