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排泄機能障害のある患者の看護
下痢の患者の看護で脱水の評価に最も重要なバイタルサインの変化はどれか。
1
体温上昇
2
血圧上昇
3
呼吸数の減少
4
脈拍数の増加
✓ 正解
5
SpO2の低下
解説
下痢による脱水では循環血液量が減少するため、代償機序として心拍数が増加(頻脈)する。血圧は低下傾向となり、呼吸数は増加することがある。体温上昇は脱水の直接的な評価指標ではなく、感染の有無を評価する。SpO2低下は脱水より呼吸器系の問題を反映する。
同じテーマの次の問題 便秘の患者への看護介入として適切なのはどれか。 この問題が収録された問題集 成人看護学 KRW 12,900
核心解説
この問題は、下痢 (Diarrhea) による 脱水 (Dehydration) とそれに伴う循環動態の変化を、バイタルサイン (Vital Signs) から評価する看護技術の基本を問うています。脱水は体内の水分と電解質が喪失する病態であり、特に細胞外液(循環血液量)が減少することが重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale) :
最重要! 下痢による脱水で循環血液量が減少すると、心臓は全身に十分な血液を送り出そうと代償的に拍動数を増やします。この結果、脈拍数(心拍数)の増加(頻脈: Tachycardia) が最も早期かつ鋭敏に現れるバイタルサインの変化です。よって、脱水の重症度評価には脈拍数のモニタリングが必須です。
誤答の分析 (Distractor Analysis) :
① 混同注意! 体温上昇は脱水そのものより、下痢の原因となる感染症(腸炎など)の有無を評価する指標です。脱水の直接的な評価ではありません。
② 脱水時は循環血液量減少により血圧は低下(低血圧: Hypotension)傾向となります。血圧上昇は脱水の典型的な徴候ではありません。
③ 脱水による代謝性アシドーシス(乳酸アシドーシスなど)を代償するため、呼吸数は増加(Kussmaul呼吸)することがあります。呼吸数の減少は脱水評価の指標とはなりません。
⑤ 混同注意! SpO2の低下は主に呼吸器系の問題(肺炎、無気肺、肺塞栓症など)を反映します。脱水のみで直接的にSpO2が低下することはまれです。
関連概念の整理 (Related Concepts) :
脱水評価のバイタルサイン変化をまとめると、脈拍増加 → 血圧低下 → 呼吸数増加 の順に出現します。特に 起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension) は早期発見に有用で、臥位から立位への体位変換で収縮期血圧が20mmHg以上低下する場合、循環血液量減少が疑われます。
概念整理 :
脱水の病態は「体液量減少 → 循環血液量減少 → 代償性頻脈 → 低血圧 → 組織灌流低下」と進行します。バイタルサインで最も早期に捉えられる変化が「脈拍数増加」です。同時に、皮膚ツルゴール低下、口渇、尿量減少(30ml/時未満 )も重要な観察項目です。
一目で比較! :
評価項目 脱水時の変化 備考 脈拍数 増加(頻脈) 最も早期に出現する代償機序 血圧 低下(低血圧) 進行した脱水で顕著に 呼吸数 増加 代謝性アシドーシスの代償 体温 上昇(感染時) 脱水の直接評価には不適
看護過程ポイント :
アセスメント : 下痢患者のバイタルサイン測定では、特に脈拍数と血圧(可能なら起立性低血圧の評価)を優先。尿量(1ml/kg/時が基準 )や皮膚の状態も併せて評価します。
看護診断 (Nursing Diagnosis) : 「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」または「下痢 (Diarrhea)」が優先されます。
計画・実施 : 経口補水療法(ORS)や、重症例では 輸液療法 (Fluid Therapy) (乳酸リンゲル液など)の医師指示に基づく実施。バイタルサインの頻回モニタリングと尿量測定。
評価 : 脈拍数の正常化、血圧安定、尿量増加、口渇感の改善をもって効果を判断します。
暗記のコツ :
「下痢で水が抜ける → 血管の中の血液が減る → 心臓が『血液足りない!』と慌ててドキドキ(頻脈)する 」とイメージしましょう。脱水のサインは「脈が速い」「血圧が低い」「尿が少ない」の3点セットで覚えると国試でも現場でも使えます。
国試頻出ポイント :
脱水評価の問題は、単純な知識問題としてだけでなく、「状況設定問題 」として出題されることが多いです。例えば「下痢が続く高齢患者のバイタルサインを測定したところ、脈拍110回/分、血圧88/60mmHgだった。看護師の最初の対応は?」といった形で、頻脈と低血圧から脱水を疑い、すぐに医師へ報告(SBAR)する判断力を問われます。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario) :あなたは内科病棟の看護師。70代女性、急性胃腸炎による下痢と嘔吐で入院中です。夜勤の巡回中、患者さんが「さっきからまた下痢が続いて、トイレに行くたびにふらふらする」と訴えています。バイタルサインを測定すると、脈拍が108回/分(これまでは72回/分) 、血圧が92/60mmHg(これまでは120/70mmHg) と変化しています。SpO2は98%(室内気)で、体温は37.0℃です。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) :1. 観察 (Assessment) : 頻脈(脈拍108回/分)と低血圧(92/60mmHg)を確認。これは脱水による循環血液量減少の典型的なサインです。同時に皮膚ツルゴール低下や口渇の有無、尿量(過去数時間のバランス)も確認します。 2. 報告 (Report / SBAR) : 医師へ 即時報告 します。 - S (Situation) : 「70代女性、急性胃腸炎の患者さんですが、下痢が続き、ふらつきを訴えています。」 - B (Background) : 「これまでに下痢を5回、嘔吐を2回認めています。経口摂取は十分にできていません。」 - A (Assessment) : 「現在、脈拍108回/分、血圧92/60mmHgと頻脈と低血圧を認めます。脱水による循環血液量減少と判断します。」 - R (Recommendation) : 「輸液の追加または増量が必要と考えます。指示をお願いします。」 3. 介入 (Intervention) : 医師の指示を受けて、末梢静脈路確保 と 輸液療法 (Fluid Therapy) (例: 乳酸リンゲル液500mlの急速投与)を準備・実施します。患者さんにはベッド上安静を促し、転倒防止のためナースコールを手元に置き、必要時はポータブルトイレを使用するよう説明します。 4. 評価 (Evaluation) : 輸液開始後30分ごとにバイタルサインを再測定。脈拍数の減少(90回/分以下)、血圧の上昇(100/60mmHg以上)、尿量の増加(30ml/時以上)が確認できれば、脱水が改善傾向にあると評価します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions) :- 最重要! 転倒・転落予防 : ふらつきがある高齢患者は転倒リスクが非常に高い。ベッド柵を上げ、床に物を置かない、必要時はポータブルトイレをベッドサイドに配置。 - 感染対策 : 下痢の原因が感染性腸炎の可能性があるため、標準予防策 (Standard Precautions) に加え、接触感染予防策 (Contact Precautions) (手袋・ガウン着用)を徹底。手指衛生は流水と石けんで行う。 - 電解質異常のモニタリング : 頻回の下痢・嘔吐では低カリウム血症(K < 3.5mEq/L )や低ナトリウム血症が併発しやすい。心電図モニター(U波出現、ST変化)や採血データの確認も重要。
看護プロトコル :- 観察頻度 : 急性期はバイタルサインを1時間ごと。安定後は4時間ごと。 - 記録 : 下痢の回数・性状(水様便、血便の有無)、嘔吐の有無、輸液量、尿量(1時間ごと)、バイタルサインの変化、患者の訴え(口渇、ふらつき)を正確に記録。 - 家族への説明 : 「今、点滴で水分を補っています。お母様は脱水の状態で、ふらつきがあるので転ばないように気をつけています。しばらくはベッド上で安静にしていただきます。」
先輩看護師の一言 :「国試では『最も重要なバイタルサインはどれか?』と聞かれたら、まず 脈拍数 を思い浮かべてください!実際の病棟でも、夜勤中に『さっきまで90だった脈拍が急に110になった』という情報から、患者さんの状態悪化に気づくことが本当に多いんです。『いつもと違う』に敏感になってくださいね。」
脱水 — 体内の水分と電解質が喪失した状態。細胞外液(循環血液量)減少が主病態。頻脈 — 心拍数が100回/分以上に増加した状態。循環血液量減少に対する代償機序。バイタルサイン (Vital Signs) — 生命徴候。体温、脈拍、呼吸、血圧の4つが基本。状態評価に必須。循環血液量 (Circulating Blood Volume) — 血管内を循環する血液の総量。脱水により減少し、頻脈や低血圧を引き起こす。代償機序 (Compensatory Mechanism) — 生体が恒常性を維持するために働く生理的反応。脱水時の頻脈はその一つ。
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