核心解説
この問題は、認知症(Dementia)の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia, BPSD)の一つである夜間徘徊と不眠に対する、在宅看護における適切な対応を問うています。
最重要! BPSDへの対応は、まず非薬物療法(Non-pharmacological Therapy)を優先し、薬物療法は最終手段とするのが国際的なガイドラインの原則です。夜間徘徊や不眠の原因として、体内時計(概日リズム)の乱れ、日中の活動不足、刺激の少なさ、または他の身体的不調(痛み、便秘など)が隠れている可能性があります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題の核心は「認知症療養者のBPSDに対する非薬物療法の優先」です。
夜間徘徊 (Nocturnal Wandering)は、多くの場合、日中の活動量低下や昼寝による夜間の睡眠不足、または環境の変化に対する不安から生じます。まずはこの生活リズムの乱れを整えることが看護の第一歩です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): ⑤「日中の活動量を増やし、生活リズムを整えるための支援を検討する」が適切です。具体的には、日中はデイサービスを利用して活動量を増やす、散歩や軽い体操で日光を浴びる機会を設ける、午睡を制限するなどの介入が有効です。これにより、体内時計がリセットされ、夜間の睡眠が促進され、結果的に徘徊の頻度が減少することが期待できます。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! 各選択肢の誤りを分析します。
① 夜間見守りの強化自体は必要ですが、家族の交代制勤務を提案するだけでは根本的な問題解決にならず、家族の疲弊を先延ばしにするだけです。
②
禁忌! 鎮静薬の処方は最終手段です。安易な薬剤使用は、転倒リスクの上昇、認知機能のさらなる低下、副作用(ふらつき、せん妄誘発)などを引き起こす可能性があります。症状が改善しない場合は医師と相談しますが、訪問看護師が直接「処方を依頼する」のは適切ではありません。
③ 日中に安静を強いることは逆効果です。活動量がさらに低下し、夜間不眠が悪化する悪循環を招きます。
④ 施設入所は最終的な選択肢です。まずは在宅での生活を継続できるよう、介護負担を軽減するための具体的な支援(ショートステイやデイサービスの利用、訪問看護の頻度増加など)を検討すべきです。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 認知症のBPSDには、夜間徘徊の他にも、暴力、介護抵抗、幻覚、抑うつなどがあります。これらはすべて、まず環境調整やコミュニケーション技術、活動療法などの非薬物療法で対応します。また、症状の原因として、せん妄(Delirium)の併発も考慮する必要があります(急に症状が悪化した場合、尿路感染症などの身体疾患が原因の可能性あり)。
概念整理:
認知症 (Dementia) の BPSD 対応原則1. 非薬物療法優先(環境調整、生活リズムの正常化、活動の場の提供)
2. 薬物療法は最終手段(安全性と副作用を常に評価)
3. 身体的原因の除外(感染症、脱水、便秘、疼痛の有無を確認)
4. 家族の介護負担軽減(レスパイトケアの利用を勧める)
一目で比較!:
せん妄 (Delirium) vs 認知症 (Dementia)| 項目 | せん妄 | 認知症 |
|---|
| 発症 | 急性(数時間~数日) | 慢性(数ヶ月~数年) |
| 経過 | 変動性(日内変動あり) | 進行性(ゆっくり悪化) |
| 意識 | 障害あり(注意・意識障害が主体) | 清明(末期を除く) |
| 原因 | 身体疾患、薬剤、環境変化 | 神経変性疾患(アルツハイマー型など) |
| 対応 | 原因の除去が最優先 | 環境調整と症状マネジメント |
看護過程ポイント: アセスメントでは「なぜ夜間に徘徊するのか」の原因を多角的に評価(排泄欲求、痛み、空腹、環境の刺激、せん妄の有無)。看護診断としては「睡眠パターン障害」「転倒リスク状態」「介護者役割緊張」が挙げられる。計画では、家族の睡眠確保のための短期入所(ショートステイ)の利用提案も重要。
暗記のコツ: 「BPSDには『非薬物療法』がファーストチョイス!」と覚えましょう。「薬は最後の手段」と頭に入れておけば、選択肢②のような誤答は即座に除外できます。
国試頻出ポイント: BPSDへの対応は毎年のように出題されます。特に「夜間徘徊」「介護抵抗」「興奮」への具体的な介入方法(生活リズムの調整、傾聴、環境調整)と、「してはいけない対応」(鎮静、抑制、説教)の組み合わせがよく問われます。
出題パターン注意!: 「症状の原因をアセスメントする」という視点を問う事例問題に発展します。例えば、「認知症の高齢者が昨日から夜間に落ち着かず、普段より徘回が多い。訪問看護師がまず確認すべきことは?」のような問題で、尿路感染症の可能性(微熱、尿の変化)を疑う知識が求められます。