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診療に伴う技術
静脈採血時に駆血帯を長時間巻き続けた場合の影響で正しいのはどれか。
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1
血清ナトリウム値が低値になる
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2
血液ガス分析でpHが上昇する
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3
血清カルシウム値が高値になる
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4
血清カリウム値が低値になる
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5
血清総タンパク質値が高値になる
✓ 正解
解説
駆血帯を長時間(1分以上)巻き続けると、血液のうっ滞により水分が血管外に漏出し、血液が濃縮される。その結果、血清総タンパク質、アルブミン、カルシウム、カリウムなどの値が高値になる傾向がある。駆血時間は1分以内が推奨される。
同じテーマの次の問題静脈採血を行う際の穿刺部位の選択で適切なのはどれか。この問題が収録された問題集看護師の基本となる基礎看護学KRW 12,900
核心解説
この問題は、静脈採血 (Venipuncture) における 駆血帯 (Tourniquet) の適切な使用法と、手技の不備が検査値に及ぼす影響を問うています。駆血帯を長時間(1分以上)巻き続けると、静脈血流がうっ滞(停滞)し、静脈圧が上昇します。これにより、血管内の水分(血漿成分)が毛細血管壁を介して血管外へ漏出し、血液が濃縮(Hemoconcentration)されることが、この問題の核心的な病態生理です。
1. 核心概念の分析 (Key Concept): 駆血帯を巻く目的は、静脈を怒張させて穿刺を容易にすることです。しかし、長時間の駆血は血液濃縮 (Hemoconcentration) を引き起こし、細胞成分や高分子物質の相対的な濃度を上昇させます。特に、血管内に留まりやすい大型の分子である 血清総タンパク質 (Serum Total Protein) や アルブミン (Albumin) の値が顕著に上昇します。また、血球成分も濃縮されるため、ヘマトクリット値やヘモグロビン値も上昇します。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale): ⑤番の「血清総タンパク質値が高値になる」が正解です。上記の通り、血液濃縮により、血管内に存在するタンパク質などの高分子物質は、水分が失われることで相対的に高濃度となります。これは 最重要! 採血の基本的な知識であり、検査値の信頼性を保つために、駆血時間は 1分以内 が標準とされています。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番:血清ナトリウム値への影響は最小限です。ナトリウムは細胞外液の主要な電解質であり、水分と共に移動するため、血液濃縮の影響をタンパク質ほど強く受けません。
- ②番:血液ガス分析では、駆血による局所の代謝産物(乳酸など)の蓄積や、血流停滞による酸素供給不足から、代謝性アシドーシス (Metabolic Acidosis) を来す可能性があり、pHは上昇(アルカローシス)せず、むしろ低下します。混同注意! 過換気による呼吸性アルカローシスと混同しないでください。
- ③番:血清カルシウム値は、総タンパク質(特にアルブミン)と結合して存在するため、血液濃縮の影響で上昇する可能性はありますが、総タンパク質ほど顕著ではなく、またイオン化カルシウムは影響を受けにくいため、「高値になる」という表現は適切ではありません。選択肢⑤の総タンパク質の方が直接的な影響を受けます。
- ④番:血清カリウム値は、細胞内に多く存在するため、溶血の影響を強く受けます。駆血帯による長時間の駆血は細胞の変形や溶血を引き起こす可能性があり、その場合は 偽性高カリウム血症 (Pseudohyperkalemia) を呈します。低値になることはありません。混同注意! カリウムは低値ではなく高値になる点に注意が必要です。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 採血の精度に影響を与えるその他の因子として、採血部位の消毒(アルコールが乾く前に穿刺すると溶血や検体希釈の原因になる)、採血管の種類と添加物(EDTA、クエン酸Na、ヘパリンなど)、検体の保管・搬送方法(長時間放置や高温・低温による成分変性)が挙げられます。また、採血手技のガイドラインでは、駆血帯は皮膚消毒後に巻き直すことが推奨されています。
概念整理: 駆血帯による長時間の血流停滞 → 静脈圧上昇 → 血管外への水分漏出 → 血液濃縮(Hemoconcentration) → 血清総タンパク質、アルブミン、ヘマトクリット、ヘモグロビンなどの高値。
一目で比較!:
| 要因 | 主な影響 | 影響を受ける項目 |
|---|
| 駆血帯の長時間使用 | 血液濃縮 | 総タンパク質、アルブミン、Hb、Ht (上昇) |
| 強い吸引での採血 | 溶血 | カリウム、AST、LDH (上昇) |
| 採血部位の挫滅 | 組織液混入 | カリウム (上昇)、プロトロンビン時間 (延長) |
看護過程ポイント:
- アセスメント:検査値の異常が、患者の病態によるものか、採血手技によるアーチファクトかを鑑別する。
- 計画:採血手技の標準化(ガイドライン遵守)を計画に含める。
- 実施:駆血時間は1分以内、拳の握らせすぎない、適切な採血管の順序(静脈血採血ガイドライン)を守る。
- 評価:再検査が必要かどうか、臨床症状と検査値の乖離がないかを評価する。
暗記のコツ: 「駆血帯でパンパン(うっ滞)→ 水が漏れてドロドロ(濃縮)→ 大きなタンパク質が目立つ(総タンパク高値)」とイメージしましょう。また、「カリウムは溶血で高値」とセットで覚えると混乱しません。
国試頻出ポイント: 駆血帯の影響は「血液濃縮によるタンパク質や血球成分の高値」と「溶血によるカリウム高値」の2パターンが頻出です。単純な知識問題だけでなく、「この患者の高カリウム血症は本当に病態によるものか、採血手技の影響か」と問う臨床判断問題にも発展します。
出題パターン注意!: 単純な「影響」を問う問題から、「患者の検査値が異常だった。考えられる原因はどれか」という状況設定問題、さらに「検査値異常を認めた時の看護師の対応として適切なのはどれか」という実践的な問題へと発展します。常に「結果→原因→対応」の流れで考えられるようにしておきましょう。
臨床実践ガイド- 1臨床シナリオ (Clinical Scenario)新人看護師が、朝の採血業務で駆血帯を巻いたまま患者のベッドサイドから離れ、気づくと5分以上経過していました。慌てて駆血帯を緩めずにそのまま採血し、検体を提出しました。後日、その患者の血清総タンパク質とヘモグロビン値が基準範囲よりも高値で報告されましたが、患者の全身状態に明らかな異常はありませんでした。
- 2看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)最重要! まず、採血時の状況を振り返り、駆血帯の長時間使用が原因である可能性をアセスメントします。この場合、検査値の異常はアーチファクト(人工産物)である可能性が高いため、直ちに医師に報告し、「患者の状態に変化はなく、採血時の駆血時間が長かったため、再採血を提案する」と伝えます(SBAR を用いた報告)。再採血の際は、適切な手技(駆血時間1分以内)で行い、比較することで信頼性の高い結果を得ます。
- 3患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)駆血帯の長時間使用は、患者にとって痛みや不快感を生じるだけでなく、神経障害や血栓症のリスクもあります。また、誤った検査値に基づいて治療方針が決定される危険性があるため、医療安全上、極めて重要な注意点です。採血後は必ず駆血帯を外したことを確認する習慣をつけましょう。
看護プロトコル: 静脈採血の観察項目として、穿刺部位の状態(発赤、腫脹、痛み、血腫)、駆血時間(1分以内)、患者の苦痛の有無、検体の性状(溶血の有無、凝血の有無)を確認。報告基準(SBAR)は、Situation(何が起きたか)、Background(患者情報)、Assessment(自分のアセスメント)、Recommendation(再採血の提案)で構成します。記録には、採血時間、駆血時間、穿刺部位、検体性状、患者の反応を正確に記載します。
先輩看護師の一言: 「採血って、一見単純な手技に思えるけど、患者さんの状態を正しく把握するための第一歩よ。検査値がおかしいと思ったら、まず自分の手技を疑うクセをつけてね。患者さんに『いつもと変わったことはないですか?』と確認するのも大事。国試で覚えた知識が、現場で患者さんを不適切な治療から守ることにつながるんだから!」
- 血液濃縮 — 血漿中の水分が血管外に漏出し、血液の細胞成分やタンパク質濃度が相対的に上昇する現象。長時間の駆血帯使用や脱水で生じる。
- 駆血帯 — 静脈を怒張させ穿刺を容易にするために上腕に巻く帯。推奨される駆血時間は1分以内である。
- 偽性高カリウム血症 — 患者の実際の体内カリウム値は正常であるが、採血手技(溶血など)や検体処理の問題により、検査値が異常高値を示す現象。
- 血清総タンパク質 (Serum Total Protein) — 血清中の全タンパク質の総量。アルブミンとグロブリンに大別される。血液濃縮の影響を最も受けやすい検査項目の一つ。
- アーチファクト — 本来の生物学的現象ではなく、検査手技や機器の操作などに起因する人工的な異常所見や誤差。
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