核心解説
この問題は、
災害時トリアージ (Disaster Triage) における
小児 (Pediatrics) の優先順位決定の原則を問うています。特に、
生命の危険が差し迫った状態 を見極める判断力が重要です。
トリアージでは、限られた医療資源の中で最大多数の救命効果を得るために、治療の緊急性と可能性に基づいて患者を分類します。最優先(一般的に赤タグ:即時治療群)と判断されるのは、
気道・呼吸・循環 (Airway, Breathing, Circulation: ABC) に重大な問題があり、迅速な介入なしでは生命維持が困難な状態です。
選択肢③の「
最重要! 閉塞性ショック (Obstructive Shock) の兆候」と「
橈骨動脈触知不可 (Absent Radial Pulse)」は、まさに
重度の循環不全 (Severe Circulatory Failure) を示す所見であり、緊急処置(例:心タンポナーデの穿刺ドレナージ、緊張性気胸の減圧など)を要する最優先群に該当します。
正解の根拠 (Answer Rationale)災害トリアージの分類では、以下の優先順位が一般的です。
1.
最優先(赤/即時): 生命を脅かす重症だが、迅速な処置で救命可能。気道閉塞、ショック(閉塞性・出血性など)、重症呼吸不全など。
2.
優先(黄/準緊急): 重症だが、短時間の待機が可能。大きな骨折、中等度の熱傷など。
3.
待機(緑/軽症): 軽傷で歩行可能。擦過傷、軽度の裂傷、泣いているが全身状態は安定。
4.
死亡(黒/救命困難): 明らかな死亡または救命が不可能な重篤状態。
選択肢③は循環不全によるショック状態であり、即時介入が必要な「赤」に該当します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)①番:
混同注意! 「四肢の擦過傷と安定したバイタルサイン」は、全身状態が安定している軽症であり、優先度は低い(緑タグ)。
②番: 「前腕裂傷だが出血コントロールされている」は、止血が完了しているため緊急性は低く、準緊急~軽症(黄~緑)の範囲です。
④番: 「軽度の頭痛、神経学的異常なし」は、意識清明で局所神経所見がないため、緊急性は低いです。ただし、経過観察は必要です。
⑤番: 「歩行可能で泣いているが明らかな外傷なし」は、典型な軽症(緑タグ)です。泣いていること自体は、気道確保や循環不全の直接的な兆候ではありません。
概念整理: 災害トリアージは「最大多数の最善」の原則に基づく。小児では解剖学的・生理学的特性から、同じ受傷機転でも成人より重症化しやすいため、呼吸・循環の評価を特に慎重に行う必要がある。トリアージタグの色と優先度(赤>黄>緑>黒)を正確に理解することが重要。
一目で比較!:
| トリアージカテゴリ | 代表的所見 | 処置の優先度 |
| 赤(即時) | 閉塞性ショック、橈骨動脈触知不可、気道閉塞 | 最優先 |
| 黄(準緊急) | 大きな骨折、中等度熱傷、コントロール不能な出血 | 2番目 |
| 緑(軽症) | 擦過傷、裂傷(止血済み)、歩行可能、泣いている | 待機可能 |
| 黒(死亡) | 心肺停止、明らかな死亡兆候 | 救命困難 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 小児ではバイタルサイン(特に呼吸数、心拍数、毛細血管再充満時間)と意識レベルの迅速評価が鍵。ショック徴候(冷たく湿った皮膚、頻脈、血圧低下は遅れて出現)を見逃さない。
看護診断: 「組織灌流低下 (Decreased Tissue Perfusion)」に関連する「非効果的循環 (Ineffective Cardiopulmonary Perfusion)」が優先される。
計画・実施: 酸素投与、静脈路確保、医師への迅速報告(SBAR使用)、トリアージタグの正しい装着。
評価: 処置後の循環動態の改善(脈拍の触知、血圧上昇、意識レベルの改善)を継時的に評価する。
暗記のコツ: トリアージの優先順位は「赤信号(危険・すぐ止まれ!)」→「黄信号(注意・準備)」→「青信号(進んでOK)」と連想すると覚えやすい。小児では「泣いている=緑(軽症)」と覚えると、ショック時(ぐったり、無反応)との対比で理解しやすい。
国試頻出ポイント: 災害看護分野では、トリアージの分類(赤/黄/緑/黒)と具体的な状態のマッチングが頻出。特に「ショック徴候(橈骨動脈触知不可、頻脈、血圧低下)」と「歩行可能で泣いている小児」の対比は定番問題。状況設定問題(事例)で、多数の傷病者が同時に発生した場合の優先順位を問われることも多い。
出題パターン注意!: 単純な「赤タグはどれか」だけでなく、「複数の傷病者が同時に搬送された場合、最初に診察すべき患者は誰か」という応用問題や、「小児特有のトリアージ基準(JumpSTARTなど)を考慮した判断」を問う発展問題にも注意。