核心解説
この問題は、
静脈採血 (Venipuncture) 後の合併症である
血腫 (Hematoma) 形成に対する
急性期の看護対応を問うています。血腫は穿刺針が静脈壁を貫通し、血液が血管外(皮下組織)に漏出することで発生します。看護師の最優先目標は
出血の制御と血腫拡大の防止です。この観点から、
冷却と圧迫が第一選択となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 穿刺部位に大きな血腫が形成された直後は、
血管からの活動性出血が続いている可能性があります。冷却ジェルパックを当てて圧迫することで、以下の2つの効果が得られます。
1.
圧迫止血: 物理的に血管を圧迫し、血液の漏出を止めます。
2.
冷却による血管収縮: 局所の温度を下げることで血管を収縮させ、出血量を減少させます。同時に、
疼痛緩和と
炎症抑制にも効果があります。
これにより、血腫の拡大を最小限に抑え、治癒を促進します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
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②番(マッサージ)と③番(揉みほぐす): これは
絶対禁忌の行為です。
マッサージや揉みほぐしは、血管壁の損傷部位をさらに刺激し、止血されたばかりの血栓を剥がし、出血を再開・増悪させる危険性があります。血腫を「広げて治そう」という考えは誤りです。
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④番(挙上): 挙上(Elevation)は
浮腫 (Edema) の軽減には有効ですが、急性期の
動脈性出血の止血に対しては冷却と圧迫ほどの直接的な効果はありません。また、血腫の吸収を促すのは、急性期が過ぎた後の対応です。
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⑤番(温罨法):
温罨法(温めること)は血管を拡張 (Vasodilation) させ、出血を促進するため、急性期の血腫には禁忌です。温罨法は、血腫形成後24〜48時間経過し、出血が完全に停止した後の
血腫の吸収促進を目的として使用します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
混同注意! この問題では「急性期の止血」と「慢性期の血腫吸収促進」の区別が重要です。
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急性期(24時間以内): 冷却 + 圧迫(Rest, Ice, Compression, Elevation: RICEの原則)
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慢性期(24〜48時間以降): 温罨法(血腫の吸収促進)
また、血腫予防のためには、採血後の
確実な圧迫止血(3〜5分以上、特に抗凝固薬服用患者は5分以上)と、圧迫後に穿刺部位と末梢の色調・温度・感覚を観察することが重要です。
概念整理: 血腫は血管外への出血。急性期対応は「冷却 + 圧迫」で血管収縮と物理的止血。温罨法やマッサージは出血を悪化させるため禁忌。
一目で比較!:
| 処置 | 急性期(〜24h) | 慢性期(24h〜) |
|---|
| 冷却 + 圧迫 | 適応(第一選択) | あまり用いない |
| 温罨法 | 禁忌 | 適応(吸収促進) |
| マッサージ / 揉みほぐし | 禁忌 | 禁忌 |
| 挙上 | 浮腫軽減に有効(止血の補助) | 有効 |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 血腫の大きさ、拡大速度、疼痛の有無、穿刺部位の末梢の循環状態(色調、温度、感覚、毛細血管再充満時間)。抗凝固薬(ワルファリン、DOACs)の内服の有無も確認。
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看護診断: 「出血リスク状態」「急性疼痛」「組織損傷(血管)」
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計画・実施: 冷却圧迫後、30分〜1時間ごとに再評価。大きな血腫や拍動性の血腫は動脈穿刺(誤穿刺)の可能性もあり、医師に報告。
暗記のコツ: 「血腫=血管外出血」→「止血」→「冷やす + 押さえる」。逆の行為(温める、揉む)は出血を悪化させる「NG行為」と覚えましょう。「RICE(Rest, Ice, Compression, Elevation)」の「I(Ice)」と「C(Compression)」が急性期の基本です。
国試頻出ポイント: 採血・注射の合併症(血腫、神経損傷、感染、血管迷走神経反射)とその対応、特に「何が禁忌か」が頻出。抗凝固薬内服患者への圧迫時間の延長や観察項目も問われやすい。
出題パターン注意!: 「採血後、患者さんが穿刺部位に大きな内出血(血腫)を認めています。看護師の対応で適切なのはどれか」という基礎的な知識問題から、「血腫が認められたが、患者に抗凝固薬が投与されている。医師への報告内容として適切なのはどれか」という状況設定問題へ発展します。