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在宅看護の対象と生活
問題

訪問看護師が、利用者宅でバイタルサインを測定した。収縮期血圧が90mmHg、脈拍が110回/分、呼吸数が24回/分であった。この状態を最も適切に表すのはどれか?

解説
収縮期血圧90mmHgは低血圧、脈拍110回/分は頻脈、呼吸数24回/分は頻呼吸であり、これらはショック状態の兆候である可能性が高い。緊急性が高い状態として、迅速な対応が必要となる。
同じテーマの次の問題在宅看護において、訪問看護師が初回訪問時に最も優先して確認すべきことはどれか?

詳細解説

核心解説 この問題は、バイタルサイン (Vital Signs)の異常値から、全身状態をアセスメントする看護技術を問うています。特に、収縮期血圧低下・頻脈・頻呼吸の組み合わせは、ショック (Shock)の初期兆候として極めて重要です。単一の数値ではなく、複数の指標を総合的に判断する「臨床推論 (Clinical Reasoning)」の基礎を確認する問題です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢①「最重要! ショック状態の可能性」が正解です。
- 収縮期血圧90mmHgは、正常下限(通常100~120mmHg)を下回る低血圧です。
- 脈拍110回/分は頻脈(正常60~100回/分)であり、心拍出量を維持しようとする代償反応です。
- 呼吸数24回/分は頻呼吸(正常12~20回/分)であり、代謝性アシドーシス(ショックによる乳酸蓄積)を呼吸性アルカローシスで代償しようとする反応です。
これら3つの異常所見が同時に存在することは、組織灌流が低下しているショック状態を強く示唆します。在宅という限られた環境であっても、迅速なアセスメントと緊急対応(救急搬送の判断)が必要な状況です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
- ②「正常範囲」は誤りです。収縮期血圧90mmHgは正常範囲外であり、特に脈拍・呼吸数の異常も伴っているため、正常とは評価できません。
- ③「徐呼吸」は誤りです。呼吸数24回/分は頻呼吸であり、徐呼吸(正常より少ない)ではありません。混同注意! 徐呼吸 (Bradypnea)は呼吸数が12回/分未満の状態を指します。
- ④「高血圧」は誤りです。収縮期血圧90mmHgは低血圧であり、高血圧とは真逆の状態です。混同注意! 高血圧 (Hypertension)は収縮期血圧140mmHg以上を指します。
- ⑤「徐脈」は誤りです。脈拍110回/分は頻脈であり、徐脈(正常より少ない)ではありません。混同注意! 徐脈 (Bradycardia)は脈拍が60回/分未満の状態を指します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ショックには、循環血液量減少性ショック(出血・脱水)、心原性ショック(心筋梗塞・心不全)、敗血症性ショック(感染症)、アナフィラキシーショック(アレルギー)など複数の種類があります。いずれも共通して、組織の低灌流 (Tissue Hypoperfusion)をきたし、最終的に多臓器不全へと進行します。在宅看護では、初期のショック兆候を見逃さず、早期発見・早期対応(救急搬送依頼)が看護師の重要な役割です。
概念整理: ショック (Shock)は、何らかの原因で組織への酸素供給が需要を下回り、細胞機能が障害された状態。代償期には頻脈・頻呼吸・皮膚蒼白などが見られ、非代償期になると血圧低下が顕著になる。収縮期血圧90mmHgは、代償期から非代償期への移行を疑う警戒値。
一目で比較!:
指標正常範囲本例の値アセスメント
収縮期血圧100~120mmHg90mmHg低血圧
脈拍60~100回/分110回/分頻脈
呼吸数12~20回/分24回/分頻呼吸

看護過程ポイント: アセスメントでは、バイタルサインの経時的変化・皮膚の状態(冷感・湿潤・色調)・意識レベル・尿量を総合的に評価。看護診断としては「非効果的組織灌流 (Ineffective Tissue Perfusion)」が該当。介入は、原因に応じた対応(輸液・酸素・昇圧薬・体位管理(ショック体位:下肢挙上))と、緊急時の連絡・搬送準備。
暗記のコツ: ショックの3兆候は「低血圧+頻脈+頻呼吸」と覚える。英語では「Hypotension, Tachycardia, Tachypnea」の頭文字を取って「HTT」と記憶する方法も。また、血圧だけでなく、脈拍と呼吸数を必ずセットで見る習慣を身につけましょう。
国試頻出ポイント: バイタルサインの異常値の組み合わせから、特定の病態(ショック・呼吸不全・頭蓋内圧亢進など)を推測する問題は頻出。特に、低血圧+頻脈はショックの基本パターンとして必ず押さえておくこと。事例問題では「在宅で血圧が測れなくなった患者」への対応を問われることも多い。
出題パターン注意!: 「ショック状態の可能性」という抽象的な選択肢だけでなく、「この患者の状態として最も考えられるのは?」という形式で、具体的なショックの種類(例:出血性ショック、心原性ショック)を選ばせる問題や、「看護師の優先的な対応は?」という状況設定問題に発展することがある。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
在宅で療養中の80代女性、訪問看護師が定期訪問。主訴は「昨夜から少し気分が悪くて、動くとふらつく」。バイタルサインは収縮期血圧88mmHg、脈拍112回/分、呼吸数26回/分。顔面は蒼白で、冷汗を認める。意識は清明だが、少し反応が遅い。内服歴:降圧薬と利尿薬を服用中。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察 (Observation): バイタルサイン再測定、意識レベル(JCS)、皮膚の状態(冷感・チアノーゼ)、尿量(おむつの湿り具合)、血圧測定部位の違いによる差(両腕)。 2. アセスメント (Assessment): 収縮期血圧90mmHg以下、頻脈、頻呼吸、冷汗、顔面蒼白は、最重要! ショックの代償不全を示唆。利尿薬による脱水、または消化管出血の可能性を疑う。 3. 報告 (Report / SBAR): 「S(状況):〇〇さん、昨夜よりふらつきあり。現在バイタルサインが血圧88mmHg、脈拍112、呼吸数26とショック状態が疑われます。B(背景):内服に利尿薬あり。A(アセスメント):脱水性ショックの可能性が高いですが、出血も否定できません。R(提案):すぐに救急搬送が必要と考えます。」 4. 介入 (Intervention): 指示があれば酸素投与(2~4L/分)、下肢挙上(ショック体位:仰臥位で下肢を30度挙上)、保温。経口摂取はショック時は禁忌(誤嚥リスク)。直ちに救急搬送を手配し、点滴確保の準備。 5. 評価 (Evaluation): 救急隊到着までの経時的バイタルサイン変化を記録。搬送後は、病院との情報連携。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 禁忌:ショック状態での経口摂取(誤嚥・嘔吐リスク)。
- 注意:昇圧薬投与時は血管外漏出に注意(組織壊死)。
- 在宅特有の注意:介護者への状況説明と協力要請(動揺する家族への心理的支援も重要)。
- 高齢者はショックの代償反応が弱く、急激に悪化する可能性があるため、早期発見・早期対応が生命予後を左右する。
看護プロトコル: 観察項目:バイタルサイン(5分ごと)、意識レベル(JCS/GCS)、SpO2、尿量、末梢冷感の有無。 報告基準:収縮期血圧90mmHg以下(在宅では100mmHg以下でも警戒)、脈拍120回/分以上、意識レベル低下。 記録のポイント:経時的変化を数値で正確に記載。介入内容と患者の反応を詳細に記録。
先輩看護師の一言: 「在宅ではモニター機器が少ないからこそ、五感をフル活用した観察力が問われます。血圧が測れない時は、橈骨動脈の触知で『触れるか触れないか』『緊張はどうか』も重要な情報です。『何かおかしい』という感覚を大切にして、迷ったら先輩や医師に相談・報告!それが患者さんを救う第一歩です。」
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