核心解説
この問題は、
高齢者の下痢 (Diarrhea in the Elderly) に伴う
脱水 (Dehydration) の早期発見とアセスメントを問うています。高齢者は体内の水分量が元々少なく、口渇感も低下しているため、脱水に非常に気づきにくく、重症化しやすいという特徴があります。
最重要! 下痢による脱水では、
循環血液量の減少 (Hypovolemia) が起こり、腎臓への血流が低下するため、尿量が減少します。これが最も初期に現れる重要な徴候です。
1.
正解の根拠 (Answer Rationale): 下痢による体液喪失で循環血液量が減少すると、腎臓は体液を保持しようと働き、尿量が減少します。
尿量が 30mL/時 未満 や
400mL/日 未満 は脱水の重要なサインです。高齢者では特に、バイタルサインの変動が現れる前に尿量減少が先行することが多いため、観察が極めて重要です。
2.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ②番:
混同注意! 脱水では循環血液量が減少するため、血圧は
低下 します。血圧上昇は逆の病態で、例えば疼痛やストレス、高血圧症などで見られます。
- ③番:脱水や下痢による全身状態の悪化により、食欲は通常
低下 します。食欲亢進は脱水の徴候ではありません。
- ④番:発熱 (Fever) は脱水そのものではなく、下痢の原因(感染性腸炎など)に伴う症状です。脱水では発熱よりも、体温調節障害による
低体温 (Hypothermia) や、逆に感染合併時の発熱に注意が必要です。
- ⑤番:脱水により体内水分量が減少するため、体重は
減少 します。体重増加はむくみ (浮腫) や心不全など水分貯留の状態で見られます。
3.
関連概念の整理 (Related Concepts): 高齢者の脱水では、口渇感の低下、皮膚の乾燥、舌の乾燥、起立性低血圧、せん妄 (Delirium) などの症状も重要です。また、
経口補水療法 (Oral Rehydration Therapy, ORT) や
輸液療法 (Fluid Therapy) の適応判断も併せて学習しましょう。特に高齢者は、急激な輸液で心不全を起こすリスクもあるため、
輸液速度と尿量のバランス を常にアセスメントする必要があります。
概念整理:
脱水 (Dehydration) の病態生理下痢や嘔吐による体液喪失 → 循環血液量減少 (Hypovolemia) → 腎臓への血流低下 → 抗利尿ホルモン (ADH) とアルドステロンの分泌亢進 → 尿量減少。この一連の流れを理解することが、脱水の徴候を正しくアセスメントする基礎となります。
一目で比較!:
脱水 vs 浮腫 (Edema)| 状態 | 尿量 | 体重 | 血圧 | 皮膚 |
|---|
| 脱水 | 減少 | 減少 | 低下 (起立性) | 乾燥、弾力低下 |
| 浮腫 | 正常〜減少 | 増加 | 正常〜高値 | 張り、圧痕 (Pitting) |
看護過程ポイント:
アセスメント →
看護診断 →
計画 →
実施 →
評価アセスメント: 下痢の回数・性状、バイタルサイン、尿量、体重変化、口渇感、皮膚・粘膜の乾燥状態、意識レベル (特に高齢者はせん妄の有無を確認)。
看護診断 (Nursing Diagnosis): 「
体液量不足リスク (Risk for Deficient Fluid Volume)」または「
体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」
計画・実施: 経口摂取可能なら
経口補水液 (ORS) の少量頻回摂取を促す。重症なら医師の指示に基づき
輸液療法 を実施。
評価: 尿量が増加したか、体重が安定したか、バイタルサインが正常化したか。
暗記のコツ: 「下痢で脱水 → 血液が減る → 腎臓に血が行かない → おしっこが出なくなる」とストーリーで覚えましょう。体重が減る、血圧が下がる、食欲が落ちるも、すべて「体の水分が外に出てしまった」結果です。
国試頻出ポイント: 高齢者の下痢・脱水は、ほぼ毎年のように出題されるテーマです。特に「尿量減少」が脱水の最初のサインであること、高齢者の脱水症状の非典型性(口渇を感じにくい、発熱しにくいなど)は必ず押さえておきましょう。状況設定問題では、夜勤中の患者さんが「下痢が続いている」と報告を受けたときの対応が問われることが多いです。
出題パターン注意!: 「Aさん(85歳、女性)は、3日前から水様性下痢が続いている。本日、訪問看護師が訪室すると、Aさんは『昨夜から何となくぼんやりする』と話し、ベッド上でウトウトしている。バイタルサインは血圧 90/50mmHg、脈拍 100/分、体温 37.0℃。この時、看護師が最も優先してアセスメントすべき項目はどれか。」という形で、尿量や皮膚のツルゴール、口渇感などと混同させて出題されます。常に「循環血液量の指標は何か?」を考えて解答しましょう。