核心解説
この問題は、
動脈血ガス分析 (ABG: Arterial Blood Gas Analysis) における検体取扱いの基本を問うています。ABGは患者の
酸塩基平衡 (Acid-Base Balance) と
酸素化状態 (Oxygenation Status) を評価する重要な検査であり、検体中のガス分圧(PaO2, PaCO2)が採血後も変化しないように適切に保管・搬送することが極めて重要です。
核心概念の分析 (Key Concept)
ABG検体は、採血後も血球細胞が代謝を続けるため、時間経過とともに
PaO2の低下 と
PaCO2の上昇 が生じます。これを防ぐために、
最重要! 検体を
氷冷 (Ice Cooling) して細胞の代謝活性を低下させ、ガス組成の変化を最小限に抑えます。室温放置はガス値の変動を招き、誤った診断・治療につながるため禁忌です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
③番が適切です。採血後は直ちに検体を氷冷し、速やかに検査室へ搬送します。これにより、
検体の安定性 (Sample Stability) が保たれ、正確な測定値が得られます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番「橈骨動脈が第一選択」は、採血部位として正しいですが、問題は「採血後の対応」を問うています。設問の条件に合致しないため誤りです。
②番「遠心分離」は、通常の血液検査では行いますが、ABGでは全血のまま分析するため不要です。
④番「室温で放置」は、
禁忌 (Contraindication) です。ガス組成が変化し、信頼性の低い結果となります。
⑤番「ヘパリンで洗浄した注射器」は、以前行われていた方法ですが、現在は
プレフィルドシリンジ (Pre-filled Syringe) を使用するのが標準です。手動でヘパリン洗浄すると、残存ヘパリン量が不正確になり、検体の希釈や凝固を招くため適切ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ABG採血時の注意点として、穿刺部位(橈骨動脈が第一選択、次いで上腕動脈、大腿動脈)、
アレンテスト (Allen Test) の実施(側副血行の確認)、空気混入の防止(気泡は直ちに除去)、そして検体の即時氷冷搬送をセットで覚えましょう。
概念整理: ABG検体は生きた細胞の代謝により経時的にガス値が変化するため、
代謝抑制(氷冷) と
迅速搬送 が必須。室温放置は誤差の原因。
一目で比較!:
| 検体管理 | ABG(動脈血ガス) | 静脈血一般検査 |
|---|
| 容器 | プレフィルドヘパリンシリンジ | 血清分離管・血漿分離管 |
| 保存温度 | 氷冷 | 室温(検体による) |
| 前処理 | 不要(全血分析) | 遠心分離 |
看護過程ポイント: アセスメントでは、患者の呼吸状態(呼吸数、SpO2、意識レベル)と酸塩基平衡異常の兆候(呼吸補助筋の使用、チアノーゼ、クスマウル呼吸など)を観察。看護介入として、採血の正確な手技、検体の適切な取扱い、そして結果に基づく医師への報告(SBAR)が重要。
暗記のコツ: 「ABGは氷(Ice)で冷やして、急いで(Quickly)検査室へ!」と覚えましょう。『氷(Ice)と急行(Quick transport)』がキーワードです。
国試頻出ポイント: ABGの検体取扱いは毎年と言っていいほど頻出です。特に「氷冷」と「プレフィルドシリンジ」はセットで出題されます。「室温放置」が誤りであることは絶対に押さえてください。
出題パターン注意!: 単純な「正しい手順はどれか」という知識問題に加えて、事例問題(例:「呼吸困難の患者にABGを実施。看護師の対応として適切なのは?」)で出題されることもあります。常に「検体の安定性」を最優先に考えましょう。