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在宅看護の対象と生活
問題

訪問看護師が、利用者宅で転倒を発見した。利用者は「大丈夫」と言っているが、歩行時に左下肢を引きずっている。看護師の対応として最も適切なのはどれか?

解説
転倒後に歩行時に下肢を引きずる症状は、骨折や関節の損傷が疑われる。利用者が「大丈夫」と言っていても、医療機関での評価が必要である。看護師の判断で経過観察や湿布対応を行うことは危険である。
同じテーマの次の問題在宅看護において、訪問看護師が初回訪問時に最も優先して確認すべきことはどれか?

詳細解説

核心解説 この問題は、在宅看護 (Home Care Nursing) における転倒 (Falls) 後のアセスメントと対応を問うています。特に、利用者が「大丈夫」と訴えていても、身体所見(歩行時の下肢引きずり)から骨折 (Fracture)関節損傷 (Joint Injury) の可能性を疑い、適切な医療連携を判断する能力が求められます。在宅という限られた環境では、看護師が一次的な判断で処置を完結させるのではなく、必要に応じて医師の診察へつなげる判断力が重要です。 正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 転倒後、歩行時に左下肢を引きずるという所見は、大腿骨頚部骨折 (Femoral Neck Fracture)足関節骨折 (Ankle Fracture) などの可能性を示唆する重大な徴候 (Critical Sign) です。高齢者の場合、痛みの自覚が乏しい(痛みを過小評価する)こともあり、利用者の「大丈夫」という言葉に安易に従うことは危険です。看護師は、確認のための画像診断(レントゲン検査)が必要と判断し、かかりつけ医への受診勧奨 が最優先の対応です。 誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番の「マッサージ指導」や④番の「冷湿布」は、骨折が否定された後の対症療法であり、受傷直後の対応としては不適切です。マッサージは骨折部をずらすリスクがあります。
②番の「そのまま歩行を続けさせ経過観察」は、禁忌 (Contraindication) です。下肢を引きずるという明らかな異常がある状態で負荷をかけると、骨折部が転位する危険性が高まります。
⑤番の「利用者の希望を尊重し安静にするよう指導」も不十分です。安静は必要ですが、根本的な原因(骨折の有無)の評価をせずに安静のみ指示することは、診断の遅れにつながります。 関連概念の整理 (Related Concepts):
在宅看護における 転倒アセスメント (Fall Assessment) は、施設や病院以上に重要です。転倒後の観察ポイントとして、①受傷機転(どう転んだか)、②疼痛部位と程度、③荷重の可否、④変形・腫脹の有無、⑤神経症状(痺れ・麻痺) を必ず評価します。特に高齢者の 大腿骨頚部骨折 は、混同注意! 痛みが軽度で歩行可能な場合もあり(嵌頓骨折:かんとんこっせつ)、見逃しやすいため注意が必要です。
概念整理: 転倒後の看護判断:身体所見(歩行困難・下肢引きずり)> 利用者の主訴(大丈夫)。画像診断が必要な所見を見極める能力が在宅看護では特に重要。
一目で比較!: 転倒後対応比較
対応適切な状況不適切な状況
医療機関受診勧奨歩行困難、下肢引きずり、変形、激痛軽度の打撲のみで異常所見なし
安静指示のみ医師の診断後(骨折なしと確認後)骨折の可能性が否定されていない段階
経過観察転倒衝撃が小さく、全くの無症状明らかな身体所見がある場合(下肢引きずり等)

看護過程ポイント:
- アセスメント: 転倒後のバイタルサイン、意識レベル、疼痛部位、歩行能力、既往歴(骨粗鬆症の有無)を迅速に評価。
- 看護診断 (Nursing Diagnosis): 転倒リスク状態 (Risk for Falls)身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)(骨折が疑われる場合)。
- 計画・実施: 医師への報告・連絡(SBAR形式:Situation(転倒した)、Background(左下肢を引きずる)、Assessment(骨折の可能性が高い)、Recommendation(受診が必要))。
- 評価: 医療機関受診後、診断結果と今後のケア計画を確認し、ケアマネジャーや家族と情報共有。
暗記のコツ: 在宅での転倒後対応は「3ない」で覚えましょう!「①自己判断しない、②経過観察しない、③湿布やマッサージで済ませない」。異常があればすぐに医療機関へつなぐ。
国試頻出ポイント: 在宅看護における転倒後の対応は、事例問題として頻出。特に「利用者が『大丈夫』と言っているが、身体所見に異常がある」という設定は混同注意! 必ず「受診勧奨」を選ぶのが鉄則です。高齢者の大腿骨頚部骨折は見逃しやすいので、歩行時の下肢の状態(外旋位になっていないか、短縮がないか)も確認ポイント。
出題パターン注意!: 基本パターン「転倒後の適切な対応」に加え、発展パターンとして「訪問看護師が一人で対応できない状況(医師への報告内容、救急搬送の判断基準)」や「介護保険サービスとの連携(ケアマネジャーへの報告時期)」なども問われます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド あなたが在宅訪問看護ステーションの看護師としましょう。80代女性、独居、要介護2。歩行は杖を使用し何とか自立していましたが、本日訪問すると「さっきトイレで滑って転んだ」と言います。本人は「もう大丈夫、痛くない」と笑っていますが、立ち上がろうとすると左脚を引きずり、体重をかけると「あら?」と不安定です。 - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたはまず、転倒後の観察プロトコルに従い、意識レベル、バイタルサイン、疼痛部位、変形・腫脹の有無を確認します。左股関節に軽度の腫脹があり、脚を外側に回す(外旋位)傾向が見られます。本人は「打っただけでしょ」と言いますが、あなたは 大腿骨頚部骨折の可能性が高い とアセスメントします。 - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
最重要! ①まず安静を指示:無理に動かさず、楽な姿勢(痛みの少ない体位)をとってもらいます。②医師へ報告:SBAR形式で報告。S: 「◯◯さんが30分前に転倒。左下肢を引きずり歩行困難。」 B: 「左股関節に軽度腫脹、外旋位。痛みの訴えは軽度。」 A: 「大腿骨頚部骨折の疑い。」 R: 「かかりつけ医の受診、または整形外科への救急搬送が必要と考えます。」 ③連携:医師の指示で、受診調整または救急搬送を手配します。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
絶対にしてはいけないこと:マッサージ、無理な歩行練習、湿布のみの対応。 また、二次的転倒予防として、転倒した場所の環境整備(マットの固定、手すりの設置提案など)も、安全が確保された後で家族やケアマネジャーと相談します。
看護プロトコル:
- 観察項目: 転倒後24時間は特に注意。意識レベルの変化(硬膜下血腫のリスク)、疼痛の増悪、末梢循環(下肢の冷感・チアノーゼ)、尿量(腎障害の間接的評価)。
- 報告基準(SBAR): 上記シナリオ参照。
- 記録のポイント: 転倒した日時・場所・状況、観察所見(下肢の状態、歩行能力)、本人の言動(「大丈夫」と言ったか)、看護師の対応とその根拠、医師への報告内容と指示内容、今後の計画。
先輩看護師の一言: 「在宅で看護師が一人で対応する時、一番怖いのは『利用者の言葉を鵜呑みにしてしまうこと』です。『大丈夫』の裏には、痛みを隠す遠慮や、認知機能の低下、痛みの感覚が鈍くなっている高齢者の特性が隠れています。『見た目』と『話』のギャップにこそ、プロとしてのアセスメント力が試されるんですよ!」

重要概念

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