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共通基本技術
問題
患者から治療方針について不満の言葉が聞かれた。看護師の最初の対応として最も適切なのはどれか。
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1
「医師に伝えておきます」と約束し、その場を離れる。
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2
「先生もあなたのことを考えて決めていますよ」と医師を擁護する。
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3
「そんなに怒らないでください」と感情を鎮めるよう促す。
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4
「どのようなことが不満ですか」と具体的な内容を尋ねる。
✓ 正解
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5
「治療方針は変更できません」とルールを説明する。
解説
患者の不満を聞く際は、まずその内容を具体的に聴くことで、患者の気持ちを理解しようとする姿勢を示すことが重要である。すぐに約束したり、擁護したり、感情を否定したりする対応は、患者の信頼を損なう可能性がある。
同じテーマの次の問題看護師が患者と初めて対面する場面で、信頼関係を構築するために最も適切な対応はどれか。
詳細解説
核心解説
この問題は、
患者の不満 (Patient Complaints) に対する
看護師の初期対応 (Initial Nursing Response) の優先順位を問うています。治療方針への不満は、患者の
不安や不信感 (Anxiety and Distrust) が表出したサインです。看護師に求められるのは、まず
傾聴 (Active Listening) と
受容 (Acceptance) の姿勢で、患者の感情や考えを 共感的に理解しようとすること (Empathetic Understanding) です。これにより、患者は「自分の気持ちを聞いてもらえた」と感じ、信頼関係(ラポール形成)が構築されます。問題解決や説得、感情の否定は、この初期段階ではむしろ逆効果となるため、最も適切な対応は不満の具体的な内容を尋ねることです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
④ 「どのようなことが不満ですか」と具体的な内容を尋ねる が正解です。この対応は、患者の気持ちや考えを 受容的・共感的に傾聴する という看護の基本姿勢に基づいています。患者は不満を言語化することで自身の感情を整理でき、看護師は患者の真のニーズや誤解を把握する機会を得ます。このプロセスは、看護過程におけるアセスメント (Assessment in Nursing Process) の第一歩であり、その後の適切な介入や医師への報告、情報提供の基礎となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 混同注意!「医師に伝えておきます」と約束し、その場を離れる対応は、患者の話を最後まで聞かずに問題を先送りにしており、患者の不信感を増幅させる可能性が高いです。約束をした内容を確実に伝達しないと、さらなる信頼喪失につながります。
② 「先生もあなたのことを考えて決めていますよ」と医師を擁護することは、患者の感情を否定し、「あなたの気持ちは間違っている」と伝えることになりかねません。患者の不満の根本的な理由を探る機会を逃します。
③ 混同注意!「そんなに怒らないでください」と感情を鎮めるよう促すことは、患者の感情を否定し、抑圧する対応です。患者は「怒ってはいけないのか」と自己否定感を抱いたり、看護師に本音を話せなくなったりするため、ラポール形成を阻害します。
⑤ 「治療方針は変更できません」とルールを説明することは、患者の話を聞く前に一方的に結論を伝える対応です。患者の思いや背景を理解しないままの説明は、納得を得られず、かえって対立を深める可能性があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
この問題は、カール・ロジャーズ (Carl Rogers) の 来談者中心療法 (Client-Centered Therapy) で提唱された 無条件の肯定的配慮 (Unconditional Positive Regard) や 共感的理解 (Empathetic Understanding) の概念に基づいています。看護における コミュニケーション技術 (Communication Techniques) の中でも、特に 傾聴 (Listening)、受容 (Acceptance)、共感 (Empathy) は基本的かつ重要なスキルです。患者の否定的な感情(怒り、不満、悲しみ)に対しても、まずはそれを受け止めることが、その後の問題解決や適切な情報提供、医療者間連携の基盤となります。
概念整理: 看護における患者の感情表出への対応は、「傾聴 → 受容 → 共感」が基本の流れです。この問題では、最初のステップである「傾聴と受容(不満の内容を尋ねる)」が問われています。感情を否定したり、すぐに解決策を提示したりするのは後の段階です。
一目で比較!: | 対応の種類 | 効果 | リスク |
|---|
| 傾聴・受容(正解) | 信頼関係構築、感情の整理 | 特になし |
| 問題先送り(①) | 一時的な回避 | 不信感増大、問題放置 |
| 擁護・否定(②③) | 表面化の抑制 | 感情の抑圧、自己否定感 |
| 一方的説明(⑤) | ルールの周知 | 対立の深化、納得不足 |
看護過程ポイント: アセスメント (Assessment): 患者の不満の内容、背景、感情の強さ、非言語的メッセージを観察。看護診断 (Nursing Diagnosis): 例)「非効果的対処 (Ineffective Coping)」、「不安 (Anxiety)」、「コミュニケーション障害 (Impaired Verbal Communication)」のリスク状態。計画・実施 (Planning/Implementation): プライバシーが確保できる環境で、十分な時間を確保し、開かれた質問で話を促す。評価 (Evaluation): 患者の表情や口調が和らいだか、信頼関係が構築されたか。
暗記のコツ: 患者の不満対応の基本は「まずは聴く!」と覚えましょう。「話を聞いてもらえた」という体験が、患者の安心感と信頼につながります。逆に、すぐに「説得」「擁護」「否定」「先送り」をする対応は、患者を遠ざけるだけです。
国試頻出ポイント: 看護師のコミュニケーションに関する問題は必修問題および状況設定問題で頻出です。特に「最初の対応として最も適切なのはどれか」という設問では、共感的傾聴が正解となるケースが非常に多いです。患者・家族の否定的な感情に対しては、まず受容する姿勢が問われます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題としてだけでなく、事例問題(例:「認知症の高齢女性が入浴を拒否し、大声で怒っている」)の中で「看護師の最初の対応」として出題されることがあります。基本は同じで、「なぜ嫌なのか」をまず尋ね、共感することが最初の一歩です。
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
このコミュニケーション技術は、あらゆる臨床現場で応用されます。
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
消化器外科病棟のベテラン患者さん(60代男性、胃癌術後)が、担当医から補助化学療法の説明を受けた後、看護師に「なんでまた抗がん剤なんかやらなきゃいけないんだ。もう治ったんじゃないのか」と不満気に話しかけてきました。あなたはどのように対応しますか?
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察 (Observation): 患者の表情(怒り、不安、困惑)、口調、姿勢、周囲の環境を観察します。
2. アセスメント (Assessment): 「この患者さんは、治療の目的や必要性について十分な理解が得られていない可能性がある。あるいは、副作用への不安や、治療を続けることへの疲れを感じているかもしれない」と推測します。
3. 報告・相談 (Report/Consult): 緊急を要するバイタルサインの異常などはないため、まずは患者の話を聞く時間を確保します。必要に応じて、担当医や薬剤師、がん看護専門看護師(CNS)に情報を共有します。
4. 介入 (Intervention): 「そうでしたか、治療のことで気になっていることがあるのですね。よかったら、もう少し詳しくお話を聞かせてもらえますか?」と、開かれた質問 (Open-ended Question) で会話を促します。患者の言葉を遮らず、うなずきながら最後まで聴きます。感情を言語化する手助けとして、「抗がん剤の治療について、不安に思っていらっしゃるのですね」と 反射 (Reflection) を用います。
5. 評価 (Evaluation): 患者の表情が和らぎ、「実は、前回の治療がすごくしんどくて...またあれをやるのかと思うと...」と本音を話し始めたら、傾聴の効果が出ているサインです。その後、医師への情報提供や、緩和ケアチームへの相談など、次のステップへとつなげます。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 最重要! 患者の不満や怒りの背景に、病状の急変や疼痛の増強 などの身体的な問題が隠れていないか、常にアセスメントする必要があります。バイタルサインの変動や新たな症状の出現がないか確認しましょう。
- 患者の感情を否定する対応は、患者の治療意欲の低下や、医療者への不信感 を招き、結果的に治療の継続を困難にする可能性があります。
- 患者の話を聞く時間がどうしても取れない場合は、「申し訳ありません。今、別の患者さんの対応中でして、少しだけお待ちいただけますか?○分後にお話を伺いに来ます。」と、具体的な時間を約束 し、必ず約束を守ることが重要です。
看護プロトコル: 観察項目: 患者の言動(言語・非言語)、表情、バイタルサイン、疼痛の有無。報告基準(SBAR): S(状況):「○○患者さんが、補助化学療法について不満を訴えています」、B(背景):「術後で経過は良好ですが、前回の治療で辛い経験があったようです」、A(アセスメント):「治療への理解不足と副作用への不安が背景にあると考えられます」、R(提案):「傾聴を行い、医師からの再度の説明や緩和ケアの導入を検討してはいかがでしょうか」。記録: 患者の発言内容(要約)、看護師の対応、患者の反応、医師への報告内容と指示を客観的事実に基づき記録。
先輩看護師の一言: 「患者さんの『怒り』や『不満』は、『助けて』というSOSのサインであることが多いんです。『なんでわかってくれないんだ』という叫び。だから、まずはその気持ちを丸ごと受け止めてあげてください。あなたの『聴く』という行為が、患者さんの最大のセーフティネットになります!」
重要概念
- 傾聴 (Active Listening) — 患者の言葉に注意を払い、理解しようとする姿勢で耳を傾けること。うなずきやあいづち、開かれた質問を用いる。
- 受容 — 患者の感情や考えを、評価や批判をせずにそのまま受け入れる態度。患者が安心して自己開示できる環境を作る。
- 共感 — 患者の感情や立場を、あたかも自分のことのように理解し、その気持ちを伝え返すこと。「大変でしたね」などの言葉がけ。
- ラポール — 患者と看護師の間に築かれる、信頼と安心に基づいた良好な人間関係。効果的な看護介入の基盤となる。
- 開かれた質問 (Open-ended Question) — 「はい」「いいえ」では答えられない、自由に回答できる質問。「どのようなことが気になりますか?」など。情報収集に有効。
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