核心解説
この問題は、
せん妄 (Delirium) の診断基準に関する知識を問うものです。せん妄は、急性発症し、日内変動を伴う意識障害と注意障害を特徴とする症候群であり、
DSM-5 (精神障害の診断と統計マニュアル 第5版) に基づく診断基準の核心を理解することが求められます。正解は、
注意の障害です。
せん妄の診断では、
最重要! ①注意 (Attention) の障害(集中できない、注意が散漫になる)、②意識 (Awareness) の障害(環境認識の低下)、③これらの障害が急性に発症し、日内変動を示す、という3点が中核です。意識レベルの低下(傾眠傾向など)は症状の一部として現れることがありますが、診断基準の必須項目ではなく、意識障害の質的な側面(注意の障害)がより重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! DSM-5におけるせん妄の診断基準の中心は、
「注意」の障害(集中力の低下、注意の転導性の亢進)と
「意識」の障害(環境認識の低下)です。これらは
急性発症 (Acute Onset) し、
日内変動 (Diurnal Fluctuation) を示すことが特徴です。選択肢4の「注意の障害」は、この診断基準の必須項目であり、正解となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番「持続する幻覚」は、せん妄に出現することはありますが、必須項目ではありません。幻覚は統合失調症(Schizophrenia)など他の精神疾患でもみられるため、診断の特異性に欠けます。②番「意識レベルの低下」は、せん妄の症状として現れることがありますが、DSM-5の診断基準では「意識の障害」として「環境認識の低下」と表現され、「注意の障害」と並ぶ中核症状です。単なる「意識レベルの低下(傾眠)」は、せん妄以外の意識障害(例:脳器質性障害)でも起こるため、診断基準の中心的項目ではありません。③番「症状の緩徐な発症」は、せん妄の特徴である「急性発症」と真逆です。せん妄は通常、数時間から数日で急激に発症します。⑤番「記憶の完全な喪失」は、認知症(Dementia)の特徴であり、せん妄では記憶障害は変動し、完全な喪失までは至りません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
せん妄と認知症(Dementia)の鑑別は国試頻出です。
| 特徴 | せん妄 (Delirium) | 認知症 (Dementia) |
|---|
| 発症 | 急性(数時間〜数日) | 緩徐(数ヶ月〜数年) |
| 経過 | 日内変動あり(夜間に増悪) | 進行性で日内変動は乏しい |
| 注意・意識 | 注意障害 + 意識障害 | 初期は注意・意識は保たれる |
| 原因 | 身体疾患・薬剤・手術など可逆的要因 | 神経変性疾患など不可逆的要因 |
概念整理: せん妄の診断は「注意障害」と「意識障害」が中核。急性発症と日内変動も必須。幻覚や記憶障害は補助的な所見に過ぎない。
一目で比較!: せん妄 vs 認知症 vs 統合失調症。発症の速さ、日内変動の有無、意識レベルが鑑別の鍵。
看護過程ポイント: アセスメント:せん妄スクリーニング(CAM: Confusion Assessment Method)の活用、特に注意と意識の評価が優先。看護診断:「急性混乱 (Acute Confusion)」など。計画:原因となる身体疾患・薬剤の同定と環境調整(見当識刺激、夜間の照明調整)。
暗記のコツ: せん妄の3つの「A」:Attention(注意障害)、Awareness(意識障害)、Acute(急性発症)で覚える。
国試頻出ポイント: DSM-5の診断基準の核心(注意障害)、せん妄と認知症の鑑別、せん妄の原因(感染症、薬剤、電解質異常、手術後)を問う問題が頻出。
出題パターン注意!: 「高齢者が手術後に夜間、落ち着かず、注意が散漫で、話が支離滅裂になった」という事例問題で、せん妄の判断と適切な看護介入(原因の特定、環境調整、家族への説明)を問う形式に発展する。