核心解説
この問題は、
在宅チームケア (Home Care Team)における多職種連携の基本を問うています。特に、各専門職の役割と情報共有の適切な内容を理解することが鍵です。在宅では、医師、看護師、介護福祉士、ケアマネジャー、
理学療法士 (Physical Therapist, PT)、作業療法士 (Occupational Therapist, OT)、言語聴覚士 (Speech-Language-Hearing Therapist, ST) などが連携し、患者の自立支援と生活の質 (QOL) 向上を目指します。PTは主に「基本動作能力」の評価と訓練を専門とします。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は
④ 利用者の移乗動作の方法と注意点 です。
理学療法士 (PT) は、移乗動作(ベッドから車椅子への移動など)、歩行、立ち上がり動作など、身体の基本的な運動機能の評価とリハビリテーションを専門とします。PTが訪問看護師に、
安全な移乗方法、使用する介助用具、注意すべき点(重心の崩れやすい方向、痛みの誘発部位など)を情報提供することで、看護師が訪問時にも統一された安全なケアを提供でき、患者の転倒・転落リスクを低減できます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各職種の専門性を正確に把握しましょう。
① 利用者の金銭管理状況:これは主に
成年後見制度 や
ケアマネジャー (Care Manager) あるいは
生活相談員 の役割です。看護師やPTの専門外です。
② 利用者の家族関係の詳細:これは
医療ソーシャルワーカー (MSW) や
ケアマネジャー、あるいは心理士が評価する領域です。家族関係はケアに影響しますが、PTの専門的な評価対象ではありません。
③ 利用者の服薬状況と副作用:これは
医師 (Doctor) と
看護師 (Nurse)、特に
薬剤師 (Pharmacist) の専門領域です。PTが服薬管理を主体として情報提供することはありません。
⑤ 利用者の食事摂取量と栄養状態:これは
管理栄養士 (Registered Dietitian, RD) の専門領域です。嚥下機能に関連する場合は
言語聴覚士 (ST) も関与しますが、PTの主たる役割ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
在宅チームケアにおける多職種連携では、
情報共有と役割分担が極めて重要です。カンファレンスや連絡帳、情報共有ツール(介護ソフトなど)を通じて、
患者中心のケア (Patient-Centered Care) を実現します。各職種の専門性を理解しないと、情報が重複したり、逆に不足してチームケアが機能不全に陥るため、国試でも頻出のテーマです。
概念整理: 在宅チームケアでは、患者の生活を支えるために多職種が連携する。理学療法士 (PT) は「基本動作(移乗・歩行・立ち上がり)」の専門家である。PTから看護師への情報は、看護師が日常生活の介助を行う際に直接応用できる「移乗動作の方法と注意点」が最も適切。他の選択肢(金銭管理、家族関係、服薬、栄養)は、それぞれケアマネ、MSW、医師/薬剤師、管理栄養士の専門領域である。
一目で比較!:
| 専門職 | 主な役割 | 看護師と共有すべき情報例 |
| 理学療法士 (PT) | 基本動作能力(移乗、歩行)の評価・訓練 | 安全な移乗方法、歩行介助の注意点、使用する装具の調整状況 |
| 作業療法士 (OT) | 応用的動作能力(食事、整容、家事)の評価・訓練 | 自助具の使用方法、日常生活動作 (ADL) の訓練状況 |
| 言語聴覚士 (ST) | コミュニケーション、嚥下機能の評価・訓練 | 摂食時の姿勢、嚥下しやすい食形態、コミュニケーション方法 |
| 管理栄養士 (RD) | 栄養状態の評価、栄養ケア計画の立案 | 必要エネルギー量、栄養補助食品の活用、食事の注意点 |
| ケアマネジャー (CM) | ケアプラン作成、サービス調整、多職種連絡調整 | ケアの全体目標、サービスの変更点、家族の意向 |
看護過程ポイント: アセスメント段階で、患者の基本動作能力(移乗、歩行、寝返り)を評価し、PTからの情報(安全な介助方法、注意点)を看護計画に反映する。実施段階では、PTの指導内容に基づき統一した介助を提供する。評価では、転倒・転落の有無や患者の動作の安定性を確認する。
暗記のコツ: 各専門職の名称の「頭文字」と「動作」をセットで覚える。「PT (Physical Therapist) = Physical(身体の)な動きの専門家」、「OT (Occupational Therapy) = Occupation(日常生活の営み)を支える専門家」、「ST (Speech Therapist) = 話す (Speech) と食べる (Swallowing) の専門家」。
国試頻出ポイント: 多職種連携の内容(各職種の役割を理解した上で、誰にどんな情報を伝えるべきか)を問う問題が頻出。単純な知識問題としてだけでなく、事例問題(例:ADLが低下した高齢者のケアプラン立案)の中で、「理学療法士に依頼すべき内容」として出題されることが多い。
出題パターン注意!: 逆のパターン(「看護師が理学療法士に提供すべき情報は?」)も出題されうる。その場合は、看護師が把握している患者の全身状態(血圧変動、疼痛の程度、意識レベルなど)や、日内変動(疲れやすい時間帯など)を伝えることが適切となる。