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看護の展開
問題

患者との援助的関係において、看護師が「私はあなたの気持ちを理解したいと思っています」と伝えた。この看護師の対応に含まれる態度として最も適切なものはどれか。

解説
共感とは、相手の感情や体験を、相手の立場に立って理解し、その理解を相手に伝えることである。「あなたの気持ちを理解したい」という言葉は、患者の内面的世界に関心を持ち、理解しようとする姿勢を示しており、共感の意図を伝えるものである。同情は相手を哀れむこと、受容は無条件に受け入れること、傾聴は耳を傾ける行為、保証は安心させることである。
同じテーマの次の問題看護師と患者の援助的関係において、患者が看護師に対して「あなたは私の気持ちをわかってくれない」と発言した。この患者の行動を説明する概念として最も適切なものはどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、看護師と患者の援助的関係 (Therapeutic Relationship) を築くための基本態度であるカール・ロジャース (Carl Rogers) の「3つの核的条件」を問うています。特に「私はあなたの気持ちを理解したいと思っています」という言葉に含まれる態度を、各選択肢の定義と照らし合わせて分析する能力が求められます。

正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 看護師が「あなたの気持ちを理解したい」と伝えることは、患者の内面的な世界 (Internal Frame of Reference) に関心を持ち、その人の立場に立って感情や体験を理解しようとする姿勢を示しています。これは、ロジャースが提唱する共感 (Empathy) の意図を伝える行為です。共感は単に感情を理解するだけでなく、「私はあなたの気持ちをこのように理解しています。合っていますか?」と確認しながら理解を深めていく能動的なプロセスを含みます。この発言は、共感の第一歩である「理解しようとする意思表示」として最も適切です。

誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 傾聴 (Active Listening):これは「耳を傾けて話を聴く」という行為や技法を指します。「理解したいと思う」という意図や態度そのものではなく、それを表現するための手段です。この発言は傾聴の開始を告げる言葉ではありますが、選択肢の中で「含まれる態度」として最も直接的ではありません。
受容 (Unconditional Positive Regard):患者の感情や言動を評価せず、無条件に受け入れる態度です。「理解したい」という言葉は受容の前提にはなりますが、受容そのものは「あなたはあなたのままで価値がある」というメッセージを伝えることであり、この発言はまだ「理解したい」という段階です。
保証 (Reassurance):「大丈夫ですよ」「心配いりません」などと患者を安心させようとする対応です。この発言には「安心させよう」という意図は含まれておらず、患者の気持ちを探求しようとしています。
同情 (Sympathy):「かわいそうに」「気の毒に」など、相手の立場に立たずに自分の感情から哀れむ態度です。看護師が自分の感情に没入し、客観性を失う危険があり、専門的な援助関係にはなりません。この発言は患者の理解を目指しており、同情とは異なります。

関連概念の整理 (Related Concepts)
概念定義看護場面での例
共感 (Empathy)相手の立場に立って感情を理解し、その理解を伝える「つらいですね。そのお気持ち、もう少し詳しく聞かせてください」
同情 (Sympathy)相手を哀れみ、自分の感情に浸る「かわいそうに、本当にお気の毒です」
受容 (Acceptance)無条件に相手を価値ある存在として受け入れる「そう思われるのは当然ですね。あなたはそう感じているのですね」
傾聴 (Active Listening)注意を集中し、言語的・非言語的メッセージを聴く技法うなずき、あいづち、開かれた質問

概念整理
- 共感 (Empathy):「相手の靴を履いてみる」=相手の立場に立って世界を見る。看護師の自己一致 (Congruence) が基盤。
- 同情 (Sympathy):「自分の靴を履いたまま相手を見る」=自分の感情で相手を評価・哀れむ。専門的関係を阻害。
- 受容 (Unconditional Positive Regard):「あなたはそのままで大切な人です」という無条件の肯定。

一目で比較!
特徴共感 (Empathy)同情 (Sympathy)
視点相手の内面的世界に立つ自分の立場から相手を見る
感情相手の感情を共有しつつも自己を保つ相手の感情にのまれ、自己を失う
看護への影響信頼関係を構築し、患者の自己決定を支援看護師のバーンアウト、依存関係を招く

看護過程ポイント
- アセスメント (Assessment):患者の言語的・非言語的表現から感情やニーズを読み取る。共感的理解は正確なアセスメントの基盤となる。
- 看護診断 (Nursing Diagnosis):コミュニケーション障害、無力感、不安など、患者の心理状態に関連する看護診断を検討する際に、共感的態度が診断の正確性を高める。
- 計画・実施 (Planning & Implementation):共感を意図的に表現する看護介入(例:「~とお感じなのですね」と確認する)を計画に組み込む。
- 評価 (Evaluation):患者の反応(例:「看護師さんは私の気持ちをわかってくれる」という発言)で共感が伝わったかを評価する。

暗記のコツ
「共感」は「共に感じる」と書きますが、「同情」と混同しやすいです。語呂合わせで「共感=鏡 (Mirror)」と覚えましょう。共感は、相手の感情を鏡のように映し出し、「あなたはこう感じているのですね」と確認します。一方、同情は「自分の色眼鏡」で相手を見ます。

国試頻出ポイント
- ロジャースの3条件(共感、受容、自己一致)は毎年のように出題される基本概念です。
- 特に「共感」と「同情」の違いを問う問題は頻出。事例問題で「この看護師の対応は共感か、同情か」を判断させる形で出題されます。
- また、「傾聴」は「行為」であり「態度」ではない点も要注意です。

出題パターン注意!
- 単純知識問題:「共感の定義として正しいのはどれか」
- 状況設定問題:「患者が『もう治らないんだ』と涙を流している。看護師の対応として最も適切なのはどれか。1.『大丈夫ですよ、きっと治ります』 2.『そんなこと言わないでください』 3.『本当に治らなかったらどうしようと思いますか?』 4.『そうお思いなんですね。お気持ちをもう少し聞かせていただけますか?』」→正解は4(共感の意図を伝える対応)

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
50代女性、乳がん (Breast Cancer) の術後化学療法のために入院中。看護師が点滴の交換に訪室すると、患者がぼんやりと窓の外を見つめています。看護師が「どうされましたか?」と尋ねると、患者は「もう、これ以上治療を続けても意味がないんじゃないかって…」と涙ぐみながら話し始めました。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察 (Observation):患者の表情、声のトーン、姿勢、涙の有無を観察。同時に、治療経過や副作用の程度、家族の面会状況などアセスメント情報を整理します。
2. アセスメント (Assessment):患者は治療に対する無力感や絶望感を抱えている可能性が高いです。看護師は「気の毒に」と同情するのではなく、患者の気持ちに寄り添いながらも客観性を保つ必要があります。
3. 報告 (Report - SBAR):医師への報告が必要な場合は、Situation(状況):「Aさんが治療継続に意欲を示さず、無力感を訴えています」、Background(背景):「術後化学療法3クール目で、副作用の倦怠感が強いです」、Assessment(評価):「抑うつ状態の可能性があり、精神的なサポートが必要と考えます」、Recommendation(提案):「心理的ケアのためのカウンセリングや、医師からの治療意義の再説明を提案します」
4. 介入 (Intervention):患者のそばに座り、「そうお思いなんですね。もっと詳しくお話ししていただけますか?」と共感の意図を伝えます。ここで「私はあなたの気持ちを理解したいと思っています」という態度が発揮されます。すぐに励ましたり、否定したりせず、患者の言葉を待ちます。
5. 評価 (Evaluation):患者が自分の気持ちを話し終えた後、表情が少し和らいだ、または「話せてすっきりした」という反応があれば、共感的対応が効果的だったと評価できます。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 最重要注意! 自殺念慮の有無は必ず確認すること。「生きる気力がわかない」「死にたい」などの発言があった場合は、ただちに医師・精神科リエゾンチームに報告し、患者を一人にしない対応が必要です。
- 共感を示す際、看護師が過度に感情移入し「巻き込まれ」ないよう、自己の感情をモニタリングすることが重要です。感情労働によるバーンアウト予防のため、必要に応じてスーパービジョンを受けましょう。
- 患者の文化・価値観を尊重し、沈黙も受け入れる姿勢が大切です。

看護プロトコル
- 観察項目:表情、発言内容(特に絶望感・無力感・自殺念慮)、非言語的コミュニケーション、治療への意欲、睡眠・食事状況
- 報告基準 (SBAR):上記シナリオ参照。特に自殺念慮の有無は明確に伝えること。
- 記録のポイント:「患者は『治療に意味がない』と発言。涙ぐみながら話す。看護師は傾聴し、共感の意図を伝えた(『お気持ちを理解したいと思います』)。患者は『話せて楽になった』と述べた。」と客観的事実と看護介入を正確に記録。

先輩看護師の一言
「国試では『共感』の定義を正確に覚えることが大事です。でも現場では、『理解したい』という言葉を発する前に、まずは『その人のそばに座って、しっかり目を見て話を聴く』という態度が何よりの共感表現になります。言葉がうまく出てこなくても大丈夫。あなたの『聴こうとする姿勢』が患者さんに伝わります。そして、自分を守ることも忘れずにね。共感と巻き込まれの境界線を意識することが、長く看護師を続けるコツです!」

重要概念

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