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精神看護の基盤となる援助
問題

精神科訪問看護で、ひきこもり状態にある患者と初めて会話ができた。患者は「外に出るのは怖いけど、話せてよかったです」と語った。患者の「生きる力」を評価するための看護師の問いかけとして最も適切なものはどれか。

解説
「生きる力」に着目した援助では、患者が主体的に行動を選択したプロセスや、その背後にある意思や動機を尊重することが重要である。「今日はどうして話そうと思ったのですか」と問いかけることで、患者自身が「話そう」と決断した内的な力や理由に気づくきっかけとなる。これは患者の主体性や自己決定力を評価し、強みとして認識するための有効な問いかけである。他の選択肢も有用だが、患者の「意思」に焦点を当てる点で最も適切である。
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詳細解説

核心解説 この問題は、精神科訪問看護において、ひきこもり状態 (Social Withdrawal) にある患者の「生きる力」、すなわち レジリエンス (Resilience) やストレングス (Strength) に着目したアセスメントと看護面接技術を問うています。患者の強みに焦点を当てる「ストレングスモデル」では、問題点や症状の改善だけでなく、患者が自ら持つ主体性や意思決定力を評価し、それを支えることが重要です。患者が「話せてよかった」と感じた背景には、自ら「話そう」と決断した意思が存在します。この決断に至ったプロセスを肯定的に評価し、言語化を促すことで、患者自身が自分の「生きる力」に気づくことができます。
正解は②番「今日はどうして話そうと思ったのですか」です。この問いかけは、患者が「外に出るのが怖い」という不安を乗り越えて「話そう」と行動した、その 意思決定 (Decision Making) のプロセス に焦点を当てています。患者自身の 主体性 (Autonomy) を認め、その力を引き出すための最も適切な問いかけです。
混同注意! 「今の気持ち」を尋ねる①や「怖いと感じる時」を尋ねる④は、感情の表出を促す有効な質問ですが、患者の「問題」や「症状」に焦点が当たりやすく、生きる力を直接評価するには不十分です。また、⑤は今後の計画を尋ねており、患者にプレッシャーを与える可能性があります。③は患者の認識を尋ねていますが、②の方が行動の主体(なぜ自分はそうしたのか)をより明確に意識づけることができます。
最重要! ひきこもり状態の患者への支援では、焦らずに患者のペースを尊重し、小さな「できた」という経験を積み重ねることが回復への第一歩です。看護師は、患者の「できないこと」ではなく、「できたこと」に着目する視点が求められます。 概念整理: ストレングスモデル (Strengths Model) では、問題(疾患や障害)に焦点を当てる「ディフィシットモデル (Deficit Model)」とは異なり、個人が持つリソースや能力、強みを評価し、それを活用した支援を行います。看護面接では、患者のポジティブな体験や意思決定に焦点を当てた質問(解決志向アプローチ、Solution-Focused Approach)が有効です。
一目で比較!:
問いかけの種類焦点適切な場面
「どうして話そうと思ったのか」主体性・意思決定プロセスストレングス評価・生きる力の確認
「今の気持ちは?」感情の表出カタルシス・ラポール形成初期
「何がきっかけ?」外的要因の認識環境調整の必要性を探る時
「どんな時に怖い?」症状・問題の詳細アセスメント・問題分析時

看護過程ポイント: - アセスメント (Assessment): 患者が「話そう」と決断した背景にある内的・外的リソース(例:信頼関係の芽生え、不安を軽減した何か)を評価します。 - 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「非効果的健康維持パターン (Ineffective Health Maintenance)」ではなく、「健康増進への準備状態 (Readiness for Enhanced Health Management)」の視点も持ちます。 - 計画・実施 (Planning & Intervention): 患者の意思を承認し、小さな成功体験を積み重ねるための具体的な目標(例:次回の訪問時も会話をする)を患者と共に設定します。 - 評価 (Evaluation): 患者が自らの意思決定を肯定的に捉え、自己効力感 (Self-Efficacy) が高まったかどうかを評価します。
暗記のコツ: 「生きる力」=「レジリエンス (Resilience)」と覚えてください。このキーワードが出たら、患者の強みや意思決定プロセスに焦点を当てた問いかけを選ぶ、と記憶しましょう。
国試頻出ポイント: 精神看護学の面接技術では、「共感 (Empathy)」「受容 (Acceptance)」「傾聴 (Active Listening)」と共に、「患者の主体性を引き出す問いかけ」が出題されます。特に「ストレングスモデル」「リカバリー (Recovery) 志向のケア」は近年の国試で重視されるテーマです。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「ストレングスモデルとは何か」を問うだけでなく、事例文の中で患者の一言(「話せてよかった」)を読み取り、看護師の適切な対応を選択する状況設定問題として出題されます。患者の発言の背景にある「意思」を読み取る力が問われます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 40代男性、5年間のひきこもり状態。精神科訪問看護が開始され、3回目の訪問で初めて玄関先で短時間の会話ができました。患者はうつむきながらも「話せてよかったです」と呟きました。この時、看護師は「今日はどうして話そうと思ったのですか?」と尋ねました。患者は少し考え、「昨日、母が『無理しなくていいよ』と言ってくれて、少し安心したんです。それで、ちょっとだけなら…と思って」と答えました。この返答から、患者にとって母親のサポートが重要なリソースであること、そして自分から「話そう」と決断できたという主体性の芽生えを看護師はアセスメントしました。 - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! 患者の意思決定を認め、承認する。 → 「そうだったんですね。お母さんの言葉が安心につながって、自分から話そうと決めたんですね。それがとても大事なことですよ」と肯定的にフィードバックする。決して「外に出られてよかったですね」と結果だけを評価しない。 → 患者の意思決定プロセスを尊重した関わりが、自己肯定感と自己効力感の向上につながります。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 患者のペースを尊重し、無理に次の行動(外出や就労など)を促さないこと。また、母親のサポートが患者にとって過度なプレッシャーになっていないかもアセスメントする必要があります。訪問看護では、患者と家族双方の視点を捉えることが重要です。
先輩看護師の一言: 「ひきこもりの方と話せた時、私たち看護師も嬉しくなりますよね。でも、そこで『次は外に出てみませんか?』と先回りして提案するのは逆効果です。大切なのは、患者さんが『なぜ今日話そうと思ったのか』というその意思決定のプロセスを一緒に振り返り、『自分で決められた』という感覚を育むことです。それが本当の生きる力になります!」

重要概念

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