核心解説
この問題は、
精神科チームにおける多職種連携(Interprofessional Collaboration)の中での、
作業療法士 (Occupational Therapist, OT) の専門的役割を問うています。
作業療法とは、『作業』(食事、入浴などのセルフケア、家事、仕事、趣味、余暇活動など、その人にとって意味のある活動)を通して、心身の機能の回復・維持・向上を図り、生活の再建を支援する治療法です。精神科領域では、特に患者さんの生活リズムの乱れ(昼夜逆転など)、意欲低下(アパシー)、対人交流の困難さ、社会参加の障害に対して、集団または個別の作業活動(手工芸、園芸、調理、スポーツなど)を用いて介入します。単に活動を提供するだけでなく、活動を通じて患者さんが自己効力感(Self-efficacy)を取り戻し、規則正しい生活習慣を再獲得し、社会とのつながりを再構築することを目指します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
③番が正解です。作業療法士(OT)は、
患者の生活リズムの改善や社会参加を促す作業活動の提供を専門とします。例えば、入院中の患者さんが、決まった時間に作業療法室に通い、集団で園芸や手工芸に取り組むことで、生活にリズムが生まれ、集中力や対人関係のスキルが向上します。これが精神科作業療法の核心的な役割です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番:
混同注意! 患者の経済的な問題解決や制度利用(生活保護、障害年金など)の手続きは、
精神保健福祉士 (Psychiatric Social Worker, PSW) の役割です。OTの主たる業務は作業活動を通じた機能回復であり、経済的支援の手続きは担当しません。
②番:患者の就労先の開拓や職場への定着支援は、
精神保健福祉士(PSW)や
職業リハビリテーション機関(地域障害者職業センターなど)の役割です。OTは作業活動を通じて就労に必要な基礎的な能力(持続力、対人スキルなど)の回復を支援しますが、直接的な就労開拓は担当しません。
④番:
混同注意! 精神症状の評価と診断は、医師の専権事項です。看護師も観察やアセスメントを行いますが、最終的な診断は医師が行います。OTは診断や症状の医学的評価は行いません。
⑤番:患者の家族に対する疾患教育と心理的サポートは、主に
看護師、
医師、
臨床心理技術者(公認心理師)などが協働して行います。OTが家族支援の中心的役割を担うことは一般的ではありません。
概念整理
精神科チームにおける主要職種の役割を整理します。
| 職種 | 主な役割(精神科領域) |
|---|
| 医師 | 診断、治療方針決定、薬物療法の処方、病状の医学的評価 |
| 看護師 | 患者の日常生活援助、バイタルサイン・精神症状の観察、服薬管理、家族への指導・精神的サポート、チーム連携の中心 |
| 作業療法士 (OT) | 作業活動(手工芸、園芸、調理等)を通じた生活リズムの改善、集中力・対人関係能力の向上、社会参加の促進 |
| 精神保健福祉士 (PSW) | 経済的問題(生活保護・障害年金申請)、社会資源の活用(就労支援、住居確保)、退院後の生活設計、地域連携 |
| 臨床心理技術者/公認心理師 | 心理アセスメント(心理検査)、心理療法(カウンセリング、認知行動療法)、患者・家族の心理的支援 |
国試頻出ポイント
看護師国家試験では、多職種連携における「誰が何をするか」を問う問題が頻出です。特に、
作業療法士 (OT) と
精神保健福祉士 (PSW) の役割は混同しやすいので注意しましょう。OTは「活動」を通じて機能回復を図る職種、PSWは「制度・資源」を通じて社会復帰を支援する職種と覚えておくと良いです。
暗記のコツ
「作業療法士(OT)= 作業で治療!」「精神保健福祉士(PSW)= 福祉の手続きと社会復帰!」とセットで覚えましょう。