核心解説
この問題は、
クッシング症候群 (Cushing’s Syndrome) の診断に用いられる
デキサメタゾン抑制試験 (Dexamethasone Suppression Test)の看護を問うています。デキサメタゾン抑制試験は、外因性の強力な合成副腎皮質ホルモン(デキサメタゾン)を投与し、その後の血中
コルチゾール (Cortisol)値を測定することで、視床下部-下垂体-副腎軸 (HPA axis) の機能を評価する負荷試験です。正常ではデキサメタゾンにより下垂体からのACTH分泌が抑制され、コルチゾール値が低下しますが、クッシング症候群ではこの抑制がかからず、コルチゾール値が高値を維持します。この試験では、投与前後のコルチゾール値を比較することが必須であり、試験開始前に基準値(通常は早朝の血中コルチゾール値)を確認しておく必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③の「試験開始前にコルチゾールの基準値を確認する」が正解です。デキサメタゾン抑制試験では、デキサメタゾン投与前後の血中コルチゾール値を比較することで、HPA軸の抑制反応を評価します。そのため、投与前の基準値(ベースライン)を必ず測定し、記録しておくことが不可欠です。この基準値と投与後の値を比較して、抑制が適切に起こっているか(正常反応)、または抑制されていないか(クッシング症候群疑い)を判定します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①の「試験中は鎮静薬を投与して安静を保つ」は誤りです。鎮静薬の投与は、中枢神経系を介してHPA軸に影響を与え、コルチゾール分泌を変化させる可能性があるため、試験結果を撹乱します。試験中は患者の安静は保つべきですが、薬剤による介入は避けなければなりません。
②の「試験終了後に副腎皮質ホルモンの補充を開始する」は誤りです。デキサメタゾン抑制試験は診断のための負荷試験であり、治療目的ではありません。試験終了後にルーチンで補充を開始することはありません。補充療法が必要となるのは、副腎皮質機能低下症(アジソン病など)が疑われる場合や、試験後の副腎不全のリスクがある場合に限られます。
④の「試験中は患者の体位を常に仰臥位に保つ」は誤りです。体位を厳格に仰臥位に固定する必要はありません。安静は推奨されますが、過度の身体的・精神的ストレスを避けることが重要であり、患者にとって苦痛のない楽な体位を保つことが看護の基本です。
⑤の「試験中は水分摂取を制限する」は誤りです。水分摂取を制限する必要はありません。むしろ、脱水はストレスとなり、コルチゾール分泌を促進する可能性があるため、通常の水分摂取は許可されます。絶飲食が必要な他の内分泌負荷試験(例:ブドウ糖負荷試験)と混同しないようにしましょう。
関連概念の整理 (Related Concepts)
クッシング症候群の診断には、デキサメタゾン抑制試験の他に、血中・尿中コルチゾール測定、ACTH測定、画像検査(副腎CT、下垂体MRI)などが用いられます。また、試験には「少量デキサメタゾン抑制試験(スクリーニング)」と「大量デキサメタゾン抑制試験(鑑別診断)」があり、クッシング病(下垂体性)と副腎性クッシング症候群の鑑別に用いられます。コルチゾール値の日内変動(早朝高値、深夜低値)も重要なアセスメントポイントです。
概念整理:
デキサメタゾン抑制試験 は、
HPA軸の負のフィードバック機構を利用した検査。正常では、外因性ステロイド(デキサメタゾン)によりACTHとコルチゾールの分泌が抑制される。クッシング症候群ではこの抑制が障害されている。
一目で比較!:
| 検査名 | 目的 | 看護のポイント |
| デキサメタゾン抑制試験 | クッシング症候群の診断 | 投与前後のコルチゾール値を比較するため基準値確認が必須。ストレス・薬剤による影響を避ける。 |
| ACTH負荷試験(ラピッドコシントロピン試験) | 副腎皮質機能低下症(アジソン病)の診断 | ACTH合成製剤投与前後のコルチゾール値を測定。アレルギー反応に注意。 |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 試験前のコルチゾール値(基準値)を確認。患者のストレスレベル(精神的・身体的)を評価。
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看護診断: 診断的検査に関連する不安、検査結果の知識不足。
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計画・実施: 検査の目的と方法を患者に説明し、安静を保つ環境を提供。決められた時間に正確に採血とデキサメタゾン投与を行う。ストレスを誘発するようなケア(痛みを伴う処置)は避ける。
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評価: 検査が予定通り実施され、患者に異常なストレス反応が出現しなかったかを確認。
暗記のコツ: 「
デキサメタゾンは
外から入れるステロイド。正常なら「もう十分ステロイドがあるぞ」と体が反応してコルチゾールが減る。クッシング症候群ではこのブレーキが効かない。だから
基準値(投与前の値)を測っておかないと、減ったかどうか比較できないよね!」と覚えましょう。
国試頻出ポイント: デキサメタゾン抑制試験の目的と、検査実施における看護師の役割(特に基準値の確認と安静の維持)は頻出。また、他の内分泌負荷試験(ブドウ糖負荷試験、ACTH負荷試験など)と混同しないように、その違い(目的、負荷物質、測定項目)を整理しておくことが重要です。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「患者に鎮静薬が処方されたが看護師はどう判断すべきか」「患者が検査中に興奮してしまった場合の対応」といった状況設定問題や、クッシング症候群の症状(満月様顔貌、中心性肥満、皮膚線条など)と組み合わせた総合問題が出題される可能性があります。