核心解説
この問題は、看護師国家試験で毎年頻出の
最重要テーマである
スタンダードプリコーション(標準予防策:Standard Precautions)の基本的な考え方と具体的手技を問うています。
スタンダードプリコーションは、全ての患者の血液、体液、分泌物(汗を除く)、排泄物、粘膜、損傷のある皮膚を感染性の可能性があるものとみなし、接触時に適切な個人防護具(PPE)を使用するという考え方です。患者の診断が判明しているかどうかにかかわらず、すべての患者に一律に適用されることが最大のポイントです。
正解の根拠(Answer Rationale)
③
粘膜や非感染性皮膚に触れる場合も手袋を着用する が正解です。
最重要! スタンダードプリコーションの基本は、「
血液・体液・粘膜・損傷皮膚に触れる可能性があるすべての場面で手袋を着用する」ことです。たとえ患者の皮膚が「非感染性(見た目が正常で感染兆候がない)」であっても、粘膜(口腔内、結膜など)や損傷皮膚(創傷、発疹、皮膚トラブルなど)に触れる場合は手袋が必要です。これは、
目に見えない病原体からの防御が目的です。
誤答の分析(Distractor Analysis)
①
混同注意! 使用した注射針のリキャップ(キャップを元に戻す)は、
針刺し事故(Needlestick Injury)の最大のリスク行為であり、絶対に禁止されています。使用後の注射針は、キャップをせずにそのまま専用の
鋭利廃棄物容器(Sharps Container)に廃棄します。
②
混同注意! ガウンの着用は、
血液や体液の飛散・飛沫が予測される処置(大量の洗浄、喀痰吸引、分娩介助など)の場合に限ります。すべての診療後に必ず着用するものではありません。
④ ③の解説の通り、スタンダードプリコーションでは血液や体液に触れる可能性がある場合だけでなく、粘膜や損傷皮膚に触れる場合も含めて、
より広い適応で手袋を着用します。この選択肢は適応範囲が狭すぎます。
⑤
混同注意! N95マスク(またはそれと同等以上の呼吸器防护具)は、
空気感染予防策(Airborne Precautions)で使用します。具体的には
結核(Tuberculosis)、
麻疹(Measles)、
水痘(Varicella)などの空気感染する疾患が疑われる・確定した患者のケア時に必要です。喀痰吸引時は、通常のサージカルマスクとフェイスシールドまたはゴーグルで対応します(気管支鏡検査などエアロゾル発生を伴う手技ではN95が必要な場合あり)。
関連概念の整理(Related Concepts)
スタンダードプリコーションと、感染経路別予防策(Transmission-Based Precautions:接触予防策・飛沫予防策・空気予防策)の違いと併用をしっかり理解しましょう。スタンダードプリコーションはすべての患者に基本として実施し、その上で特定の感染症が疑われる・確定した患者に対して感染経路別予防策を追加します。
概念整理: スタンダードプリコーション(Standard Precautions)は、患者の血液・体液・分泌物・排泄物(汗を除く)・粘膜・損傷皮膚を全て感染性とみなす。手袋、ガウン、マスク、眼保護具を状況に応じて適切に使用する。手指衛生(Hand Hygiene)が最も基本的かつ重要な感染対策。
一目で比較!:
| 感染予防策の種類 | 主な対象病原体・状況 | 代表的なPPE |
|---|
| スタンダードプリコーション | 全ての患者(基本) | 手袋(粘膜・体液接触時)、ガウン(飛散時)、マスク+眼保護具(飛沫・飛散時) |
| 接触予防策 | MRSA、クロストリディオイデス・ディフィシル、創感染 | 手袋 + ガウン(必ず) |
| 飛沫予防策 | インフルエンザ、風疹、髄膜炎菌 | サージカルマスク + 眼保護具 |
| 空気予防策 | 結核、麻疹、水痘 | N95マスク(または同等品) |
看護過程ポイント: アセスメントでは、患者の感染リスク(免疫状態、侵襲的処置の有無、創傷の状態)を評価。計画では、適切なPPEの準備と手指衛生の徹底、患者と家族への感染予防に関する指導を含める。実施時は、PPEの正しい着脱手順(ドッフィング・ドーニング)を守る。評価は、院内感染発生率のモニタリングと手指衛生の遵守率の確認。
暗記のコツ: 「スタンダードプリコーション = 全患者対象の基本ルール」と覚えましょう。「血液・体液・粘膜・損傷皮膚=手袋」、「飛沫=サージカルマスク+眼保護」、「空気=N95マスク」とセットで暗記すると良いです。「針のリキャップは絶対ダメ!」も鉄則です。
国試頻出ポイント: スタンダードプリコーションの定義(全患者対象)、手袋着用の適応(血液・体液・粘膜・損傷皮膚)、手指衛生のタイミング(患者接触前後、手袋着脱前後、清潔/不潔操作の切れ目)、PPEの適切な選択(状況によるガウンやマスクの要否)が頻出です。事例問題で「この患者さんにどのPPEが必要か?」という形で出題されることが多いです。
出題パターン注意!: 単純な知識問題から、「入院患者がインフルエンザ陽性となった。スタンダードプリコーションに加えてどの感染経路別予防策が必要か?」という応用問題、または「術後創部のガーゼ交換時に着用すべきPPEはどれか?」という具体的な状況設定問題にも対応できるようにしておきましょう。