在宅で胃瘻(PEG)による経管栄養を行っている患者に、注入中に嘔吐がみられた。看護師の対応として最も適切なのはどれか。 | MyMerci
在宅における医療管理を必要とする人と看護
問題

在宅で胃瘻(PEG)による経管栄養を行っている患者に、注入中に嘔吐がみられた。看護師の対応として最も適切なのはどれか。

解説
注入中の嘔吐は誤嚥の危険があるため、直ちに注入を中止する。誤嚥を防ぐために患者の上半身を挙上し、気道を確保する。頭部低位は誤嚥を促進するため禁忌である。

詳細解説

核心解説 この問題は、在宅における経管栄養(胃瘻; PEG)管理中の嘔吐という緊急事態への対応を問うています。最も優先すべきリスクは誤嚥性肺炎 (Aspiration Pneumonia)の発生であり、その予防を最優先とした看護介入を選択する必要があります。なぜその対応が最適なのか、病態生理学的な根拠に基づいて考えていきましょう。 1. 核心概念の分析 (Key Concept) 胃瘻(PEG; Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)からの経管栄養注入中に嘔吐が生じる原因としては、胃内容の停滞、注入速度が速すぎること、腹部膨満などが考えられます。いずれの原因であっても、嘔吐が発生した瞬間に最も危惧すべきは、嘔吐物が気管に入り込む誤嚥 (Aspiration)です。特に高齢者や基礎疾患のある患者では、咳反射や嚥下機能が低下していることが多く、誤嚥が致死的な誤嚥性肺炎 (Aspiration Pneumonia)に直結するリスクが高いことを理解する必要があります。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale) 最重要! 嘔吐が生じた際の対応の原則は、「注入の即時中止」「気道保護のための体位管理」です。選択肢3の「すぐに注入を中止し、患者の体位を上半身挙上する」は、この原則を的確に満たしています。注入を止めることで胃内への栄養剤流入を防ぎ、上半身を起こす(ファウラー位/セミファウラー位)ことで、重力により嘔吐物の気管への流入を防ぎ、呼吸状態を安定させる効果があります。これにより、最も危険な合併症である誤嚥性肺炎のリスクを最小限に抑えることができます。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis) 混同注意! 選択肢1の「頭部低位」は、一見すると嘔吐物を口から出しやすくするように思えますが、実際には胃内容物の逆流と気管への流入を促進するため絶対的禁忌です。選択肢2の「注入速度を速める」は胃への負担をさらに増大させ、嘔吐を悪化させる危険な行為です。選択肢4の「注入を続けながら」は、誤嚥のリスクを無視した対応で、論外です。選択肢5の「栄養剤の温度を上げる」ことは、胃蠕動を亢進させる可能性はあるものの、嘔吐発生直後の対応としては誤嚥リスクを回避する行動が先決であり、適切ではありません。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts) 経管栄養中の嘔吐・悪心は、胃残量 (Gastric Residual Volume, GRV)の増加を疑う重要なサインです。事前のアセスメントとして、注入前に胃残量を確認することがガイドラインで推奨されています。また、誤嚥予防の基本は、注入中および注入後1~2時間は上半身を30度以上挙上した体位を保持することです。在宅では介護者が対応することが多いため、嘔吐時の対応だけでなく、予防のための体位管理についても指導しておくことが重要です。 概念整理
概念内容看護のポイント
胃瘻(PEG)腹壁から胃内にカテーテルを留置し栄養を投与する経路カテーテル周囲の皮膚トラブル、感染、閉塞、自己抜去のリスク管理が必要
経管栄養中の誤嚥胃内容物が気管へ流入すること。肺炎の原因となる注入時の上半身挙上30度以上、胃残量の確認が予防の鍵
嘔吐時の体位嘔吐時は側臥位または上半身挙上で気道確保頭部低位(トレンデレンブルグ位)は誤嚥リスクを高めるため禁忌

一目で比較!
嘔吐時の体位目的適否と理由
上半身挙上重力で胃内容の逆流・誤嚥を防ぐ◎ 最適:気道保護に有効。呼吸状態も改善しやすい
頭部低位嘔吐物の排出(誤った考え)× 禁忌:逆に誤嚥を引き起こしやすい
側臥位嘔吐物の自然排出○ 適切:意識レベル低下時に有効だが、経管栄養中は注入中止と上体挙上が優先

看護過程ポイント アセスメント:嘔吐の性状・量、バイタルサイン(特にSpO2、呼吸数)、意識レベル、腹部症状(膨満の有無)、注入内容と速度の確認。
看護診断:誤嚥リスク状態、嘔吐に関連した体液量不足リスク、非効果的な気道浄化リスク。
計画・実施:注入即時中止 → 体位を上半身挙上(または側臥位)に調整 → 口腔内吸引・清拭 → バイタルサイン・呼吸状態のモニタリング → 医師/介護者へ報告。嘔吐が治まっても、原因を特定するまでは安易に注入を再開しない。
評価:呼吸状態が安定しているか、誤嚥の兆候(むせ、チアノーゼ、SpO2低下)がないか、嘔吐が再発していないかを継続的に観察する。
暗記のコツ 嘔吐時の対応は「3つのS」で覚えましょう。
Stop(注入を止める
Sit up(上体を起こす
Safety(安全を確保する:気道確保、観察)
「胃瘻嘔吐、即ストップ! 頭は低くするな、高くしろ!」と呪文のように唱えてください。
国試頻出ポイント 経管栄養の合併症とその予防・対応は、基礎看護学成人看護学(特に脳血管障害や神経難病)、老年看護学在宅看護論と、多岐にわたる領域で出題される頻出テーマです。特に「誤嚥性肺炎の予防」は国家的な医療課題でもあるため、最重要事項として確実に理解しておきましょう。
出題パターン注意! 状況設定問題(事例問題)では、今回のような「嘔吐した」という緊急時の対応に加え、日頃の予防策として「注入中の適切な体位」「胃残量の確認方法と対応基準」「注入速度や栄養剤の温度」などが組み合わされて問われます。常に「なぜそのケアが必要なのか」という根拠とセットで理解することが、応用問題を解く鍵です。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario) 「80代女性、脳梗塞後遺症で嚥下障害があり、在宅で胃瘻(PEG)管理中。半固形栄養剤を500mL、2時間かけて注入中です。注入開始から1時間後、介護者である夫が『急に気分が悪そうで、吐いてしまった』と訪問看護師に電話してきました。患者は意識はあるが、ぐったりとして顔色が悪く、嘔吐物が口元に付着しています。訪問看護師は夫に、今すぐ何をするように指示すべきでしょうか?」 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) 最重要! 電話口でも、まずはっきりと「すぐに注入を中止してください!」と明確に指示します。次に、患者の顔を横に向け(側臥位が取れればベスト)、可能であれば上体を起こすように依頼します。「頭を下げないでください」と禁忌事項も必ず伝えます。嘔吐物で気道が塞がっていないか、呼吸の状態(胸の動き、唇の色)を観察するよう促し、訪問の準備を急ぎます。訪問後は、呼吸音(副雑音の有無)、SpO2、バイタルサインを評価し、誤嚥性肺炎の早期兆候がないか注意深くアセスメントします。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions) 在宅では医療従事者が常駐していないため、介護者への事前指導が患者安全の要です。日頃から「嘔吐したら、まず注入を止めて、顔を横に向け、訪問看護師か医師に連絡する」という流れを、パンフレットなどを用いて具体的に指導し、緊急時に慌てず行動できるようにしておくことが重要です。また、注入開始前の胃残量確認と、注入中の姿勢(リクライニング車椅子やベッドの背上げ)が適切かどうか、定期的に環境を評価します。
看護プロトコル 観察項目:呼吸状態(呼吸数、深さ、SpO2、副雑音の聴取)、循環動態(脈拍、血圧)、意識レベル、嘔吐物の性状(色、量、におい)、腹部症状(膨満、蠕動音)。
報告基準 (SBAR):嘔吐の発生とその状況、現在のバイタルサインと呼吸状態、これまでの注入内容と量をまとめて医師に報告する。SpO2の低下や呼吸不全の兆候があれば、緊急性が高いと判断する。
記録のポイント:嘔吐が発生した時間、状況、注入を中止した時間、実施したケアとその後の患者の状態変化を時系列で正確に記録する。
先輩看護師の一言 「経管栄養の注入中は『平穏無事』が当たり前ですが、その当たり前が崩れた時に、患者さんを守れるかどうかは、私たち看護師の的確な判断力と行動力にかかっています。『嘔吐したら、止めて、起こす』この鉄則を、脊髄反射レベルで体が動くまで、国試の勉強を通して身につけてくださいね。それが、将来あなたが担当する患者さんの命を守る、確かな力になります!」

重要概念

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