核心解説
この問題は、
統合失調症 (Schizophrenia) の
陰性症状 (Negative Symptoms) のひとつである意欲・自発性の低下(アパシー)に対する看護介入の基本を問うています。統合失調症では、幻覚・妄想などの陽性症状だけでなく、感情の平板化、無為・自閉、自発性の著しい低下などの陰性症状が、患者さんの日常生活動作 (ADL) や社会機能に長期的な影響を与えます。この患者さんのように、洗面や歯磨きといった基本的なセルフケアが自発的に行えない状態は、陰性症状が強く影響していると考えられます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 陰性症状による自発性低下に対しては、患者さんのペースを尊重しながらも、
構造化された環境と具体的な支援(プロンプティング) が効果的です。選択肢④の「毎日決まった時間に看護師が声をかけ、一緒に洗面所へ行く」という対応は、患者さんが「何をすべきか」「いつ行うべきか」という判断の負担を軽減し、実際の行動を促す適切な介入です。患者さんの主体性を損なわず、できた体験を積み重ねることで自己効力感を高める支援となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①「声かけを行わずに見守る」は、陰性症状の強い患者さんには無効であり、むしろ状態を悪化させる可能性があります。患者さんは「やらなければ」と思っていても、具体的な行動に移すことが難しいのです。
②「清潔行動ができたら好きなものを与える契約」は、トークン・エコノミー法の一種ですが、この患者さんのように自発性が著しく低下している初期段階では、外的報酬に頼る前に、基本的な行動を支援する方が優先されます。また、契約が守れなかった場合の自己否定感にも注意が必要です。
③「叱責」は患者さんの自尊心を深く傷つけ、症状を悪化させるため禁忌です。
⑤「看護師が代わりに実施する」は、患者さんの残存機能を低下させ、依存を促進します。看護は「代わりに行うこと」ではなく、「患者さんが自分で行えるようになること」を目指すべきです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
統合失調症の陰性症状に対する看護は、
認知行動療法 (CBT) の考え方に基づく「段階的課題設定」と「行動活性化」の原則が重要です。また、
混同注意! うつ病による精神運動抑制との鑑別も必要ですが、本問は統合失調症の陰性症状を背景としています。薬物療法(抗精神病薬)の副作用である鎮静や錐体外路症状による動作緩慢も考慮する必要があります。
概念整理: 統合失調症の陰性症状(意欲低下・自閉・感情平板化)は、患者さんのセルフケア能力を著しく低下させる。看護師は、構造化された環境と具体的な声かけ(「一緒にやろう」という共同行為)で、患者さんの主体性を尊重しながら行動を促すことが基本。
一目で比較!:
| 症状タイプ | 対応の基本 | 注意点 |
|---|
| 陽性症状(幻覚・妄想) | 現実確認を促し、安全を確保 | 妄想内容に同調しないが、否定もしない |
| 陰性症状(自発性低下) | 構造化と具体的な促し・共同行為 | 代わりにしすぎず、患者のペースを尊重 |
看護過程ポイント:
アセスメント:自発性低下の程度、日内変動、抗精神病薬の副作用の有無。
看護診断:セルフケア不足(洗面・更衣)。
計画:毎日同じ時間に声かけ、段階的に自立を促す。
実施:患者と一緒に行動し、できたことを肯定的にフィードバック。
評価:自発的行動の出現頻度、患者の自己効力感の変化。
暗記のコツ: 陰性症状は「マイナスの症状」→「何もしない・できない」状態。看護は「患者の代わりにやる」のではなく、「患者がやるのを助ける(一緒に行う)」と覚えましょう。
国試頻出ポイント: 統合失調症の陰性症状と陽性症状の看護介入の違いは毎年出題!特に「見守るだけ」や「代わりに行う」が誤答となるパターンを押さえてください。
出題パターン注意!: 単純な知識問題から、事例問題(「Aさんは退院後、自宅で洗濯や調理ができず困っている」など)に発展して出題されることが多いです。陰性症状が長期的な生活機能障害につながることを理解しておきましょう。