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新生児の健康増進のための看護
問題

生後5日の新生児。母親から「右の乳房がはって痛い」と訴えがあった。児の哺乳状態は良好で、体重減少は出生時体重の5%以内である。この母親への対応として最も適切なのはどれか。

解説
産後数日は母乳分泌が開始される時期であり、生理的な乳房緊満(うっ乳)が生じやすい。この時期の乳房緊満に対しては、搾乳器や手で母乳を搾り出して乳房を空にし、児に頻回に授乳することで症状が改善する。授乳を中止すると緊満が悪化する。冷罨法は炎症が強い場合に用いられることがあるが、まずは乳汁を排出することが優先される。
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詳細解説

核心解説 この問題は、産後早期の 乳房緊満 (Breast Engorgement) に対する看護介入を問うています。産後3~5日目は、プロラクチン (Prolactin) の分泌亢進により乳汁分泌が本格化する時期であり、生理的な乳房の腫脹や熱感、疼痛が生じやすくなります。これを「生理的乳房緊満(うっ乳)」と呼び、病的な 乳腺炎 (Mastitis) とは区別する必要があります。このケースでは、児の哺乳状態が良好で体重減少も軽度であることから、児の状態は安定しており、母親の乳房緊満への対応が中心となります。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): 産褥期の乳房緊満の病態生理は、乳腺胞(Alveoli)への乳汁貯留と、それに伴う血管・リンパ管のうっ滞です。治療と予防の基本は「乳汁の排出促進」であり、最も効果的な方法は 頻回な授乳(Milk Removal by Baby) または 搾乳(Milk Expression) です。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 正解は 搾乳器で母乳を搾り出すよう指導する です。乳房内に停滞した乳汁を排出することで、乳房内圧が低下し、疼痛が緩和されます。児が吸いつかない場合や、痛みで直接授乳が難しい場合は、搾乳器や用手圧迫で搾乳し、乳房を柔らかくしてから授乳を試みます。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis): - ②番 混同注意! 「授乳を中止する」は誤りです。授乳を中止すると乳汁の排出が止まり、乳房緊満がさらに悪化します。母乳育児を継続することが基本です。 - ③番 「冷罨法で乳房を冷やす」は、炎症が強い場合や疼痛が強い場合に補助的に用いられますが、第一選択ではありません。まずは乳汁を排出することが優先されます。 - ④番 「乳頭を清潔にする」は正しいケアですが、これは乳房緊満の原因治療にはなりません。乳頭の清潔保持は感染予防として重要ですが、本症例の主訴に対する優先介入ではありません。 - ⑤番 「乳腺炎の可能性があるため医師に報告する」は、発熱や乳房の発赤・熱感が強い場合に考慮しますが、本ケースでは児の状態も良好であり、まずは生理的な乳房緊満として対応します。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 乳房緊満と乳腺炎の鑑別が重要です。乳房緊満は両側性で全身症状(発熱)を伴わないのに対し、乳腺炎は通常片側性で、発熱や悪寒、強い疼痛を伴います。乳房緊満が改善しない場合や、発熱・発赤が出現した場合は、乳腺炎への移行を疑い、医師に報告する必要があります。 概念整理: 産褥3~5日目の生理的乳房緊満の病態生理は、乳汁分泌開始に伴う乳腺胞の急激な拡張と、間質液の増加によるものです。治療の基本は「乳汁の排出(頻回授乳・搾乳)」であり、疼痛緩和のために授乳前の温罨法や授乳後の冷罨法が補助的に用いられます。 一目で比較!:
状態特徴対応
生理的乳房緊満産褥3~5日目、両側性、発熱なし、皮膚発赤軽度頻回授乳・搾乳(第一選択)、疼痛時は授乳後に冷罨法
うっ滞性乳腺炎乳汁排出不良で生じる炎症、発熱なし~軽度、乳房のしこり頻回授乳・搾乳(最重要)、排乳促進、安静
感染性乳腺炎細菌感染(主に黄色ブドウ球菌)、片側性、発熱・悪寒、強い発赤抗菌薬投与、授乳継続(可能な限り)、排膿(切開ドレナージ)
看護過程ポイント: アセスメント:乳房の緊満度、発赤・熱感の有無、全身症状(体温)、児の哺乳状態(吸啜力、体重減少率)を評価。看護診断:「母乳分泌過多に関連する乳房緊満」「乳房の痛みに関連する授乳困難リスク状態」。計画:搾乳または頻回授乳による乳汁排出の実施、疼痛緩和(温罨法・冷罨法の適時使用)。評価:乳房緊満の改善、母親の疼痛軽減、児の体重増加の確認。 暗記のコツ: 「うっ乳(うっちち)は出すのが基本!」と覚えましょう。乳房が張って痛い時は「出す・出す・出す」です。乳腺炎は「熱が出たら報告」がポイントです。 国試頻出ポイント: 産褥期の乳房トラブルは、乳房緊満、うっ滞性乳腺炎、感染性乳腺炎の3段階の鑑別と、それぞれの対応(排乳 vs 抗菌薬 vs 外科的処置)が頻出です。特に「生理的なものか、病的なものか」の判断が問われます。 出題パターン注意!: 単純な「乳房緊満への対応」を問う知識問題から、「発熱を伴う乳房緊満の事例で、医師への報告が優先される場面」を問う状況設定問題に発展することがあります。全身状態(発熱・倦怠感)の有無を常にチェックする習慣をつけましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 産後3~5日目の褥婦が「乳房が張って痛い」と訴えたら、まずは観察とアセスメントです。 - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 30代女性、経腟分娩後4日目。両側乳房が緊満し、触れると痛がりますが、発熱はありません。児はしっかりと吸啜し、体重減少も出生時体重の3%で良好です。「痛くて授乳するのが辛い」と涙ぐんでいます。看護師としてどのように対応しますか? - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! まず、乳房緊満が生理的なものか、病的な乳腺炎の前段階かを鑑別します。 観察:体温(平熱か)、乳房の発赤・熱感の範囲、疼痛の程度、児の吸啜状態、体重減少率。 アセスメント:両側性、発熱なし、児の哺乳良好 → 生理的乳房緊満と判断。 介入: 1. 搾乳指導:授乳前に手または搾乳器で乳汁を少し搾り、乳輪部を柔らかくしてから児に吸わせる方法を指導。授乳後も残っている場合は搾乳器で搾り切る。 2. 温罨法と冷罨法:授乳前に温タオルで乳房を温めると射乳反射(Milk Ejection Reflex)が促進され、乳汁が出やすくなる。授乳後は冷罨法で血管収縮させ、疼痛と浮腫を軽減する。 3. 心理的サポート:「痛いけど、赤ちゃんに飲んでもらうことが一番の治療法です。一緒にやってみましょう」と声をかけ、自己効力感を高める。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): - 危険所見:発熱(38℃以上)、片側性の強い発赤・熱感、膿性分泌物 → 感染性乳腺炎の疑い。直ちに医師に報告し、抗菌薬治療と排乳を促進する。 - 搾乳器の使用時は、乳頭や乳輪を傷つけないよう吸引力を調整する。過度な吸引は乳頭亀裂(Nipple Fissure)の原因となる。 - 手搾乳の指導時は、手指衛生を徹底し、清潔な容器を使用する。 - 混同注意! 乳房緊満に対して「授乳を控える」「水分制限をする」といった古い指導はしない。現在の標準ケアは「排乳促進」である。 看護プロトコル: 観察項目:体温、乳房の左右差・発赤・熱感・硬結・疼痛の部位と程度、乳汁の性状(色・膿の有無)、児の哺乳状況(回数・持続時間・満足度)、体重変化。報告基準(SBAR):S(状況)「産褥4日目の◯◯さんが両側乳房の緊満と疼痛を訴えています」、B(背景)「発熱はなく、児の哺乳状態は良好です」、A(アセスメント)「生理的な乳房緊満と判断します」、R(提案)「搾乳と頻回授乳の指導を継続します。経過観察中に発熱や片側性の強い症状が出現したら報告します」。記録のポイント:乳房の状態(観察所見)、実施したケア(搾乳・授乳の方法と反応)、母親の表情や発言、児の哺乳状況を具体的に記載。 先輩看護師の一言: 「乳房緊満は、産後ママさんにとって本当に辛い症状の一つです。でも、『ちゃんと母乳が出ている証拠だよ』とポジティブに伝えつつ、具体的なケアを一緒に行うことで、ママさんの不安はグッと減ります。痛くて授乳を嫌がるママにこそ、優しく寄り添い、『少し搾って柔らかくしてから、赤ちゃんに吸ってもらおうね』と導いてあげてください。国試でも、ママの気持ちに立ったケアの選択が大切ですよ!」

重要概念

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