核心解説
この問題は、
褥瘡(床ずれ)(Pressure Ulcer / Bedsore) の予防について、在宅療養中の患者に対する看護指導の適切性を問うています。褥瘡は
長時間の持続的な圧迫(圧力) によって組織が虚血・壊死に陥る病態です。予防の基本原則は
圧の軽減・分散(体圧分散) と
スキンケア(皮膚保護)、そして
栄養管理 の3本柱です。この問題では、特に「器具の使用」と「処置の方法」に関する正しい知識が問われています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②番の
体圧分散マットレス (Pressure Redistribution Mattress) を使用するは、褥瘡予防の最も基本的かつ効果的な介入です。体圧分散マットレスは、身体と床面の接触面積を広げ、特定の部位(特に仙骨部、踵骨部、大転子部など骨突出部)にかかる圧力を分散させることで、組織の虚血を予防します。在宅療養では、ベッド上で過ごす時間が長いため、この介入は非常に重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! マッサージで血行を促進する:過去のガイドラインでは推奨されていましたが、現在は
禁忌 です。特に発赤(紅斑)部位へのマッサージは、すでに脆弱な毛細血管を損傷し、組織をさらに傷害するリスクがあります。血行促進には、軽い圧迫と解放(交互圧迫)や体位変換が推奨されます。
③
混同注意! 円座クッションを常時使用する:円座クッションは、中心部の圧を逃がすために設計されていますが、周辺部に
圧が集中(剪断力も加わりやすい) するため、逆に褥瘡を悪化させるリスクがあります。また、血流を阻害しやすいため、長期間の常時使用は避けるべきです。坐骨部の圧を逃がしたい場合は、体圧分散クッション(ジェルやエア式)が適切です。
④
混同注意! 2時間ごとに体位変換を行う:体位変換は褥瘡予防の重要な要素ですが、「一律2時間」というルールは、患者の状態やリスクに応じて個別に計画する必要があります。高リスク患者や既に褥瘡がある患者では、より頻回(1〜2時間ごと)な変換が必要となる場合があり、逆に低リスク患者では、睡眠を妨げないように間隔を延ばすことも検討します。「2時間ごと」が絶対的な基準ではありません。
⑤ 発赤部をアルコールで清拭する:アルコールは
強い刺激性と脱脂作用 があり、皮膚のバリア機能を損なわせるため、褥瘡予防やスキンケアには使用しません。発赤部のケアには、
弱酸性の洗浄剤 や
保湿剤 を使用し、清潔と保湿を保ちます。
概念整理:
褥瘡予防 (Pressure Ulcer Prevention) の核心は、「圧迫」・「ずれ(剪断力)」・「摩擦」・「湿潤」の4大要因をコントロールすることです。①体圧分散(マットレス・クッション)②除圧(体位変換)③スキンケア(清潔・保湿)④栄養管理(特にたんぱく質・亜鉛・ビタミンC)が基本戦略です。
一目で比較!:
| 介入方法 | 褥瘡予防への効果 | 注意点 |
|---|
| 体圧分散マットレス | 圧を広範囲に分散 (効果的) | 適切な硬さ・種類の選択が重要 |
| 円座クッション | 中心部の除圧 (限定的) | 周辺部への圧集中リスク (非推奨) |
| マッサージ | 血行促進 (過去の推奨) | 発赤部位は禁忌 (組織損傷) |
| 体位変換 | 除圧 (必須) | 個別計画が必要 (一律2時間ルールは不適切) |
看護過程ポイント:
アセスメント:
ブレーデンスケール (Braden Scale) や
OHスケール (Ohira Scale) などの評価ツールを用いてリスクを数値化します。特に感覚認知、湿潤、活動性、可動性、栄養、摩擦・ずれの6項目を評価。**看護診断**:「皮膚統合性障害のリスク (Risk for Impaired Skin Integrity)」。**計画・実施**:上記4大要因に基づいた予防ケアを個別に計画。**評価**:皮膚の状態(発赤・硬結・水疱の有無)を毎日観察し、ケアの効果を評価します。
暗記のコツ: 「褥瘡予防は『圧・ずれ・摩擦・湿潤』を逃がせ!」と覚えましょう。また、「昔はマッサージ・今は体圧分散」という対比で記憶すると、誤答を避けやすくなります。
国試頻出ポイント: 褥瘡の予防・ケアは毎年必ず出題されます。特に「予防の基本原則」と「危険因子のアセスメント」、そして「治療法(デブリードマン・陰圧閉鎖療法(NPWT))」との違いを問う問題が頻出です。在宅と病院の違い(使用できる器具や家族指導)も押さえておきましょう。
出題パターン注意!: 近年の国試では、「○○さん(事例患者)に対して、看護師が最初に実施する褥瘡予防ケアはどれか」といった具体的な状況設定問題が増えています。単純な知識だけでなく、患者の全身状態や環境を考慮した臨床判断が求められます。