核心解説
この問題は、
前立腺肥大症 (Benign Prostatic Hyperplasia, BPH) における
膀胱留置カテーテル挿入の適応を問うています。前立腺肥大症は、前立腺の過形成による尿道圧迫が原因で、排尿障害を引き起こす疾患です。膀胱留置カテーテルは、保存的治療で改善しない重度の排尿困難や、尿路閉塞による急性症状に対して使用されます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ④番の
急性尿閉 (Acute Urinary Retention)は、前立腺肥大症により尿道が完全に閉塞し、自力での排尿が全く不可能になった状態です。膀胱内圧が急激に上昇し、患者は強い苦痛を伴います。この場合、膀胱留置カテーテル挿入は、尿を直ちに排出し、膀胱壁の過伸展や腎後性腎不全を防ぐための緊急かつ必須の処置です。適応のゴールドスタンダードといえます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番の「軽度の頻尿」や②番の「残尿量50mL」、⑤番の「尿意亢進」は、前立腺肥大症の初期~中等度の症状であり、まずはα1遮断薬(タムスロシンなど)や5α還元酵素阻害薬(デュタステリドなど)による
混同注意!薬物療法が優先されます。カテーテル挿入はこれらの保存的治療が無効な場合や重症例に限られます。特に、残尿量50mLは正常範囲に近く(通常100mL以上が問題となることが多い)、カテーテル留置の適応にはなりません。
③番の「尿潜血陽性」は、前立腺肥大症に伴う粘膜のうっ血や炎症でみられることがありますが、単独ではカテーテル挿入の適応にはなりません。尿潜血の原因精査(膀胱癌など)が必要です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
前立腺肥大症の重症度評価では、IPSS(国際前立腺症状スコア)やQOLスコア、残尿測定、尿流測定などが用いられます。外科的治療(TUR-P: 経尿道的前立腺切除術)の適応となるのは、薬物療法に抵抗性の中等症~重症、もしくは急性尿閉の反復例です。膀胱留置カテーテルは、手術前の一時的な尿路確保や、手術不能例に対する長期管理としても使用されます。
概念整理: 前立腺肥大症による膀胱留置カテーテル挿入の絶対的適応は
急性尿閉です。その他の症状(頻尿、残尿、尿意亢進)はまず保存的治療(薬物療法)の適応となります。
一目で比較!:
| 状態 | 治療適応 |
|---|
| 急性尿閉 | 緊急カテーテル挿入 |
| 残尿50mL / 軽度頻尿 / 尿意亢進 | 薬物療法(α1遮断薬など) |
| 尿潜血陽性のみ | 原因精査(カテーテル適応なし) |
看護過程ポイント:
アセスメント: 排尿状態(尿閉の有無、残尿量、排尿困難の程度)、腹部の膨隆(膀胱充満の触診)、患者の苦痛度(疼痛スケール評価)。
看護診断: 「尿路閉塞」または「排尿パターン障害」
計画・実施: 急性尿閉時は医師の指示のもと、無菌的操作でカテーテル挿入。挿入後は尿量、色、性状を観察し、膀胱洗浄やバルーン留置の管理を行う。
評価: 排尿が確保され、膀胱内圧が低下したか、患者の苦痛が軽減したか。
暗記のコツ: 「急性尿閉 = カテーテル必須」と覚えましょう。残尿量は「100mL以上で問題」と覚えておくと、50mLが適応外とわかります。「頻尿や尿意亢進は薬で治す」とセットで記憶してください。
国試頻出ポイント: 前立腺肥大症の治療適応(薬物療法 vs カテーテル vs 手術)は頻出です。特に「急性尿閉」と「残尿量」の数値問題は、状況設定問題の一部としてよく出題されます。
出題パターン注意!: 単純な「適応か否か」の知識問題だけでなく、「排尿困難で来院した高齢男性、残尿200mLあり。あなたの対応は?」のような状況設定問題に発展します。その場合も、まずはカテーテル留置の適応かどうかを判断する力が問われます。