核心解説
この問題は、
パニック障害 (Panic Disorder) に対する行動療法の技法のうち、
段階的な曝露 (Graded Exposure) によって恐怖反応を軽減する方法を問うています。パニック障害では、発作が起きることを予期して特定の状況(例:電車に乗る、人混みに入る)を避ける
予期不安 (Anticipatory Anxiety) と
広場恐怖 (Agoraphobia) が問題となります。この問題の核心は、回避行動を強化せず、恐怖の階層を作って段階的に曝露する「系統的脱感作法」のプロセスを理解しているかどうかです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 系統的脱感作法 (Systematic Desensitization) は、リラクセーション法(漸進的筋弛緩法など)と恐怖階層表を用いて、最も不安の低い状況から段階的に曝露していく技法です。パニック障害では、患者が回避している状況に対して、安全な治療関係の中でこの技法を適用することで、
恐怖反応の消去 (Extinction of Fear Response) と
対処行動の獲得 を促します。2番が正解です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番のオペラント条件づけ (Operant Conditioning) は、行動の結果(強化や罰)によって学習する原理です。特定の恐怖階層への曝露という技法とは異なります。
③番のモデリング法 (Modeling) は、他者の行動を観察して学習する技法で、特に小児の恐怖症などに用いられます。
④番のトークンエコノミー法 (Token Economy) は、望ましい行動に対してトークン(代用貨幣)を与え、それを強化子と交換するシステムで、主に精神科病棟での集団療法や行動変容に用いられます。
⑤番の暴露反応妨害法 (Exposure and Response Prevention, ERP) は、
混同注意! 強迫性障害 (Obsessive-Compulsive Disorder, OCD) の治療に用いられる技法で、強迫行為を妨害しながら強迫観念を引き起こす刺激に曝露します。パニック障害では、段階的な曝露とリラクセーションを組み合わせた系統的脱感作法が標準的です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
- パニック障害の薬物療法:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第一選択。
- パニック発作のアセスメント:発作の頻度、持続時間、随伴症状(動悸、呼吸困難、発汗、死の恐怖)、回避行動の程度。
- 認知行動療法(CBT):パニック障害に対しては、系統的脱感作法に加えて、
認知再構成法 (Cognitive Restructuring) を用いて「動悸=心臓発作で死ぬ」といった破局的思考を修正します。
概念整理: 行動療法の主要技法
| 技法 | 内容 | 適応疾患 |
|---|
| 系統的脱感作法 | リラクセーション + 段階的曝露 | パニック障害、恐怖症、PTSD |
| 暴露反応妨害法 | 曝露 + 強迫行為の妨害 | 強迫性障害 |
| オペラント条件づけ | 強化子による行動形成 | 統合失調症の社会技能訓練など |
| モデリング法 | 観察学習による行動獲得 | 小児の恐怖症、社会スキル訓練 |
| トークンエコノミー法 | トークンによる報酬システム | 長期入院患者の行動変容 |
一目で比較!: 系統的脱感作法 vs 暴露反応妨害法
| 項目 | 系統的脱感作法 | 暴露反応妨害法 |
|---|
| 対象 | パニック障害・恐怖症 | 強迫性障害 |
| 曝露方法 | 段階的(階層表を使用) | 段階的またはフラッディング |
| 併用技法 | リラクセーション法 | 強迫行為の妨害(ERP) |
| 目的 | 恐怖反応の消去 | 強迫観念と強迫行為の連鎖の切断 |
看護過程ポイント: 系統的脱感作法実施時の看護
- アセスメント:患者の恐怖階層表を作成するために、具体的な回避状況とその恐怖の程度(0-100のSUDS主観的単位で評価)を丁寧に聴取する。
- 看護診断:不安 (Anxiety) / 恐怖 (Fear) / 非効果的対処 (Ineffective Coping)
- 計画:リラクセーション法の練習(週1回程度)と、恐怖階層の下位から上位への段階的な曝露計画を、医師・臨床心理士と連携して立案する。
- 実施:曝露中は患者のそばに付き添い、パニック発作が出現しないか観察。出現した場合は、安全な場所へ移動し、呼吸法やリラクセーションを促す。
- 評価:各段階の曝露後にSUDS値が低下したか、回避行動が減少したかを評価する。
暗記のコツ: 「系統的脱感作法=リラクセーション+段階的曝露」。語呂合わせ:「リラックスしながら、ちょっとずつ怖いことに慣れる(系統的脱感作法)」 vs 「やめたいのにやめられない(強迫行為)を邪魔しながら慣れる(暴露反応妨害法)」。
国試頻出ポイント: この問題は、パニック障害(恐怖症性障害群)と強迫性障害(OCD)の行動療法の違いを問う典型的なパターンです。国試では「○○障害に用いられる行動療法はどれか」という形で頻出します。特に系統的脱感作法と暴露反応妨害法は、
混同注意! 適応疾患を正確に区別できるようにしておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「系統的脱感作法はパニック障害に有効」と覚えるだけでなく、事例問題で「電車に乗れない患者への看護介入として適切なのはどれか」と発展して出題されることがあります。その際、段階的な曝露(まずは駅のホームに立つ練習、次に1駅だけ乗るなど)を選択肢から選べるようにしておきましょう。