核心解説
この問題は、
アルコール依存症 (Alcohol Dependence) 患者との治療的コミュニケーションと
援助関係 (Therapeutic Relationship)の構築を問うています。患者が「もう酒はやめるつもりだ」と自らの意思を表明した場面で、看護師がどのように応答すれば、患者の主体性を尊重し、回復への動機づけを強化できるかが鍵です。
最重要! アルコール依存症の治療では、患者の
自己効力感 (Self-Efficacy)と
内的動機 (Intrinsic Motivation)を高める関わりが最も重要であり、単なる賞賛や過去の失敗の指摘は逆効果となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は③「そう決意されたのですね。どのようにしてやめようと考えていますか」です。
この応答は、患者の決意をまず
承認・受容し、その上で具体的な
方法や計画を尋ねることで、患者が自ら解決策を考えるプロセスを支援しています。これは、
動機づけ面接 (Motivational Interviewing, MI)の技法である「
引き出し (Eliciting)」と「
協同的探索 (Collaborative Exploration)」に合致します。患者の主体性を最大限に尊重し、「どうやったらやめられるか」を一緒に考える姿勢を示すことで、援助関係が強化されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
- ①「本当にやめられますか。今までも同じようなことを言っていましたよね」: 患者の過去の失敗を指摘し、否定的な態度を示しています。これは患者の
自己効力感を低下させ、抵抗感や罪悪感を強めるため、援助関係を損ないます。
- ②「医師にもそのことを伝えましょう。治療計画を変更してもらいます」: 患者の決意を医療者主導で処理しようとしており、患者の
主体性を無視しています。医師への報告は重要ですが、まずは患者の話を聴き、共に考える姿勢が必要です。
- ④「断酒はとても難しいことです。無理をしないでくださいね」: 患者の決意に対して否定的な見解を示し、挑戦する前に「無理」と決めつけています。これは患者の
意欲を減退させ、無力感を助長する恐れがあります。
- ⑤「それは素晴らしい決断ですね。ぜひ頑張ってください」: 一見肯定的ですが、単なる賞賛に終始し、患者自身の計画や内省を促していません。「頑張って」という言葉はプレッシャーとなり、患者が困難に直面した時に「自分は頑張れなかった」と自己評価を下げる原因にもなり得ます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
アルコール依存症の看護では、
治療的コミュニケーション (Therapeutic Communication)の中でも、特に
動機づけ面接 (MI)と
認知行動療法 (Cognitive Behavioral Therapy, CBT)の概念が重要です。患者の「変わりたい」という気持ち(アンビバレンス)を尊重し、
変化のステージモデル (Stages of Change Model)(前熟考期→熟考期→準備期→行動期→維持期)に沿った関わりが必要です。本問の患者は「準備期」から「行動期」への移行段階にあると考えられます。
概念整理:
アルコール依存症の治療における
援助関係の強化は、患者の
主体性の尊重と
自己決定の支援が核心です。看護師は「教える・指示する」立場ではなく、「共に考える・引き出す」ファシリテーターの役割を担います。
一目で比較!:
| 応答タイプ | 効果 | 援助関係への影響 |
|---|
| 承認+具体的な計画への問いかけ | 患者の主体性を強化、自己効力感向上 | 良好な関係構築に寄与 |
| 過去の失敗を指摘 | 罪悪感・抵抗感を強化 | 関係を悪化させる |
| 医療者主導の決定 | 患者の主体性を奪う | 依存関係を強化、治療意欲減退 |
| 単なる賞賛や励まし | 一時的には良いが、内省を促さない | プレッシャーになる可能性 |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: 患者の変化への準備性(Readiness to Change)、アンビバレンスの内容、過去の断酒経験とその時の対処法
-
看護診断: 「非効果的健康維持(Ineffective Health Maintenance)」や「非効果的対処(Ineffective Coping)」が関連しうるが、本問の焦点は
援助関係の強化であり、診断名を当てはめるより、患者のストレングスに注目する
-
計画・実施: 動機づけ面接の技法(開かれた質問、承認、繰り返し、要約)を用いて、患者自身の言葉で計画を語れるように支援する
-
評価: 患者が自らの目標を具体的に語れるようになったか、自己効力感の変化
暗記のコツ: アルコール依存症患者への応答は「
まず承認、次に質問」と覚えましょう。「そうなんですね」で受け止めてから「どう考えていますか?」と開かれた質問でつなげるのが基本形です。
国試頻出ポイント: 動機づけ面接の基本姿勢(共感、協同、自律性の尊重)は、アルコール依存症に限らず、
生活習慣病や
精神科全般の患者とのコミュニケーションでも頻出です。患者の「変わりたい」気持ちを引き出す応答が正解になりやすいです。
出題パターン注意!: 本問は患者の発言に対する「看護師の応答」を選ぶ問題です。類似問題として、「患者が治療を拒否した時の応答」「患者が不安を訴えた時の応答」など、様々な場面で応用されます。どの場面でも、患者の感情をまず受容し、主体性を尊重する応答が基本です。